琥珀色の戯言

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【読書感想】ホームレス消滅 ☆☆☆

ホームレス消滅 (幻冬舎新書)

ホームレス消滅 (幻冬舎新書)


Kindle版もあります。

ホームレス消滅 (幻冬舎新書)

ホームレス消滅 (幻冬舎新書)

現在、全国で確認されている路上生活者の数は4555人。年々、各自治体が対策を強化し、ここ10年で7割近くが減少した。救済を求める人がいる一方で、あえて現状の暮らしに留まる人も少なくない。しかし、ついに東京は2024年を目標とした「ゼロ」宣言を、大阪は2025年の万博に向け、日雇い労働者の街・西成を観光客用にリニューアルする計画を発表。忍び寄る"消滅"計画に、彼らはどう立ち向かうのか? ホームレス取材歴20年の著者が、数字だけでは見えない最貧困者たちのプライドや超マイペースな暮らしぶりを徹底レポート。


 僕自身は、ずっと地方都市で暮らしているので、ホームレスの人たちを目にするのは、たまに出張で東京に行ったときくらいです。
 だから、「ホームレスがどんどん減ってきている」と言われても、そうなのか……という感じで、それが良いことなのか、悪いことなのか考える軸も持っていないのです。
 そりゃ、「雨風が吹き込むような環境で、日々の保障もなく暮らしている人たち」は少ないほうが良いのではないか、とは思うのだけれど。

 著者の村田らむさんは、長年、ホームレスについての取材を続けている人です。
 ただ、村田さんの場合は、ホームレス=弱者、保護すべき人であり、社会問題として告発しよう、というスタンスではなく、そういう他人とは違う、一般社会から外れて生きている人たちに興味がある、ように見えます。
 だからこそ、村田さんが書くホームレスには「人間味」があるし、面白い。僕の「怖いもの見たさ」みたいな下世話な気持ちも否定はできないけれども。

 なお、本章に入る前に、僕が描き出すホームレスについては、以下のような特徴があるということを予め述べておきたい。
 僕の取材方法は直接彼らの居住地を訪問し、対面で話をするスタイルである。そのため、定住、または同じ場所で就寝するホームレス(これを「定住型ホームレス」と呼ぶ)が中心になる。たとえば、都心部の公園に小屋を構えたりテントを張ったりして生活している人たちや、道路や駅舎周辺に段ボールハウスを作って寝ている人たちだ。
 こういう定住型ホームレスは、ホームレス生活を今後も続けていくと覚悟している人が多い。とくに、しっかりした小屋を構えている場合は、強制撤去されない限りは住み続けようと考えている。
 この定住型ホームレスが取材対象者であることも関係するが、彼らはほぼ無職か、職業があれば廃品回収(主にアルミ缶回収)をしているケースが圧倒的に多い。アルミ缶回収業は手ぶらでできるわけではない。缶を載せて運ぶ台車や自転車が必要になる。しかもどこに空き缶の回収場所があるのか、そのルートを知らなければならず、寝床が決まっていない路上生活者(これを「移動型ホームレス」と呼ぶ)には、なかなか務まらない仕事なのだ。
 移動型ホームレスは、僕の取材の方法もあってか、あまり出会わない。ただし、最近では公園や高架下に小屋やテントを建てられなくなっているため、毎日街をさまよい寝られそうな場所で眠るホームレスもけっこういることは指摘しておく。さらに、車上生活者、ネットカフェやサウナ、またほぼ24時間やっているファストフード店を主に寝床としているような路上生活の瀬戸際で暮らす人もいるが、彼らも基本的には僕の取材班以外だ。
 また、それとは別に、元ホームレスだった生活保護受給者が多く住んでいる簡易宿泊施設が集まる、通称「ドヤ街」も定期的に取材している有名どころでいえば、大阪の西成や東京の山谷などだ。


 著者は、「ホームレス」といっても、いろんな人がいて、「典型的なホームレスのイメージ」にあてはまらない人も多いと繰り返し述べています。

 読んでいて驚いたのは、ホームレスの多くは「仕事」を持っている、ということでした。

 先の物乞いをしているというイメージの影響もあると思うが、ホームレスに対して、「なぜあいつらは働かないのか?」と怒る人がいる。こう指摘する人は、僕の周りだと組織で働いている会社員に多い。
 だがそもそも、ホームレスの多くは働いている。厚生労働省地方公共団体の協力を得て2016年10月に行った「ホームレスの実態に関する全国調査(以降・生活実態調査)」でも55.6%、つまりホームレスの半数以上は仕事をしている。ホームレスの平均年齢は61.5歳。厚生労働省の2017年の就労条件総合調査によれば、60歳を定年としている企業はいまだに79.3%であるから、ホームレスは年を取っても引退することなく、よく働く人たちといえるだろう。
 そして、ホームレスは、過酷で低賃金の労働をしている人が多い。
 最も一般的なのは廃品回収業だ。職を持つホームレスのうち70.8%はこの廃品回収業に従事している(参考・生活実態調査)。中でもアルミ缶を集めて生活している人が多い。都市部では、アルミの空き缶をいっぱいに入れた袋を自転車やリヤカーに積んで街を練り歩くホームレスを見かけることができる。


