- 作者: 福島直樹
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2018/05/30
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
- 作者: 福島直樹
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2018/06/06
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商品の説明
新たな「学歴差別」 <人事担当者「いや、あそこの大学は遠慮します。毎年会社説明会に来てくれるんですが、ちょっとね……」>(本文より)
新卒採用の会社説明会に一流大学の学生が参加できるのに、偏差値の低い大学の学生だと「満席」を理由に申し込めない──学生を大学名でふるいにかける「学歴フィルター」の存在がたびたび就活生から指摘され、ネットで炎上している。
都市伝説のように語られる「学歴フィルター」は確かに存在する。
20年以上にわたって、就活業界で学生の指導にあたってきた著者がその実態を明らかにする。
主な内容
■「学歴フィルター」はこんな場面で使われている!
■企業はなぜ「学歴フィルター」を使うのか?
■大企業の56%が設定する「ターゲット大学」
■リクルーター制度も大復活
■そもそも「大学の偏差値」と「優秀な人材」には関係があるのか?
■「高学歴は努力の結果」は本当か?
■偏差値が低い大学から「学歴フィルター」を乗り越えた学生は何をしたのか?
「学歴フィルター」の具体例を紹介し、その社会的な問題点を指摘、対策も紹介する、初の解説書。
学歴(出身大学)で、人間の価値が決まるわけではない。
……と多くの企業は表向きでは言っているのですが、実際は、「学歴による就職の有利不利」というのは存在しています。
著者は、学生の就職支援、とくに、中堅大学・低選抜大学(俗に言う「Fラン大学」)の支援に長年取り組んできたそうです。
ソニーが1991年に学歴不問(学校名不問)の新卒採用を始めて話題になり、追随する企業もたくさんあったのですが、2000年代になると、多くの企業は「『大学名を問う』ことにひっそりと回帰した」のです(ちなみに、ソニーは現在も学校名不問、人物重視の採用方針を堅持しているとのことです)。
2010年くらいからは、「学歴フィルター」「ターゲット大学」の存在が、就活生の話題となっていました。
最近でも学歴フィルターが露見し、炎上するケースが続いている。
2018年3月には帝京大学に通う女子大生(2019年卒)のツイートが発端となって炎上した。企業名は伏せられていたが、この学生が説明会にエントリーしようとしたところ、すべての回が「満席」であり、「現在、受付可能な日程はありません」と表示されたという。あまりに満席になるのが早いと訝しんだ学生は、試しに自身の登録情報を「早稲田大学」に変更。そのうえであらためて画面にアクセスしたところ、すべての回が「受付中」と表示されたという。このツイートは2万以上もリツイートされた。
中堅大学、低選抜大学の就活生にとって学歴フィルターは死活問題だ。この問題への関心の高さが窺える。
表向きは「どこの大学でも受け付ける」と言いながら、こうした「差別」が行われている、ということに、ネットでは大きな反発がありました。
しかしながら、それと同時に、「存在を隠しているのは問題だが、優秀な人材を効率的に採用するために『学歴フィルター』が存在するのは致し方ないのではないか」と言う意見も少なからずあったんですよね。
著者も、この本のなかで、東大、京大、一橋、東工大、早稲田、慶應などの「一流大学」の卒業生は、質問力や問題解決力、積極性が高い、「優秀な人材」の割合が高いことを指摘しています。
もちろんそれは「確率」の問題であって、学歴がすべてではないのですが、ものすごい数の応募者のなかから、効率よく優秀な人材を見つけようとするのであれば、「学歴」というのは、かなり有用な指標ではあるのです。
ネットで多くの企業に一括登録できるようになり、人気企業では、応募者の数が激増したことも、「学歴フィルター」による選別があらためて重視されるようになった理由なのです。
人を評価する、というのは、とても難しいことではあるんですよね。
採用試験では、みんな、自分の良い面だけを見せようとします。面接での印象が良くても、それがその人の本質かどうかはわかりません。
インターンシップなどで高評価の学生は、一次面接を受けた後、次の二次面接や三次面接を飛ばして、いきなり最終面接に進んだ。
いったい、どんな就活生が飛び級したのだろうか。
