琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】ゲームに人生を捧げた男たち ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

石井ぜんじ(ビデオゲーム研究家/元ゲーメスト編集長)による、
ゲームクリエイターのインタビュー集です。
電子書籍『VE』(VIDEOGAME EXPLORER)のVol.01~03に掲載したインタビューに、
新たに2名のインタビューを加えて構成した、320ページの完全保存版です。

アーケードゲーム(レトロゲーム)やゲームセンターの話題はもちろん、近年は良作揃いのADVゲーム、ゲームにおけるAIの役割・進化などもテーマに盛り込んだ一冊です。

ゲームに没入したことをきっかけに、それぞれの目指したハイレベルな境地に達した8人……彼らから発せられる言葉は、さまざまな現場を突破してきた説得力に満ち溢れています。

その多彩なゲストの方々と石井ぜんじ氏による語りは、ビデオゲームの黎明期から現代の最先端技術まで広くカバーし、深く切り込みます。

そしてゲームが歩んできた道程を明らかにし、混沌としている現在のゲーム世界の構造を気持ちよくクリアにしてくれるでしょう。

人生のほとんどの時間をゲームに賭けた、
熱い男たちの生き様を堪能してください。

■第一章
アーケードゲームを支えた男たち」
岡本吉起(ゲームプロデューサー)
足立靖(ゲームプロデューサー)

■第二章
「ゲームセンターに思い入れた男たち」
濱田倫(ハムスター社長)
えび店長(ゲームセンター・えびせん店長)

■第三章
「ゲームの中で物語を紡ぐ男たち」
amphibian(ケムコシナリオライター)
宮下英尚(ゲームプランナー/シナリオライター)

■第四章
「最新のAIからゲームを見つめる男たち」
三宅陽一郎(ゲームAI開発者)
西尾明(棋士・七段)


 元『ゲーメスト』編集長、石井ぜんじさんによる「さまざまな形で、『ゲーム』に関わり続けている人たち」のインタビュー集。
 収録されている人たちの人選が渋い!というか、それなりに「ゲーマー」として生きてきたつもりの僕でさえ、元カプコンで、『ストリートファイター2』の開発メンバー・岡本吉起さんは知っているけれど……という感じではあったのです。
 でも、ここで語られている内容は「大手メーカーのしがらみ」とかが少ないというのもあるのか、かなり率直であり、過去を懐かしむだけではなく、これからのゲームについての提言も含まれていると思います。
 

 岡本吉起さんの回より。
 僕は『ストリートファイター2』の岡本さんが、スマートフォンで大ヒットしている『モンスターストライク』の制作に関わっておられるというのを、この本ではじめて知りました。岡本さんによると、家庭用ゲームを作ってきた人たちは、スマホソーシャルゲームではヒット作をつくれない、と言われてきたそうです。その理由は「こんなの(ソーシャルゲーム)はゲームじゃないから」。
 以前のソーシャルゲームのヒット作をトレースして、ユーザーの反応をみながらデータを調整していけばいい、それが成功の秘訣、だったのです。
 ところが、最近は風向きが変わってきて、「これからは(家庭用やアーケードなどの)ゲームのことがわかっている人が必要」という声が高まってきているとのことでした。

石井ぜんじ:課金して得にならないんだったら、誰もお金を払わないですからね。


岡本吉起そうそう。課金しなくても遊べるけど、課金したほうが楽になる。それを言うとまたごちゃごちゃ言うわけですよ。それがノイズになるんで、もうそれは一切聞かないでやっています。
 他には、チュートリアルを取っ払ったんです。これは本当にストレスやったんやけど、「プレイヤーがチュートリアルのどこで落ちたか見てください」って言われる。必ず「どこで落ちてましたか。そこの出来が悪い」って言うんですよ。
 それには「それは違うよ、同じカードバトルでみんなルールを知っているのに、同じチュートリアルを遊ばせるから飽きたんだよ」って言っているんです。みんながルールを知っているからそうなる。
 チュートリアルを作るのは、すごいコストが掛かるんですよ、僕らみたいな弱小チームだと困る。


石井:チュートリアルって、すごく作るのが大変ですよね。


岡本:ものすごく大変です。コストが掛かって、その結果プレイヤーをイライラさせている。それを「イライラさせているのはおまえらが悪い」って言われるんですけど、それは違う。最初からチュートリアルがいらないゲームを作ればいい。


石井:その考えはアーケードゲームっぽいですよね。


岡本:そうそう。「チュートリアルは要らねえんだよ」と。ただ、チュートリアルなしで遊ばせるのが一番難しい。他のゲーム性を全部練っていくときに、最初から「絶対にチュートリアルを入れない」って決めて作っているんです。


