琥珀色の戯言

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【読書感想】賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか ☆☆☆☆

賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか (幻冬舎新書)

賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか (幻冬舎新書)


Kindle版もあります。

内容紹介
卵の賞味期限は通常、産卵日から3週間だが、実は冬場なら57日間は生食可。
卵に限らず、ほとんどの食品の賞味期限は実際より2割以上短く設定されている。だが消費者の多くは期限を1日でも過ぎた食品は捨て、店では棚の奥の日付が先の商品を選ぶ。小売店も期限よりかなり前に商品を撤去。
その結果、日本は、まだ食べられる食品を大量に廃棄する「食品ロス」大国となっている。しかも消費者は知らずに廃棄のコストを負担させられている。食品をめぐる、この「もったいない」構造に初めてメスを入れた衝撃の書!


 賞味期限、キッチリ守っていますか?
 僕は何日か過ぎていても、「まあ、大丈夫だよね」って、口に入れてしまうことが少なからずあるんですよね。
 もちろん、見た目や臭いで、明らかに危険な場合は別として。


 この新書は、食品メーカーで広報を担当したあと、フードバンクの仕事にも従事している「食品ロス」の専門家が、「厳しすぎる日本の賞味期限と食品ロス」、そして、「上手に食べ物と付き合う方法」について記したものです。

 日本の卵の賞味期限は、「夏場に生で食べる」のが前提で、パック後14日間(2週間)と設定されています。でも、気温が低い(10度ぐらい)冬場であれば、産卵から57日間、つまり2ヵ月近くも生で食べられます。
 しかも、「生で食べる」の前提だから、賞味期限を過ぎていても、過熱調理すれば、十分食べられるのだそうです。
 ご存じでしたでしょうか。私は恥ずかしながら、つい最近まで知りませんでした。


 もちろん、僕も知りませんでした。
 でもまあ、こういう話を読むと、「食の安全というのを考えると、賞味期限が短いのは、けっして悪いことばかりではないのでは?」とも思うんですよね。
 口に入れるものだから、とくに「リスクを避ける」べきなのではないか、と。


 しかしながら、この新書を読んでいくと、たしかに、日本の「賞味期限」は、あまりにも厳しすぎて、そのおかげで、まだ食べられるものがたくさん廃棄されているということがわかるのです。

 食品業界の不思議なルール、「3分の1ルール」については、前にも少し触れたました。賞味期間を3分の1ずつに区切って、最初の3分の1を「納品期限」、次の3分の1までを「販売期限」とするもので、法律ではなく、食品業界の商慣習です。
 たとえば、賞味期限が6ヵ月の菓子であれば、メーカーや卸は、最初の3分の1、すなわち製造してから2ヵ月以内に、小売店に納品しなければなりません。それを過ぎてしまうと、多くの小売店に拒否され、納品することができないのです。
 実際、私は、2015年の春、ある輸入食品企業の方から、「納品期限が過ぎて売れなくなってしまったので、引き取って、寄付やサンプリング(試供品として配布すること)に使ってもらえないか」という相談を受けました。私も「自宅の近くで配ります」と申し出て、1ケース24個入りの商品を20ケース、自宅に引き取りました。480個、重量にして100キログラム以上です。届いてみると、部屋の3分の1が占拠され、少し後悔しましたが……。
 賞味期限が6ヵ月の場合、さらに製造から4ヵ月過ぎると、今度は販売期限が過ぎると、今度は販売期限が切れるので、賞味期間があと2ヵ月残っていても、商品棚から撤去されます。
 グラフのように、諸外国では納品期限が日本より長く設定されています。たとえばアメリカでは賞味期間全体の2分の1、イタリア・フランス・ベルギーなどでは3分の2、イギリスでは4分の3となっており、メーカーにとってはそれだけゆとりが生まれます。
 納品期限が設けてあるために、卸・小売からメーカーへ返品される額は年間821億円、販売期限のために小売から卸へ返品される額は年間432億円と統計されています。


 この新書を読んでいると、この「3分の1ルール」は、かなりもったいないような気がするんですよね。
 ただ、これは消費者側の「より新しいものを買っておこう」という考えも影響しているのです。
 僕も子どもの頃、親に「スーパーでは奥のほうに賞味期限が先の日付のものがあるから、日付を確認して買ったほうがいい」と言われたのを今でも覚えています(そして、それを実行していました)。
 著者は、「他の買い物客や食品ロスのことを考えるのならば、並べられている前のほう(賞味期限が近いほう)から買ってほしい」と呼びかけています。
 すぐに食べてしまうものであるのならば、そのほうが「みんなのためになる」のだから、と。
 なるほどなあ、と思う一方で、そういう一人一人のちょっとした意識改革みたいなものがないと、こういう商習慣はなかなか変わらないのだろうな、とも感じました。
 自分だけのことを考えると「少しでも長持ちするものを買いたい」には、合理的な判断なんですよね。
 そこを「全体の利益」と、どう折り合いをつけていくか。


 食品ロスが多くなると、そのしわ寄せはどこに行くかというと、結局はその分も含めた価格設定になって、消費者の負担になるのです。

 ある全国チェーンのパンメーカーから相談を受けたことがありました。いわゆるデパ地下や、エキナカなどに展開しているパン屋さんです.東京都内のある百貨店の地下に入っている店舗で、毎日、大量に廃棄をしていて、それが忍びないというのです。
 百貨店の指示により、「閉店間際にいらっしゃるお客様であっても、どんな種類も選べるよう、残しておく」ことが課せられているとのこと。しかも、百貨店のブランドに傷がつくので、閉店間際になっても、値引きをしてはならないのだそうです。したがって、その店では、毎日、まだ十分に食べられる売れ残りのパンを捨てているのでした。
 なぜパン屋さんは、百貨店に対して自分たちの意見を主張しないのでしょう。それは、前の項で述べたように、百貨店のほうが優越的立場にあるからです。百貨店の意にそぐわないことをしたり言ったりすれば、契約を打ち切られ、百貨店を追い出され、別のパン屋に切り替えられてしまうかもしれません。そうなれば、販売チャンスを失ってしまいます。
 パン屋に限らず、多くの製造業者は、自社の販売チャンスを失わないため、食品ロスになるうが廃棄を出そうが、小売に対しては言いたいことを黙っている場合が多い、というのが私の実感です。
 そして、この捨てる費用は、私たち買う側が間接的に払わされています.前述した欠品ペナルティと同じ構造です。

 これを読みながら、「そうだよなあ」と思いつつ、ひとりの客としては「閉店間際でも、いろんなパンが売られているほうが嬉しい」というのも否定はできないのです。
 百貨店側も、「顧客のニーズ」や「ブランドイメージ」を考えて、こういう指示を出しているのでしょうし。
 食品業界へ提言するだけではなくて、ひとりひとりの消費者が、少しずつでも考え方を変えなければ、食品ロスは減らせない。
 食品業界でも少しずつ改善が試みられているようですが、「こちら側」が内情を知り、ある程度は「自分でリスクを管理する覚悟を持つこと」ことが、最大のハードルなのかもしれませんね。

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