琥珀色の戯言

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【読書感想】世界と日本がわかる最強の世界史 ☆☆

世界と日本がわかる 最強の世界史 (扶桑社新書)

世界と日本がわかる 最強の世界史 (扶桑社新書)


Kindle版もあります。

世界と日本がわかる最強の世界史 (扶桑社BOOKS新書)

世界と日本がわかる最強の世界史 (扶桑社BOOKS新書)

内容紹介
日本人が知るべき世界の常識とは何か。そして、日本は世界の歴史をどう理解すべきなのか。
本書は、現代社会にも影響を与えている出来事に焦点をあて、同時に世界に影響を与えた「日本」の視点も加味した、骨太の世界史概観。
戦略的なアプローチで歴史を語る、ベストセラー作家による渾身の通史。激変する世界を理解するための最適な歴史書。


 この新書、最後のページを読み終えて、心底ホッとしました。
 ああ、ようやく終わった、って。
 新書一冊で、世界の歴史を概観する、というのは大変だし、いろいろ詰め込んだ感じになってしまうのは致し方ない、とは思うのですが、正直、これを買って時間をかけて読むのであれば、山川出版の教科書『世界史』を読んだほうが、よほど役に立つと思います。
 教科書の内容がダラダラと話し言葉風に引き延ばされ、まとまりも流れもないし、「世界と日本がわかる」というタイトルに対しても「で、これを読んで、何が『わかる』の?」と言いたくなります。


 著者は、「あとがき」で、こう書いておられます。

 日本では、歴史教育が学者たちの内輪の多数説で組み立てられています。だから、近代史や古代史など、もっぱら日本の過去を否定することが目的のような人たちが研究者に多いので、内容もそれに引っ張られてしまっています。
 そこには、一般国民が日本人として日本国家の国益を主張していくための知識を得るということが、何ら考慮されていません。なにも、日本の国益を実現するだけが歴史を勉強する目的ではありませんが、日本国家が何を主張してきたのか、いま、何を主張しているのかも知らないのでは話になりません。
 そこで、本書の狙いは、一般の読者の方はもちろん、政治家や霞ヶ関の官僚に対しても、日本人として世界と日本の歴史をどのように理解し、併せてさまざまな問題について世界の人々にどう主張していくかを考える際の基礎知識を提供することにあります。
 したがって、日本の国益も十分に考えていますが、同時に、欧米の人にも、そしてアジアの人にも、理解しやすいような論理構成を心がけましたので、さまざまな場面で本書を役立てていただければうれしく思います。


 で、この本には、教科書をよりわかりにくくしたような「世界の歴史のダラダラとしたまとめ」+「著者の主観まみれの歴史や他国への評価」が書かれているわけです。

 中国人は得意不得意があって、ノーベル賞が取れないことに象徴されるように、物事を理詰めで考えるのはあまり得意でなさそうですが、土木工事などはもっとも得意とするところです。

 さらに、古今東西を通じて厄介な存在が亡命者です。アメリカのブッシュ政権が亡命者に騙され、イラク大量破壊兵器の開発をしていると思い込み戦争を起こしたのは記憶に新しいのです。彼らは体制が覆らない限りは帰国できないから、デマを流し、母国の政権転覆を外国で訴えるので、いつの時代も要注意なのです。


 この、ひたすら「主語がでかい」、そして偏見まみれの話が「理解しやすい論理構成」なのでしょうか……論理じゃなくて、著者の主観でしかないですよこんなの。
 僕は歴史学者ではありませんが、最近流行りの「歴史学者以外の人が語る歴史の本」の多くが、こういう「バカバカしいプロパガンダ本」になってしまっていることに呆れているのです。
 こんなの、「アントニオ猪木が血糖値500以上だったのをハードな運動療法で血糖値を下げた」とかいうのとおなじで、「その人は結果的にそれでうまくいったのかもしれないけれど、万人向けではない」としか言いようがありません。
 この新書、「教科書を話し言葉風にした内容+ちょっとしたエピソード+著者の偏見に満ちあふれた歴史観」からなっていて、竹田恒泰さんの本と同類なんですよ。


 ああ、これなら教科書を読むべきだな……と、退屈きわまりない上に、ところどころに他国ヘイトや「日本はこうすればよかった、という私の素晴らしい考え」が挿入されているので、不快指数も急上昇。
 オビには「歴史を戦略的に捉えてこそ、日本の進路が見える」って書いてありますが、教科書的なことがダラダラ並んでいるだけで、「戦略的に捉えている」のはどこなのか教えていただきたい。
 せめて面白ければ、と思うのですが、カタカナ人名と歴史的事実が並べられているだけなので、読むのが苦痛で、ページ数以上に長く感じます。
 ダメな新書、ダメな「素人による歴史書」とはこういうものだ、という悪いお手本ですよこれ。
 ある程度基礎知識がある人が、短時間で再確認する……のであれば、山川出版の教科書を再読することをおすすめします。


もういちど読む山川世界史

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