琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】グラビアアイドルの仕事論 打算と反骨のSNSプロデュース術 ☆☆☆☆

内容紹介
グラビアアイドル史上初のビジネス書発売!

「尻職人」倉持由香が伝授する最新の自己プロデュース術にして仕事論!
グラビアアイドルという職業に、みなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか。「可愛くて胸さえ大きければ水着姿を見せるだけでお金を稼げるんだから“楽”だよな」と思っている方もいるかもしれませんが、現実はめちゃくちゃ厳しいのです! 芸能界では地位が低く見られがちな私たちの仕事で“稼げる”人は、ほんのひと握り。雑誌のグラビア、テレビの一席を巡り、熾烈な競争が繰り広げられるグラビアアイドルの世界を生き残るには打算的な“戦略”が必要でした。本書では、お尻の自画撮りをSNSに拡散し、「#グラドル自画撮り部」を立ち上げグラドル界をサヴァイヴしてきた私が編み出した、SNSによる自己プロデュース術と仕事論をお届けします。


 これはたしかに「ビジネス書」だ……
 僕はグラビアアイドルには詳しくないのですが、倉持由香さんと「尻職人」というキャッチフレーズは知っています。
 Twitterをやっていると、直接フォローしていなくても、リツイートされてきたり、自画撮りの写真を目にすることも多いのです。
 
 ただ、もうグラビアアイドルを熱心に見るような年齢ではなくなった中年男としては、「なんか気合入っているな、というか、ガツガツした感じで、『尻』とかアピールされると、こっちとしては引くよな……」という感じでもあります。

 そんななか、この本を読んでみたのですが、倉持さんが子どもの頃から「女性の身体とその見せ方」に深い興味を抱いていたことや、グラビアアイドルとしてなかなか成功できずにくすぶっていたなかで、「ガツガツと」見てもらうために努力を続けていたことを知りました。
 この人のセルフプロデュース術と向上心は、本当にすごい。
 その一方で、倉持さんは、「毎日同じ時間に出勤して、同じ仕事をするような生活には耐えられない」とも告白しておられます。
 多くの人に見てもらうために、トライアンドエラーを繰り返しながら、その結果をフィードバックしてより高い効果を追い求める、というのは、すべての仕事、とくに、ネットでのアフィリエイトに親和性が高そうです。

 
 この本を読んでいて、以前読んだことがある、「自分自身をプロデューサー的な視点で見続けていた」指原莉乃さんの著書を思い出しました。


fujipon.hatenadiary.com


 指原さんや倉持さんのファンというのは、見た目やキャラクターに魅力を感じているのと同時に、あるいは、それ以上に、彼女たちがプロデューサーとして、次にどんなことを仕掛けてくるのかを楽しみにしているようにも思われます。

 アイドルとかグラビアって、本当に難しい世界だと思うんですよ。
 そこには「読者や観客をひきつけるための技術」が集約されているのだけれど、ファンは「あまりに作り込まれたもの」に対して、なんとかく「釣られたくない」と思うところもある。
 「塩対応」とか「嫌々グラビアをやらされている感じ」「グラビア慣れしていない雰囲気」に魅力を感じることも少なくないのです。

 Twitterは当時から使っていましたが、今のように自画撮りを上げることはせず、ブログの代わりとして撮影会のオフショットを載せたり、オタク系アイドルになろうと漫画ネタをつぶやいていました。
 自画撮りに勤しむようになったきっかけは、セクシーな露出で人気のコスプレイヤーうしじまいい肉さんでした。うしじまさんの自画撮り写真を見て「自画撮りってすごくエロい」という発見があり、自分なりに少しずつアップするようになったのがきっかけです。そして、撮影会で撮って頂いた写真より自画撮りを載せる方が、フォロワーの増加率が高いということにも気づきました。カメラマンという他者の存在がない自画撮りはプライベート感が強く、そこがファン心理を掴むのだと考えました。
 そして、もう一つの転機となったのは2013年の春頃になります。当時、ニコニコ生放送でグラビア番組を毎週やっていた私には、なじみのカメラマンさんがいました。ある日、その方から「もっちーは大きなそのお尻を武器にした方がいいよ。出さなかったらただの無駄尻だよ!」とアドバイスを頂いたのが、”尻職人”が生まれたきっかけです。
 その言葉を聞くまでの自分は、他人よりもお尻が大きいことがコンプレックスでした。被写体の魅力を一番引き出してくれるであろうカメラマンさんから無駄尻と言われたのは衝撃的で、その日を境に「今までは隠していたけど、いっそ出すなら派手にやってみよう」と思い、Twitterでお尻を強調した自画撮り画像をアップするようになりました。