石井:個人的な話になりますけど、僕は以前Xbox360でレビューを担当していました。レビューをするためにゲームをプレイするわけですけど、チュートリアルの長いゲームを遊ぶのは、すごく辛いんですよね。その後、洋ゲーが進化するにつれ、チュートリアルはどんどんゲーム本編に組み込まれるようになっていきました。


岡本:チュートリアルは楽しくないですから。


石井:楽しくないチュートリアルを、何でやらせるかっていう話ですよね。それなら普通に遊んでいるうちに、少しずつ自然に覚えさせればいい。


岡本:だから『モンスト』は、何も見ずに画面を見て、ペッってはじいたらそれだけでゲームをプレイできるように作ってあるんですよ。ペッてやって、パパパッ、ボーッとかいって、勝手にプレイする。それがなんか気持ちいいね、って遊ぶんですよ。


 『モンスターストライク』は、大成功をおさめているわけですが、そこには、こんな岡本さんたちの工夫や思想があったのです。
 操作することそのものが、なんか気持ちいい、っていうのは、すごく大事なことだったのではないかと思います。
 スマートフォンで遊ぶゲームとしてはなおさら。


 株式会社ハムスターで、家庭用のハードにさまざまな昔のアーケードゲームを移植しつづけている濱田倫さんは、こんな話をされています。

濱田倫:今この仕事を続けなきゃいけない、と思う理由が僕にはあります。それがニチブツ日本物産)さんの件なんです。
 日本物産は鳥井社長が創業されて、『クレイジークライマー』などを世に送り出したメーカーです。日本物産のように30年以上前に活躍したメーカーの方は、今どんどん引退されていく時期だと思うんですよね。
 われわれアーケードアーカイブスを立ち上げるにあたって、絶対に『クレイジークライマー』と『ムーンクレスタ』は外せない。『テラクレスタ』(1985年・日本物産)も出したいという思いがありました。それで鳥井さんのところに、真っ先にご相談に行きました。鳥井さんもそろそろ引退ということで、面倒くさいからライセンスをしない、という感じだったんです。
 結果的には、ニチブツさんの権利をハムスターで買い取り、権利を継承させていただきました。今回ニチブツさんに関しては上手く継承させていただいたんですが、今後時代の中で埋もれて、権利がどこにあるのか分からなくなってしまうタイトルが出てくる危険があると思います。そうしないためには、今はラストチャンスではないか、という気がしているんですよ。30年前の経営者の方が40歳くらいだったとすると、もう70、80歳になっていらっしゃるはず。今この時期に、できるだけたくさんのタイトルを復刻して、次につないでいければいいなと。

石井:本の場合は、今は電子書籍もありますけど、基本的に昔から媒体としては変わらない。でもゲームはプラットフォームが変わるので、ソフトを手に入れてもすぐに遊べるものではないですよね。小説や映画に比べてゲームは昔の名作を気軽に遊ぶことはできないので、手をかけて残していく必要がある。


濱田:そうですね、今言われたように、僕もゲームは文化だと思っています。でも少し前までは、ゲームは悪者、という風潮があったじゃないですか。でも最近は、ゲームは文化なんだ、と言っても後ろめたくない。30年経って、ようやくそういう感じになってきたのかなとは思います。


石井:以前大学の教授に聞いた話なんですが、自分たちが「ゲームは文化だ」と言っていても、昔は相手にされなかった。しかしいつの間にか「ゲームが文化なのは当たり前」という風潮になっていて、奇妙な感じだと言われていました。何か転機となる特別な事件があったわけじゃなく、世代が変わって自然に認められた感じですね。


 僕はこれを読んで、瀧本哲史さんが大学での講義のなかで、「結局、世の中の価値観というのは、それが正しいかどうかではなくて、古い価値観の人たちが世代交代によって退場することによってしか変わらない」と仰っていたことを思い出しました。「だからこそ、すぐに報われなくても、正しいことを言い続けることが大事なのだ」とも瀧本さんは付け加えていたのですが。

 僕自身も1980年代の最初くらいからテレビゲームにずっと触れてきて、当時のことを、当事者に聞けるタイムリミットが迫っている(一部はもう手遅れになっている)のではないか、と感じています。あの頃の証言を、あるいは作品を後世に伝えていきたい、という濱田さんや石井さんの仕事には頭が下がるし、一人のゲームファンとして応援してもいるのです。

 「なぜファミコン時代は『世界に冠たる存在』であった日本のゲームが、半ばバカにしていた『洋ゲー』に追い抜かれてしまったのか?」など、興味深い考察もされていて、コアなゲームファンにとっては読みどころ満載のインタビュー集だと思います。


fujipon.hatenadiary.com

VE Vol.01(VIDEOGAME EXPLORER)

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