琥珀色の戯言

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【読書感想】知的再武装 60のヒント ☆☆☆☆


知的再武装 60のヒント (文春新書)

知的再武装 60のヒント (文春新書)


Kindle版もあります。

内容紹介
人生で最も役に立つのは、達人が明かす極意です。本書は60の極意から成っています。

人は人生において、二つの大きな転換期を迎えます。一つ目は45歳の人生の折り返し地点です。そこで重要なのは「知的再武装」をすることです。「知的再武装」はよりよく生き、よりよく死んでいくための、人生の必須課題です。では、「知的再武装」で、何をどう学ぶべきか。その点について、二人の勉強の達人が、秘中の策を惜しげもなく教えてくれる。時間は有限な財産であるから、そこでやってはいけないこともある。それは何なのかも明言してくれます。もちろん、稀代の読書家の二人なので、厳選した読むべき書籍も推薦してくれます。二人が提案するのは、学び直しに当たって、何を準備すればいいのか、いかにして継続させるのかです。映画・小説は当然のこととして、時代劇ですら、どうすれば勉強の対象になるかを開陳してくれます。

二つ目に重要なのは、60もしくは65歳で定年を迎えてからです。実は、ここに人生の最大の正念場が待ち構えています。それを「60の壁」と二人は呼びます。ここでの対処を間違えると、その後の人生はかなり惨憺たるもにしかなりません。会社の再雇用は受けるべきなのかどうか。二人は受けるべきではないとします。そして最大の関門は、家庭です。ビジネスパーソンが家庭に入り込むのがどうして難しいことなのかを本書は明らかにします。それを乗り越えるには三つの対話術があります。定年から95歳までの長い長い第二の人生を、心の健全さを保ちながら生きていくためにどうすればいいのか、本書はその知恵を授けてくれます。


 池上彰さんは1950年生まれ、佐藤優さんは1960年生まれ。
 2人の「インプットとアウトプットの達人」による、「人生の折り返し点を過ぎた人のための、『知的再武装』のヒント」についての対談です。
 人間、何歳になっても、新しくチャレンジできる、と言う人も少なくないのですが、「仕事」に使えるレベルにまで達することができるのは、45歳までに培ってきたものだ、ということで、お二人の見解は共通しているのです。

佐藤優私は最近、「知的再武装」のように、人生のリスタート、あるいは知的メンテナンスを考えるときに、45歳が非常に重要な折り返し地点ではないかと思うんです。そのあとは人生のセカンド・ハーフと考えたほうがいい。


池上彰私もちょうど、そういう時期だと思います。


佐藤:45歳までに手掛けたこと以外は、たぶん次なる仕事にはつかえないというのが、私の作業仮説です。45歳までに手掛けたことを伸ばしていくのはありなんだけれども、更地から始めるとだいたいうまくいかない。
 だから、45歳までに自分は何をやったのか。そのリスト作りをすることは、非常に重要なんじゃないでしょうか。


池上:45歳というと、私はちょうどNHKで、「週刊こどもニュース」のお父さん役を始めたころです。


佐藤:「こどもニュース」というのは、一種の集大成でしょう。それまでの蓄積がなければ絶対にできません。


池上:森羅万象のニュースを扱いますからね。それまでやってきたことを土台にして、改めていろいろと仕込み直したんです。まさに「再武装」でした。


佐藤:あのころの「こどもニュース」はレベルが高かったですよ。


池上:あとで聞いてすごくおかしかったのは、最初の番組を提案したディレクターが、「大変な誤算がありました」と言うんです。当初のコンセプトは、子どもたちが次々と素朴な質問をするのに対して、大人が答えられないというものだった、と。だから今でいれば、「チコちゃんに叱られる!」だったんです。ところが、池上を起用したら、全部答えちゃうんでコンセプトが狂っちゃったって、ぼやいていました。


