琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

聞き上手になるには ☆☆☆


内容紹介
島耕作は、なぜ女性にモテて出世もできたのか
島耕作シリーズで有名な人気漫画家が、人に好かれて、モテて、成功できる、「聞き上手になる」ための方法・ヒントを、ユーモアを交えて教えます。著者の体験から導かれたものばかりなので、説得力があり、わかりやすく、とても楽しく読めます。
◆「聞き上手」に嫌われ者なし
「嫌な奴ほど自分から話を聞きに行く」、「相手のことを聞いておけば間違いない」、「目上には相談、目下には質問をする」など、どうすれば聞き上手になれるのか、具体的なノウハウがいっぱいです。著者の漫画を知っている人はもちろん、知らない人にも、興味深く読める内容になっています。

島耕作は、なぜ女性にモテて出世もできたのか?」
「マンガだからさ」

 などと僕は答えてしまいたくなるのですが(だって、僕もあのマンガを読んでいたら、「ああ、僕もサラリーマンになっていればよかった!」って思うもの)、ああいうストーリーを一般読者にそれなりの説得力をもって語れるのには、弘兼さんの「取材力」というのはたしかにあるのだろうな、という気はします。そして、この本で書かれている弘兼さんのノウハウを読んでみると、たしかに、こういう人は周囲から敬遠されがちな人から話を引き出すのが上手いだろうな、と思います。
 ただ、この本、どちらかというと「もともと人間好きで、周囲ともソツなくやれているんだけど、もう1ランクスキルアップしたいための本」ではないかと。

 上司や年長者へは、「意見を聞かせてください」と、相談するような姿勢で臨むのがよいと思う。
「この書類の書き方を教えていただけますか」
「駅までご一緒していいですか」
など、下手に出て話しかける。
 前述したように、ぼくの経験では、部下や年少者のそうしたアプローチをむげに拒む人はまずいない。はじめは怪訝そうにされても、何度か話しかけていくうちに、相手も、
「あいつはしょっちゅう俺のところにやって来る。俺を気に入っているのかもしれないな」
 と心を開いてくれるようになる。そして交流が進めば、自分の考えや情報、さまざまな薀蓄を伝授してくれるようになったりもする。

 初対面の人にも、下手に出ることでうまくいくことが多い。卑近な例を出せば、ふらりと立ち寄った初めてのレストランなどで、「いらっしゃいませ」のひとつもなく、
「一見さんは嫌よ」
 とばかり、しら〜っと迎えられることがある。こういうとき、「回れ右」で出ていってしまう人もいれば、「なんて無礼な態度」という思いを全身から発信しつつ入店する人もいるだろう。ぼくの場合は、
「あ、予約してないんですが、よろしいでしょうか」
 みたいに、腰を低〜くして尋ねてみる。たいがいこれでうまくいってしまう。そして席に案内されてからは店の雰囲気を読み、徐々に店の人との会話の糸口を探り出す。その場の空気がよくなれば、出された料理もさらに美味しく食べられるというものだ。

 さて、相手が年下である場合はどうか。先方は目上の人間を前にして、構えていたり、どう声をかけてよいかわからずにいたりすることが多いと思う。そういうときは、年上の自分のほうから、趣味を聞いたり天候の話をしたりして、その場の緊張感を和らげるようにしたいものである。それでなくても、いまの若者は「人付き合いが苦手」という人が多い。後述するように、上手に質問していって、相手の舌を滑らかにしてあげたい。

 いや、書かれていることは、「正論」なのでしょう。
 でも、率直に言うと、「こんなことを言われてすぐ実践できるような人が『聞き上手になるには』なんて本を手に取るとは思えない」のですよね僕には。そもそも、「上司」や「部下」、ましてや「一見さんに酷い態度をとる店」と、そこまでしてうまくやらなくても、とか考えてしまいますし。
 もしかしたら、この本は弘兼さんと同世代、いわゆる「団塊世代」の人たちが読んで、「まあ、このくらいのことは自分にはできているけどな」と、再確認して満足するための本なのかもしれませんが……

 世の中、もうちょっと基礎的なところで悩んでいる人ばかりだと思うんだけどなあ。
 こういうのって、「もっと自然な演技をしろ!」って書いてあるだけの演技論みたいなもので、入り口のところで悩んでいる人には、役に立たないですよね(ちなみに、「自然な演技をする」というテーマの実践については、中谷美紀さんのこんな話があります。興味のある方はぜひ)。

 というわけで、「初心者向け」の本ではないのですが、とりあえず「自分から話しかける積極性を持たないと、誰も大事なことを話してくれない」というのはまちがいないと思いますし、社会では、弘兼さんみたいな「人間好き」な「天然聞き上手」と競争しなけれならないのですから、相手の手の内を知っておくというのも意味があることなのではないかと。

参考リンク:「僕が人の話を聞く時に、絶対にやらないようにしていることが一つあります」(活字中毒R。(2007/8/28))
 

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