同社では、すでに入社して働いている社員のなかで、特に優秀で好業績を残している者の特徴を入社時の性格検査をもとに追跡し、分析した。すると内省性(自身の考えや行動を深くかえりみる傾向)と実行力の2点において、他者よりも突出していることが判明した。
面接では、内省性と実行力において他の学生より頭一つ抜けている学生は誰か、情報を丹念に集めた。いつ、どこで、どれほどの期間、また何人程度の集団の中でいかにそれらの特性を発揮したのかを詳細に聞いて、過去の具体的エピソードを確認した。このような面接を「行動面接」と言う。
学生時代の優れた行動事実が確認できれば、入社後もそのような行動が再現される可能性が高いと判断するのだ。このような選考を高い評価で通過し、「飛び級」した就活生は、最重要4大学、優先15大学に多かったという。
ちなみに、行動面接が多くの企業で導入された背景には過去の教訓がある。
新卒採用面接での印象がよく、気の利いた発言ができ、エントリーシートの文章も上手な学生を採用してみたところ、入社後は態度が一変し、主体的に仕事に取り組まない「評論家」タイプが少なからずいたのだ。
そんな失敗を防ぐための対策の一つが行動面接だ。その場の気の利いた発言ではなく、嘘のつけない過去の「行動事実」を丹念に確認していくのだ。
「評論家タイプ」か……心当たりがありすぎる……
企業からすれば、「面接による人物評価」での採用がなかなかうまくいかず、試行錯誤の末、「学歴」に回帰してきたという面もあるのです。
「行動面接」での評価と「学歴」に相関がみられるのであれば、手間やコストを考えると、「学歴」が重要な評価基準になるのは妥当ですよね。
企業側としては、どこでも東大・京大クラスを狙う、というよりは、自社のこれまでの採用実績などを踏まえ、GMARCH(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政)クラスの大学を中心にリクルート活動を行う、というケースもあるそうなんですよ。
採用する側も、「超高学歴狙い」ばかりではなく、自社の現状をみて、「自分の会社に合った学生」とのマッチングのために「学歴フィルター」を使っているのです。
著者は、こう述べています。
そもそもなぜ企業は学歴を重視するのか。本当にそれで優秀な人材を集められるのか。ペーパーテストは得意だが仕事ができない、そんな人間が集まりはしないか。低選抜大学には受験勉強は苦手だったが、柔軟な発想ができる学生がいるのではないか。
これは長年、学歴偏重の批判が出る度に、浮上してきた疑問だ。
だが、企業が学歴を重視するのには合理的な理由がある。それは、優秀と感じられる学生の出現率は大学の偏差値にある程度「比例」するからだ。
企業側から見て、上位大学には優秀と感じられる学生が多いのである。新卒採用を担当すれば誰もが実感するのではないだろうか。実際、私が交流する人事や面接官経験者はみな口を揃えてそう言う。
大手企業の人事の本音は「上位大学の学生だけを集めたほうが圧倒的に効率が良い」ということになる。企業が学歴差別を行う最大の理由がこれだと私は認識している。20年間、多数の学生を見てきて感じたことでもある。
ただ勘違いしないでほしい。偏差値の低い大学にも優秀な学生はもちろんいる。実際にそのような大学から難関企業に縁故なしで内定したケースを私はたくさん見てきた。前にも書いたようにそのような学生を支援することに私は大きなやりがいを感じてきた。
だからこそ、学歴差別の事実を隠すわけにはいかない。事実は事実として受け入れるところから、中堅大学、低選抜大学の学生の「逆転就活」が始まると信じるからだ。
著者は、中堅大学、低選抜大学の学生たちが「逆転就活」を成し遂げるための具体的なコツや成功例も紹介しています。
彼らは不利ではあるけれど、けっして無理ではない。
どうせFラン大学だから、と消極的になってしまうのも、なかなかうまくいかない理由のひとつではあるのです。
高収入世帯からの子供は高学歴になりやすい、という話にも触れられていて、「格差の固定」がみられてもいるんですよね。
「学歴」が単なる信仰ではなく、「根拠のある評価因子」であることがわかってくると、「学歴フィルター」を批判するのは難しいのです。
もちろん、「優秀な人は、いろんなところにいる」のだけれど、魚が多いところで釣りたいですよね、釣り人としては。
しかし、堂々と「学歴を重視します」と言うのは、それはそれで「感じが悪い」という感覚を持つ人も多いのです。
だからこそ、就職説明会での「学歴フィルター」のようなことが起こってしまうのだよなあ。
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