 倉持さんも、最初から自分のセールスポイントをうまくアピールできていたわけではなく、試行錯誤の末にたどりついたのが「自画撮り」と「お尻」だったのです。
 プロのカメラマンが撮った写真よりもプライベート感がある自画撮り+本人にとってはずっとコンプレックスだったお尻。
 先入観を捨てて、事実を検証し、あれこれ試してみた先に「答え」はあった。
 

 芸能人は大金を稼いでいると思われがちですが、グラビアアイドルに限っていえば稼げる人というのはほんの一握りです。
 その理由は、私たちの収入源が限られていることにあります。じつは、グラビアアイドルの仕事というのは、花形と思われている雑誌の表紙を飾ってもノーギャラの場合がほとんどです。では、どこで稼いでいるかといえば、ほとんどのグラドルたちは写真集や映像作品の売上げ、撮影会やイベントが主な収入源となります。
 中でも活躍の場が限られている駆け出しのグラドルであれば、目の前の撮影会にその月の収入がかかっている現状もあり、私も今の事務所に入ってからは月に数回のペースでひたすら撮影会を続けていました。
 ただ、華やかな世界を夢見て入ってきた反動なのか、雑誌やテレビに出演できないような悶々とした日々を過ごすうちに、心が折れてしまい事務所を辞めてしまうグラドルたちもたくさん見てきました。
 しかし、今になって思うのは「撮影会しか仕事がない」ではなく「撮影会からどう次に繋げるか」と自分で考えられる子でなければ、芸能界では生き残れないということです。
 私の場合は、撮影会の休憩時間に楽屋でひたすら何百枚もの自画撮りを撮り溜めてTwitterでフォロワーを増やすための素材としたり、撮影会で撮って頂いたデータをブログのネタとして載せたり、ポージングや表情、衣装の研究の場として撮影会を活用していました。こうして撮影会という一つの仕事を、どうやって別の仕事に活かすかを考えるようにしてきました。


 倉持さんは、Twitterでも、ただ漠然と写真をアップロードするだけではなく、それぞれのツイートへの反応をチェックしておいて、グラビアで着る衣装を選ぶ際の参考にしたり、意見を求められたときに「データに基づく提案」をしたりしていたそうです。
 仕事に対しても、事前の準備や、その後の関係者へのフォローやSNSでの宣伝など、とにかく「意識が高い」ことに驚かされます。
 気持ちのアピールだけで実行に移さない「意識高い系」じゃない。
 常にギャラ以上の価値を提供しようとするプロ意識の高さに圧倒されるのです。


 カラーページの「グラビアアイドルの自画撮り術」は、あなたがグラビアアイドルであれば、いや、うまく自画撮りをしたい、という人には、ものすごく参考になると思います。「パンツの魅力は食い込みシワ」「参考書はエロ漫画」なんて見出しには、「なんかすごいな……」と思ってしまうのですが。

 未来を見据えて今を生きるのは、人生にとって不可欠です。その上でも努力は欠かせないのですが、ただ、努力にも方向性があります。
 みなさんに伝えたいのは「打算的に努力する」ということの大切さです。打算というとなんだか聞こえは悪いのですが、私は打算的に動くことこそ素晴らしいと思います。何も考えないで流されるまま生きている方が情けないし、それならば毎日を何かのために考えて生きている方がよっぽどカッコいいと思えるからです。


(中略)


 日本人は”ガツガツする”という感覚にどうも苦手意識があるようにも思えます。ただ、やる気を見せるという意味でもガツガツするという姿勢は必要です。
 打算的という言葉にもどこか「いやらしさ」みたいなものを感じる人もいますが、世間体を気にしていたらそれこそ何もできなくなります。どうせなら「打算的に生きて何が悪いんだ!」くらいの強い気持ちを持ってもらいたい。いうなればその人自身が「深く考えている」ということの表れです。だから、胸を張って主張してみてください。


 予想よりもはるかに「ビジネス書」だったことに、驚きながら読みました。
 「グラビアアイドル」が題材のおかげで、興味本位で手にとった僕でも、読みやすく、わかりやすかった。
 あたりまえのことを、あたりまえにきちんとやるって、やっぱり大事なことみたいです。


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