佐藤:むしろ、その答えを芸として楽しむ番組に変わってしまったんですね。


 僕もすでに45歳を過ぎてしまっているので、この「45歳からはセカンド・ハーフ」というのは、わかるような気がする一方で、「これまで集めたアイテムで戦っていくのは心もとないなあ」と考え込んでしまうのです。
 もちろん、「もう勉強しないで惰性で生きろ」というわけじゃなくて、これから全く新しいことにチャレンジするのは難しいから、いままで勉強してきたことや経験を土台にできる場所で、それを武器に戦ったほうがいい、ということなんですけどね。
 たしかに、「知的」なものに限らず、40代、とくに半ばくらいからは「好奇心」というのが失われてきているように感じます。
 もちろん、個人差はあるのでしょうけど、70歳、60歳のお二方が振り返ってみてそうだった、と仰っていることには、それなりの意味がありそうです。二人とも、僕からみると信じられないほど勉強し続けている人ですし。
 ちなみに、佐藤さんは「45歳までは新しいことを積極的にやったほうがいい」とも仰っています。あと、「何を諦めて、何を伸ばすかを見切ることはすごく大事になってくる」とも。
 趣味レベル、あるいは、人生の楽しみとして英会話を習いに行くというのが悪いことではないけれど、ゼロからそれを仕事レベルにまで高めるのは難しい。なんのかんの言っても、試合終了の時間は近づいているわけですから、優先順位を決めることが重要なのです。

佐藤:元を取らなきゃならないという心理は、カルチャースクールや家庭教師にも通じるものがあります。
 たとえば、絶対に外国語が身につかない勉強法があって、有人の外国人に日本語を教えてやる代わりに、その外国人から当該外国語を教えてもらうという方法です。このやり方で身についた人を、私は一人も見たことがありません。


池上:一見、いいように思えるんですけどね。


佐藤:なぜダメかというと、まずお互いに教えるプロではないから、だいたいいい結果にはなりません。水泳なんかと一緒で、悪い型を早く覚えるとそれが抜けなくなるので、その矯正には時間がかかって語学の習得は結果的に遅れます。


池上:そうか、教えるプロじゃない上に、友だち関係の馴れ合いで、しかも無料だから緊張感がない、いちばん身につかないパターンなんですね。


佐藤:教えるプロにお金を払って勉強する。これは基本的に、どんな学習でも最も効率が良くて、結果的にコスパが高いのです。
 外務省でロシア語の研修指導官をやっていてよくわかったんですが、いちばん伸びないのは大学で第二外国語か第三外国語でロシア語をやった人たちでした。中途半端なロシア語の知識があるから、あ、この辺はわかるわと飛ばしちゃって、注意力が散漫になる。
 いちばんできるのはもちろん外語大学でロシア語を専門にやって、外務省にロシア語で受験して入省した人たちで、その次にできるのはゼロからはじめる人たちでした。


 結局のところ、いちばん大事なのは「時間」であり、本気で何かを身につけようとするならば、身銭を切って、プロに教えてもらうのがいちばん効率的、ということみたいです。
 あと、中途半端な「少しはわかっているつもり」というのが、もっともタチが悪い。
 今はインターネットにもさまざまな教材がありますし、自習でやれるんじゃないか、という気がするのですが、それをうまく活かせる人は少ないのです。

池上:朝きちんと着替えて、面倒くさくてもちゃんとヒゲを剃る。これはすごく大事。それから一日に一度は必ず外へ出る。あるいは居場所を作るなり、行く場所を作る。


佐藤:そう。喫茶店代とかドトール代とか、それをケチらないで、外で一杯ぐらいかコーヒーを飲む。


池上:だから、私、行きつけの本屋があるから、そこで本を買って、すぐ横のタリーズでコーヒーを買って、ちょっと本を読んで帰る。タリーズはちょっと高いから、ドトールなら安くていいですよ(笑)。


佐藤:こういうのは本当に重要です。そうじゃないと、ほんとに一週間、十日、外に出なくなるでしょ。そしたら、そのうち一ヵ月外に出なくなります。


池上:足腰はどんどん弱くなるしね。だから、着替える、ヒゲを剃る、外に出かける、これが「知的再武装」だっていうことなんです(笑)。


 このやりとり、(笑)がついてますが、1950年生まれの池上さんにとっては実感ではないかと思うのです。現役世代で仕事を持っていれば、当たり前のようにやっていることであっても、定年とともに家から出なくなってしまう人は多いのです。
 池上さんは、定年後に急に元気がなくなってしまった同級生をたくさんみてきたそうです。
 「知的再武装」というとものすごく大仰に聞こえるけれど、その基盤になるのは「日常を丁寧に過ごすこと」なのでしょう。
 実際にその立場になってみると、それがなかなか難しいのでしょうけど。
 僕も、学生時代の夏休みは家でずっとゴロゴロしていましたし。

 40歳を過ぎ、なんとなく人生に行き詰まりを感じている人、あるいは、定年後に何をしていいか考え込んでいる人には、とくにおすすめできる本だと思います。


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