- 作者: ふろむだ
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2018/08/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: ふろむだ
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
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内容紹介
伝説的なブログ『分裂勘違い君劇場』を中心に、
何百万人もの感情を揺さぶり続けたモンスター・ブロガーがついにデビュー!実力を磨くよりも、はるかに人生を好転させる
「錯覚資産」とは何か?誰もが一度は思う
「なんであんな奴が評価されるんだ! ?」の謎を解き、
「誰にでも使えるズルい武器」として解説する異色作。本書を読み終えた後には、誰もが
人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている
というタイトルに納得しながらも、
そうした世界でどう生きるべきかを考え込んでしまうはずだ。
「要するに、ハッタリをかまして、どうやって人を騙していくか、というテクニックを解説した本なんだろう?」と、ややネガティブな先入観を持って読み始めたのですが、すごく面白かった。
これまでの人生で、薄々感じていたことが、わかりやすく、そして容赦なく書かれている本なんですよね、これ。
著者は、1974年にカナダで行われた選挙で、イケメンの政治家が、そうでない政治家の2.5倍もの票を獲得していた事例から、語りはじめます。
いや、ここで重要なのは、「イケメンに投票した理由」なんだ。
調査の対象となった投票者の73%は、「私が彼に投票したのは、彼がイケメンだからではない」と思っていたのだ。
「イケメンだから、投票しちゃった部分もあるかな」と思っていたのは、14%にすぎない。
人々は、「イケメンだから投票した」という自覚なしにイケメンに投票しただけでなく、「人柄が信頼できるから」とか「経済政策に期待できるから」とか「実績があるから」とか、容姿とは別の理由で、投票したのだと思い込んでいたのだ。
この本を読んで痛感したのは、「人の記憶というには、自分で考えているよりも、はるかに簡単に『改変』されてしまう」ということなんですよ。
僕自身、他者に対して、「この間と話が違うじゃないか、この人は、わざと知らんぷりをしたり、嘘をついたりしているのか?」と感じることってあるのです。
でも、この本を読むと、さまざまな研究の結果として、人間は自分の記憶を無意識のうちに変えてしまうのが「普通」であるということがわかります。
ここで重要なのは、「イケメン政治家の容姿に影響されて、イケメン政治家に投票してしまったのに、『イケメンだから投票したわけではない』と言う人」はウソつきでもバカでもないということだ。
彼らの「意識」は、たしかに、容姿ではなく、政治的手腕・人柄・政策を見て、投票したのだ。しかし、まるで夢遊病者のように、彼らの「無意識」が、彼らの意識が知らないところで、政治手腕・人柄・政策の評価値を書きかえてしまっていたのだ。
彼らの「意識」は、いわば善意の第三者であって、ウソをついているわけではないのだ。
また、彼らはバカだから、そんな愚かなことをしたわけじゃない。
知能が高く、有能な人であっても、自分の無意識が、自分の知らないところで、勝手に脳内の評価値を書きかえるのを、防ぐことはできないからだ。
これは、脳のセキュリティホールなのだ。
僕自身も、他者からみれば、「あいつ、この間と言っていることが違う」と、しばしば思われているのでしょうね。
この本を読みながら、僕は将棋で人間の棋士とコンピュータが対戦した『電王戦』のことを考えていました。
対局のなかで、人間側に、コンピューターの思考ルーチンの癖というか、バグを突いて勝った棋士がいたのです。
相手の隙をつくというのは、勝つためにはかなり有効な手段ではあります。
その一方で、あらかじめ配布されていて、同じものが本番の対局でも使われることになっていたソフトの癖につけこむのが「正々堂々と戦った」と言えるのか、という議論もあったんですよね。
これが「人生」であったら、どうだろうか。
「恋愛工学」という「モテるための技術」を提唱している人たちがいるのですが、そういう「相手の思考ルーチンの癖を利用して、うまくやる」ということを「ライフハック(仕事の質や効率を上げるための工夫や取り組み)」として実行するか、それとも、「そんなズルはしたくない」と思うかは、人それぞれです。
この世界は、思考の錯覚に満ち溢れている。
なぜなら、「プラスのイメージを引き起こすもの」であれば、なんでも「全体的に優秀」という思考の錯覚を引き起こしてしまうからだ。
