参考リンク:最近のインターネットの人口分布を、自分の観測範囲から分析してみた。 - orangestarの日記
先日、妻から「あなたはパソコンに支配されているみたい」と言われたのですが、それ以来、ちょっと考えこんでいるのです。
「じゃあ、もうネットなんてやめて、現実に戻る」っていうのも、なんか変だし。
最近はすっかり、ネットと現実の境界は、曖昧になってきています。
いや、もともと無かったのかもしれないけれども、少なくとも僕の周囲の人には「パソコンを使って何かをすること」そのものが異常だと感じる人はいないようです。
昔は「ネットサーフィンが趣味」という人が少なからずいたけれど、いまは、そんなことを言う人はいない。
ネットを使うことは、カッコいいことでもないし、珍しいことでもない。
「ネットで何をやるか」は、たしかに問題なんだろうけれども。
僕自身にも「言い分」みたいなものはあるのです。
僕はナチュラル・ボーン・インドアな人間なので、趣味は読書とゲームとネット。
運動やアウトドアは苦手だし嫌いです。
そのせいで、子供と遊ぶのも、ついつい「絵本を読む」とか「トミカ」とか「積み木遊び」とかになってしまいがち。
なるべく子供に接する時間を増やしつつ、ブログを更新するために、最近は少し早起きしてパソコンに向かっています。
いや、自分でもなんでこんなに睡眠時間を削ってまで更新しているんだろう?と思うことはあるんだけど、好きなんだろうなやっぱり。
そして、たぶん僕にできることのなかでは、これがいちばん「楽しいこと」なんじゃないかという気がするのです。
こうやってブログを書いていなければ、たぶん、その分の時間は寝ているか、テレビでも観てボーっとしているんじゃないかな。
いやいや、その「パソコンに支配されている」っていうのは、「もっと家族と積極的に触れ合ってくれ」っていう意味なんだろうとは思うんですよ。
うん、きっとそうだ。
最近は、息子が起きているあいだは、なるべくパソコンを起動しないようにしているけれど、心が次のエントリに向かっているのが、なんとなく伝わっているのかもしれない。
「パソコン(ネット)に支配されている」というのは、ある意味、「自分の足元を見なくなっている」ということなのかも。
ネットには「天下国家の話」が溢れているのだけれども、世の中に起こっていることの大部分は、「知らなくてもよいこと」と「知っていても、どうしようもないこと」だしね。
そして、知識というのは、深入りしようとすればするほど、かける時間に比べて、得られるものの効率は悪くなっていくものだし。
「情報」でご飯を食べていく人間でなければ、「他のことをやったほうがいい」。
それにしても、こうしてブログをやっていると、いまのネットで流行るものは、「炎上」と「ライフハック」だけなんじゃないか、という気がしてくるのです。
「はてなブックマーク」も、個人サイトの記事はほとんど無くて、「2ちゃんねるまとめサイト」か「ライフハック系」ばかり。
もちろんこれは昔からその傾向はあったのだけれど、最近はそれが顕著になってきた。
id:orangestarさんが書かれているように(って、このidコールを本当に久々に使った気がする……)、ネットでも『もしドラ』を買って感心するような「普通の人たち」が多数派になって、「ちょっと役に立ちそうな記事」を、とりあえずブクマしているのだろうと思う。
ずっとネットで「ライフハック」がブックマークされてきたのを見ている僕からすれば、「結局みんなブックマークするだけで、実行できていないじゃないか」というのと、「昔から同じような記事が繰り返し書かれて、ブックマークされ続けているだけではないのか」というのが入り混じった気分にはなってくる。
ブックマークされているのは「役に立ちそうな記事」がほとんどで、実際に「役立てている」人は、どのくらいいるのだろう?
もう「ネット上のコミュニケーション」っていうのは、mixiかtwitterかfacebookでやるもので、個人ブログっていうのは、「黙って読む」か「炎上させる材料にする」か「相手にしない」かのスタンスしか無くなっているのかもしれないね。
一昔前は、ブログのコメント欄では行儀よくしていた人が、『2ちゃんねる』では豹変したのだけれど、いまは、mixiやfacebookでは「仲間と密なコミュニケーション」を維持しながら、ブログのコメント欄に「突撃」していく人たちがいる。
「パソコン通信をやっているだけで、仲間」の時代があって、「自分のサイトを持っているだけで、同好の士」の時代があって、いまはもう、「SNSでの『友人』が、仲間」という時代になっている。
ネット人口が増えれば増えるほど、「自分のコミュニティ」への所属意識は高くなっている。
「他人とつながりたい!」とアピールしている人は、二言目には「ビジネス」「人脈」!
でも、だからこそ、「ちゃんとまとまった自分の話ができる」ブログって、これからは貴重になるはずです。
というかさ、ブログからtwitterの時代になっても、「キーパーソン」は、ほとんど変わっていない。
twitterやfacebookって、「背景を持たない人間にとっては、アピールしにくいツール」だし。
僕が個人サイトをはじめたきっかけは、ニューヨークの同時多発テロだったので、もう10年経ちます。
10年もやってきて、文章を書く能力も、ブログに来てくれる人の数も、所詮こんなものか……と考えることもあります。
これだけの時間、何か他の勉強をしていたり、もっと仕事を一生懸命やっていたら、「何か他のもの」になれたのだろうか……
ただ、その一方で、この時代に生まれていなかったら、僕は単なる「仕事嫌いで家でゴロゴロして本ばかり読み、週末は競馬に負け続けているオッサン」だった可能性が高い。
一日の終わりに、「ああ、今日も読んでくれた人がいたな」と軽く高揚できるのは、ネットのおかげなんじゃないかと思います。
僕は最近ようやく、「パソコンに支配される」人生をこえて、「パソコンを道具としてうまく使える」ようになってきた気がするんですよ。
だから、少しずつでも、「パソコンを利用して、現実と向き合っていく」ことができればいいな。
現実逃避のためのネットから、現実とほんの少しだけでも関わるためのネットへ。
というか、否応なく、そうならざるをえないでしょうし。
ただ、内心「ネットのなかすら、現実との境界が失われてしまった」ことに、淋しさも感じてはいるのですけど。
そんなことを書きつつ、今日から恒例の夏休みに入ります。
まあ、ちょっと見てきますよ、「現実」とやらを。
ちなみに、僕のTwitterはこちらです。
http://twitter.com/fujipon2