 著者自身も「物乞い」や「廃品回収業」を実際にやってみて、そのときの体験についても言及されているのですが、かなりの重労働だそうです。そして、アルミ缶回収に慣れているホームレスが効率的に働いても、一日で3000円稼ぐのが限界なのだとか。
 うーむ、そこまで頑張って働く意欲があるのなら、ホームレスを続けなくても良いのでは……とも思うんですけどね。
 
 ホームレスのなかには、「組織のなかで働くことができない」とか「人間関係が煩わしい」とか「いろんなものに束縛されるのがイヤ」というような理由で、自らホームレスで居続けることを選んでいる人も少なくないのです。
 「ホームレスを卒業する」ための手段は、生活保護をはじめとして、それなりに充実してはいますし、著者が取材したホームレスのなかにも、生活保護を受けるように勧められたけれど断った人もいたのです。

 ホームレスについて、「汚い」「臭い」というイメージを持っている人も多いが、より漠然と「ホームレスは怖い」と思っている人もいる。とりわけ、女性には多いかもしれない。先述した通り、そもそもホームレスはほぼ男性だ。加えて、周りに誰もいないのに怒鳴り散らしていたり、突然奇声を発したり、不衛生にしてゴミを散らかしていたりなど一般人に迷惑をかけるホームレスも一部いるので、怖いと思われているのはある種、仕方がない。
 ただ、ホームレスに話を聞く身からすると、一般人のほうが怖いと思うことがある。
「中学生らしき集団に花火を打ち込まれた」
「身体やテントに火をつけられた」
「酔っ払ったサラリーマンに蹴り飛ばされた」
「自転車を投げつけられた」
 このような未成年や酔っ払いを代表とする一般人によるホームレスへの暴力話には枚挙に暇がない。生活実態調査では、14.7%のホームレスが「ホームレス以外の人にいやがらせを受けて困っている」と回答している。


 「ホームレスは怖い」ときもあるかもしれないけれど、「相手がホームレスであるときの一般人のふるまい」も、それ以上に怖いのです。
「自転車を投げつけられた」って、『龍が如く』かよ……
 暴力だけではなく、「貧困ビジネス」の標的にされることもあります。
 ただ、福祉関係者によって施設に収容されたり、生活保護を受けられるようになっても、「他人との共同生活がつらい」とか「飲酒や喫煙を自由にできない」というような理由で、ホームレスに戻ってしまう人も多いようです。

 ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の規定により、厚生労働省によって2003年から「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)が行われるようになった。この調査は、統一した調査方法により同時期に3240の全国すべての市区町村において行われたもので、日本で初めてのホームレスに関する全国調査といえる。
 この時の数字を見ると、大阪府が7757人、東京都が6361人となっている。その後も2007年の同調査では大阪府が4911人、東京都が4690人、2012年の同調査では大阪府が2171人、東京23区が2396人、2016年の同調査では大阪府が1497人、東京23区が1319人という状態だ。大阪のホームレスの数のほうが多い年が目立つ。ちなみに総務省統計局発表の国勢調査の2016年の人口を見ると、東京都の1363万6222人は、大阪府の833万7812人の1.54倍である。この数字を考えると、大阪のホームレス数は相対的に多いといえる。
 つまり、日本は政治、経済、社会が「東京一極集中」といわれる情勢が続いているが、ことホームレスにおいては「西高東低」といってもいいのだ。
 そして、その西高を支えているのが、大阪の西成(あいりん地区)である。


 しかしながら、その西成も、2012年に橋下徹市長(当時)が改革をはじめ、子育て世帯誘致の「特区」にしようとしたことから、大きく変わってきているのです。
 最近では外国人観光客も増え、「スーパー小中一貫校」と位置付けられた新今宮小学校・今宮中学校も開校されました。

 「典型的なホームレス」が減っているのは事実ですし、それ自体は悪いことではないと思うのですが、公園から河川敷への「移住」がみられたり、貧困ビジネスの餌食になったり、ネットカフェ難民のような「ボーダーライン」にいたりする人が全体的に減ったのかはわかりません。


 著者が取材した、河川敷で13年間ひとり暮らしをしているというホームレスは、こう話しています。

 皆とは少し離れたところで暮らすのは、ひとりが好きだからという。
「ひとりでのんびり暮らしたいよね。生活保護を受けるなら死んだほうがいいよ。『タダで暮らせるよ』っていうけど、どうせ俺らなんかは相部屋みたいなところあてがわれるんだから、生活保護受けても狭いところで共同生活するのが嫌で、ここに戻ってくる人も多いから。ここでひとりで暮らすほうが全然いいよ。ここだってタダだしな。身体が悪くなったら福祉受けるのも仕方がないけど今はまだ動くからね」


 その気持ち、わからなくはないな、と僕は思ったんですよ。
 自分の意思でシェアハウスで暮らす人もいるけれど、僕も「ひとりで暮らすほうが全然いい」から。


禁断の現場に行ってきた!!

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