たとえば、
「売り上げを半期で73%増やしました」
「DAU500万人のアプリのサーバーを運用していました」
「株式会社凸凹商事の営業部長をやっていました」
「月間300万PVのブロガーです」
「あの有名人のベストセラー本を担当した編集者です」
なんてわかりやすい実績は、どれも「思考の錯覚」を作り出す。
たとえそれが実力によるものではなく、上司や同僚や部下や顧客のおかげで達成できた実績だとしても、強烈な思考の錯覚を生み出すのだ。
この本には「効率よく、自分を『デキる人』に見せるための基礎的な理論」が書かれているのですが、実際にこれを実行している人って、堀江貴文さんとかイケダハヤトさんとか、はあちゅうさんみたいな感じになるのかな、と僕は思いました。
ブログを書いていると、「同じような内容を書いているのに、なんでこの人が書くとこんなに話題になって、僕が書くと閑古鳥の鳴き声さえ聞こえないのだろうか」と嘆く状況が多々あるのです。
これがまさに「錯覚資産」の差なのです。
会社でも、一度、「コイツはできる」という期待と信頼を上司に持たれると、重要な仕事を任されたり、勉強する機会を与えられたりして、実力をさらにつけ、周囲との差が開いていくのはよくあることです。
もちろん、プレッシャーで潰れてしまう場合もあるのですが、「錯覚資産」の運用の上手い人というのは、セルフプロデュース力に長けています。
大部分の人は、自分ができることを大きく見せ、できないことはスルーするというセルフプロデュースを「自由に生きる」とか「好きなことを仕事にする」という言葉に、無意識に変換してしまうのです。
こういうセルフプロデュースって、この本を読んで意識的にやろうとしても、なかなかうまくいかないものではなかろうか。
著者は、「あれこれ思い悩むよりも、試行回数を増やすことが大事なのだ」と指摘しています。
そもそも、才能があるかないかなんて、自分にも他人にも、そうそう見分けはつかない。見分けがつくと思っているのは、だいたい思考の錯覚だ。結果的にヒットしたら、「もともと才能があったからヒットしたのだ」と知覚され、結果的にヒットしなかったら、「才能がなかったからヒットしなかったのだ」と知覚されるだけだ。
未来のヒットが、過去にさかのぼって、現在のあなたの才能のあるなしを書きかえるのだ。
注意しなければいけないのは、成功者は、「自分のやり方が正しかったから成功したのだ」というフリをしたほうが、圧倒的に得だということだ。
もし、成功者のやり方が正しかったために起業に成功したのであれば、多くの人は、その成功者とビジネスをしたがるだろうし、人材を集めるのも楽になる。なぜなら、「この人間は再現性のあるビジネスの成功方法を知っているだろうから、そういう人間と組んでビジネスをすれば、成功する確率が高い」と人々が思うからだ。また、その成功者から、成功法を学ぼうとする若くて優秀な人材をどんどん集めることができる。
返す返すも忘れてはならないのは、「最初の起業と、成功者の2回目以降の起業では、成功確率がぜんぜん違う」という点だ。ひとたび成功した人が、何度も成功するのは、「その人のやり方が正しかったから」ではなく、「『その人のやり方が正しかったから』だ、と人々が錯覚するから」なのだ。
結局のところ、人は信じたいものを信じるし、それをいくら声高に批判してみても、相手は「自分はそんな頑固なバカじゃない!」としか考えないので、かえって嫌われるだけで損をする、ということなんですよね。
では、そこで、「人間の不完全性を嘆きながら、啓蒙活動を続けて不遇のまま死ぬ」か、そういう仕様である人間の脳の弱点を利用して、自分に快楽をもたらす成功確率を上げていくのか。
「こうすれば勝てる」とわかっていても、コンピュータ将棋のバグをあえて突くことには、相当の覚悟が必要だったはずです。
この本を読んで「そういうものなのか……」と感心している時点で、無意識に「錯覚資産」を運用している人にはかなわないのかもしれません。
せめて、彼らの「養分」にならないために、知っておいて損はない話だとは思うのだけれども。
- 作者: ダニエルカーネマン,村井章子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/12/28
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- 作者: ダニエルカーネマン,村井章子
- 出版社/メーカー: 早川書房
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- 作者: 西内啓
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