- 作者: 大内明日香,若桜木虔
- 出版社/メーカー: アスペクト
- 発売日: 2007/03
- メディア: 単行本
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出版社/著者からの内容紹介
"字の本"なんか読まなくても、小説は書ける! ----日本中の
小説家志望者に告ぐ! 「小説をたくさん読まないと小説家になれない」なん
て大ウソ!
人気作家になりたかったら、まず人気マンガから学ぶべし!
過去最多の小説入門書で言われるとおりに古典の名作小説ばかり読んでいて
も、それは"小説を読める人"になれるだけで、いつまでたっても小説家にはなれ
ません。
むしろ「すべての物語はパターンとバリエーションから成り立っている」と割
り切ってしまえば、今、大人気のマンガやアニメ、ゲームの方が得るものは多い
のです! 小説とは売れる部数のケタがまるで違うマンガの方が、より「売れ
る作家になる」ための秘訣が隠されているはずと思いませんか?
前代未聞、空前絶後の「マンガで始めるストーリー作法」、すべての小説家、
ライトノベル作家志望者に精魂込めて捧げます!
いろんな意味で「興味深い本」ではありますし、自分で小説を書いてみようという人には、かなり参考になる本だと思います。「良い小説を書く方法」よりも、「売れる小説を書く方法」「小説家として食べていく方法」を重視して書かれているので、一読者としては、正直、「こんなふうにして書かれた小説ばかり読まされたら悲しいな……」とも感じるんですけどね。
これから選べ! 4つの黄金パターン
早速ストーリー作りを始めます。
パターンを決めないと多作はできません。
ですから、あなたも自分のパターンを決めましょう。
ここで金鉱脈が見つかるかどうかが勝負の分かれ目です。ある亡くなった有名マンガ家さんに、こういう話があります。
その人はマンガの週刊連載中に「疲れたからやめたい」と担当編集者に言ったところ、「何百人ものマンガ家が金鉱脈を見つけるためにがんばっているのに、なんですか! あなたは金鉱脈を見つけたんですよ!!」って、ものすごい勢いで説教されたそうです。それで、連載を続けて大ヒット、と。しかし、突然「パターンを決めてスタイルを作れ」と言われても、急には思いつかない人もいるでしょう。
そんな人は、とりあえず次の4つから選んじゃいましょう。「主人公成長・破滅もの」
「旅もの」
「最初から英雄・天才もの」
「特殊なキャラ日常ひっかきまわしもの」それぞれ利点があります。
こういうのを読むと、「ケッ、文学なんていうのは、そんなに単純にカテゴライズされるもんじゃねえんだよ!」って言いたくなるのです。でも、いわゆる「ライトノベル」の世界では、確かにこの「4パターン」がほとんどかもしれません。いや、「文学」だって、これに「恋愛モノ」と「家族愛モノ」を加えるだけなのでは……
それぞれの「利点」については、実際にこの本を参照していただきたいのですが、実際に考えてみると、この4パターンって、もうほとんど「書き尽くされている」ような気もするんですけどね。
とりあえず、「プロの作家として食べていくこと」を目指す人にとっては、かなり役に立つ本ではあると思います。短時間で読めますし、一読の価値はあるでしょう。
ただ、一社会人としての僕は、こんなふうにも考えるのです。
「有名になるため」とか「お金を稼ぎたいから」という理由で選ぶには、「小説家」や「マンガ家」っていうのは、あまりに「ハイリスク・ローリターン」な職業です。この本に書かれていることを「実行」し、作家として食べていけるくらいの能力がある人なら、たぶん、大企業のサラリーマンとか医者とか公務員になったほうが、よっぽど安定した生活とそれなりの収入を得られるはず。僕は「平均的、あるいはそれよりちょっと下の勤務医」なのですが、小説家だけで僕より稼いでいる人は、「ごく一握りの人気作家だけ」だと思います。
これは、僕がすごく稼いでいるというわけではなくて、小説家というのは基本的に「儲からない」職業だからです。
印税は、出版社、その著者のランク、著作の人気度によっていろいろ違います。
従来、印税の相場は10パーセントでした。
つまり、1000円の本を書くと、1冊あたり100円もらえるわけです。560円の文庫本なら、56円ですね。
しかし、昨今の出版不況で、印税率が下がってきて、今では相場8パーセント、6パーセントというのも珍しくありません。噂では人気アニメのノベライズだと、印税1パーセントというのもあるらしいです。
それで、1冊あたりの著者の収入は、本体価格×印税率×発行部数の金額になります(他に細かい条件がつくこともあります)。たとえば、あなたが560円の文庫の小説を1冊書いたとしましょう。
本の刷り部数は仮に10000部とします(これでも相場よりは多めの部数です)。
560円×8パーセント×1万部=448000円。44万円ちょっと。
これが文庫1冊分の収入です。
現実にはこれからさらに税金が引かれるので、もっと少なくなります。
これだけの収入を得るために、あなたが書き上げる小説の分量は原稿用紙で250枚から300枚です。
これでは、「食べていくのも大変」ですよね。本をたくさん出して、それがコンスタントに売れている作家ならともかく。
東野圭吾さんが「作家になって一番辛かった時期」(『活字中毒R。』2006年3月9日)
↑を読んでいただくと、「作家生活の実情」がおわかりいただけると思います。
『放課後』で「江戸川乱歩賞」というメジャータイトルを引っさげてデビューした東野さんでも、最初はこんな感じだったのです。
もちろん、今はすごい収入なんじゃないかと思いますが、東野さんの場合は、「稀有なサクセスストーリーの主人公」なんですよね。
ほんと、「お金儲けのため」「有名になるため」なら、もっとラクで確実な方法はいくらでもありそうなのに。
基本的には「書けと言われなくても書かずにはいられない」くらいの情念がある人でないと、専業でやるには、割に合わない職業ではないかな、と僕は考えています。