第2次世界大戦中、デズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は、人を殺してはいけないという信念を持ち、軍隊に入ってもその意思を変えようとしなかった。彼は、人の命を奪うことを禁ずる宗教の教えを守ろうとするが、最終的に軍法会議にかけられる。その後、妻(テリーサ・パーマー)と父(ヒューゴ・ウィーヴィング)の尽力により、デズモンドは武器の携行なしに戦場に向かうことを許可され……。
2017年の映画館での15作目。平日の夕方からの回で、観客は僕も含めて7人でした。
予告編では触れられていなかったのですが、沖縄戦が舞台の戦争映画です。
戦争映画とはいっても、宗教上の信念から自らは銃を手に取らず、衛生兵として激戦のなか戦場を駆け回り、大勢の傷ついた兵士を助けた男の実話。
冒頭に出てきたのが、"based on true story"ではなく、"true story"だったことに、制作側のプライドを感じました。
いや、観ていると、さすがに「こんなに大勢の日本軍に狙われても生き延びるって、ランボーでもないと無理なのでは」とか思うのですが、まあ、ディテールまで含めて「true」っていうわけにはいかないですよね。
戦場にはそこにいた人の数だけの”true”があるのでしょうし。
この映画、とにかく戦場の描写がすさまじのです。
炸裂する爆弾の破裂音と衝撃、飛び散る血や肉片。目をそむけたくなる兵士たちの亡骸……
PG-12指定で、「小学生には保護者の助言・指導が必要とされ、なるべく親や保護者と一緒に観るのが望ましい」ということになっているのですが、僕は観ていて、「これ、親と一緒だったら、小学生でも見られるのか?」と驚いてしまいました。
僕が子供のころにみていたら、絶対トラウマになったはず。
前半は、「銃を手に取らないのに軍に志願してきた」デズモンドへの周囲の厳しい扱いが描かれます。
軍隊でのイジメってひどいよなあ、と思いつつも『フルメタル・ジャケット』で免疫がついているので、これはまあ、こういうものだろうな、という感じです。
いやむしろ、周囲は「良心的兵役忌避者として除隊を許してやるから、家に帰れ」って言っているんですよね。
正直、デズモンドの行動は、わからんというか、納得できないというか。
軍隊という「嫌でも戦場に出れば人を撃たなくてはならない集団」には、ある種の洗脳というか、集団催眠みたいなものが必要なのでしょう(本当に必要なのか?と言われると、証明する方法はないけれど)。
デズモンドのような存在がひとり混じってしまうと、軍隊としては規律が保てなくなる、というのも事実でしょう。
後半は、観ていて、「もう勘弁してくれ……」と言いたくなる、リアルで残酷な戦場シーンの連続。いや、これがリアルかどうかなんて、本当は僕にはよくわからないんだけどさ。戦争に行ったことないし。でも、これは戦場には行きたくないなあ、とは思いますよ。
戦場で銃を持たずに多くの負傷者を助けた衛生兵・デズモンドの伝記と思わせておいて、本当は戦場の悲惨さを徹底的に映像化してアピールする反戦映画なんだな、と僕なりに納得しながら見ていたのだけれど、最後まで見てみると、あまり「反戦」でもないような気がしました。
どちらかというと、「戦場はこんなに残酷な場所だけれど、そんな場所で命をかけてでも守らなければならない大切なものがある」と言っているように感じるのです。
ただ、デズモンドは自分で銃や手りゅう弾に触れることはないのだけれど、同僚の兵士たちは、自分の身やデズモンドを守るために、銃をうちまくり、手りゅう弾を投げ、火炎放射器も使用します。戦艦からの砲撃でハクソー・リッジの日本兵を抹殺しまくる場面もあるのです。
デズモンド自身は、味方だけではなく、敵の負傷兵にも助けの手を差し伸べたそうですし、「自分で武器を使って、人を殺さない」という自分ルールを守っています。
ただ、それはあくまでも、「自分がそのルールを守る」ことに限られていて、「他人どうしが殺しあう」ことに抵抗はないようです。
どちらかというと、「人を殺さない、平和主義な人間を描いた」というよりは、「戦争という状況のなかで、いかにして自らの信仰を貫くか」という「戦争と信仰」のせめぎあいを描いた映画のように思われるのです。
観ていて、他の戦争映画よりも、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙』を思い出したんですよね。
そういえば、アンドリュー・ガーフィールドさんって、『沈黙 -サイレンス-』にも出演していました。
この映画が、信仰を持たない日本人である僕にとって、なんだか腑に落ちないというのは、たぶん、「神との対話を実感できないから」なんだと思います。
アメリカ人にとっては、けっこう身近というか、共感しやすいテーマなのかもしれません。
やられているのが日本軍であるというのは、いたたまれないんですよねやっぱり。
当時の沖縄の日本軍には、負傷兵を送る「後方」が、もう存在しなかったことを考えると、これでもまだ、アメリカ軍のほうがはるかにマシではあったのです。
デズモンドはすごいなあ、えらいなあ、と思うけれど、僕にとっては「いい話」と素直に受け止めきれない、そんな映画でした。
そもそも、「戦争に参加している」と「加わっていない」の線引きはどこにあるのか。
自らは血を流さず、傭兵を雇って戦った人や国は、「戦争をしていない」「人を殺していない」と言えるのか。
正直、「感動した」というより、日本とアメリカの文化的な背景の違いを考えさせられる映画でした。
それにしても、この映画の戦場の描写はすごかった……
fujipon.hatenadiary.com
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