琥珀色の戯言

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【読書感想】とりあえず並んでみた。 ☆☆☆

とりあえず並んでみた。 (ワイドKC Kiss)

とりあえず並んでみた。 (ワイドKC Kiss)


Kindle版もあります。

内容紹介
漫画家・鶴ゆみかに憧れのグルメレポ漫画の依頼が。しかしその企画には、「行列店限定」という恐ろしい制約があった! 築地ではお寿司に並び、クリスマスには渋谷のスイーツに行列、焼きそば専門店ではソースの匂いをずっと嗅がされながら長時間のおあずけ…。待ち時間もたっぷり楽しむおあずけ系グルメ漫画!


 あまり「グルメ」には興味がなさそうな漫画家に、「行列ができる店に実際に並んで、その店の食レポを描く」という依頼がやってきます。
 「行列店」といえば、『いきなり!黄金伝説。』でU字工事がやっていたような、前日の夜から熱狂的なファンが並び、長い待ち時間の末にようやく買うことができる(食べることができる)店、というイメージがあるのですが、この本で紹介されている「行列店」には、正直、あそこまでのインパクトはないんですよね。
 もちろん、あれはかなり極端な例だとは思うのですが。

 僕はあの番組が好きだったので、「行列ができる店」で、「行列に並んでいる時間も含めて描く」というコンセプトはすごく魅力的だったのですが、この本で紹介されている店の「行列度」にはけっこうバラツキがあって、第1話の築地の寿司屋とか、高田馬場とんかつ店のような「本当に行列が絶えない店」もあれば、「すぐに入れるんだけど、行列していなかったから、採りあげられなかった」という微妙な店もあるんですよ。
「なんとか人が並んでいたから、ネタにできる!」というのは、舞台裏としては興味深いものではあるし、率直だとは思うけれど、そんな「なんちゃって行列店」みたいなのは拍子抜けするよなあ、と。
ただ、こういう作品って、読んでいくうちに、登場人物になんとなく思い入れが生まれてきて、「まあ、このくらいのほうが気楽に読めるし、あんまり気合いの入ったグルメマンガばっかりじゃなくてもいいよね」とか思い始めたりもするんですよ。
僕自身も、そんなに食べものに思い入れがないだけに(それならグルメ漫画なんか読むなよ、って話なのですが)、「そんなものだよね」って、共感できるところも多いし。
肉類の美味しさの表現が、みんな「脂があま〜い」になってしまっているところとか、せっかく「行列店」という縛りを課しているのに、並んでいる時間にあまりドラマがないとか、もったいないなあ。

絵、とくに食べものの絵がすごく丁寧で、美味しそうに描かれているのはポイントが高いです。
高級グルメとか辺境の店とかじゃなくて、並ぶ気力さえあれば、東京近郊に住んでいる人にとっては、明日にでも行ける店が多そうですし。
九州在住の僕にとっては、「ガイドブック」としては使いがたいのは、しょうがない。

正直、この漫画じゃないと!という感じはしないのですが、「誰が読んでも、それなりに楽しめるし、嫌味なところや癖が少なくて読みやすい」というのは、それはそれで重宝されるのではないかと思うのです。
どれか一篇だけ読んでも、十分わかりますし。


恨ミシュラン (上) (朝日文庫)

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ヨーロッパたびごはん (コミックエッセイの森)

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