- 作者: 西村賢太
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2017/04/07
- メディア: 文庫
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Kindle版もあります。
- 作者: 西村賢太
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内容(「BOOK」データベースより)
世の不徳義を斬り、返す刀でみずからの恥部をえぐる。この静かで激しい無頼の流儀―。煙草とアルコールをかたわらに、時代遅れな“私小説”の道を突き進む孤独な日々は、ひとつの意思と覚悟に満ちている。したてに「落伍者」を自認する、当代きっての無頼派作家は現世の隙間になにを眺め、感じ、書いているのか。軽妙な語り口でつづられる「週刊アサヒ芸能」連載の傑作エッセイ集。
小説家・西村賢太さんが『週刊アサヒ芸能』に連載していたエッセイをまとめたものの文庫化です。
僕は西村さんの日記が単行本化されたものをずっと読んでいるのですが、この『下手に居丈高』も日常雑記がメインなので、内容が重なっているところも少なくありません。どちらかというと、けっこう詳しく書いてある日記のほうが、僕にとっては面白い。
これを読んでいると、西村さんの考え方や芥川賞を獲ることによる環境の変化、日常生活などがうかがえます。
自己の体裁もさることながら、やはり女体よりかは自分の小説が大事で、近代文学(現代文学、ではない)に対する敬意は人一倍持っているところの私は、これ以上芥川龍之介の名を冠した賞のツラ汚しにはなりたくない気持ちがあるようなのだ。
それだけに、受賞作意外の拙著をお読みになった旨を伝えてくださるかたの声がけは、実際涙がでそうになる程ありがたい。
が、中には冷やかし半分で、少々面喰らうことをおっしゃるかたもいる。
その筆頭は、「もう次回作は書いているのか」と云うものだ。
例の受賞がすでに二年前のことだから、その後は今日まで細々ながらも書いているのは、こちらとしては云うまでもない話である。が、平生余り小説、殊に純文学に興味を寄せぬかたからすると、ちょっと前の芥川賞作家は、所詮一発屋のお笑い芸人や歌手と存在自体は同じカテゴリー中のものにあるらしい。
芥川賞が一新人賞に過ぎぬことは周知の事実である。そしてこれを獲っても消える書き手が多いことも、また事実だ。しかしここ二十年の受賞者で、いわゆる「消えた」書き手は一、二名程であることは存外に知られていない。
純文学の作家にとっては、芥川賞は、大きな目標であるのと同時に、スタート地点でもあるのです。
あらためて考えてみると、芥川賞受賞後も本が売れたり、メディアに露出して、本好き以外にも認知されている人は、2〜3割といったところでしょうか。
「芥川賞作家」という看板はかなり強力なので、文芸誌で書いていたり、講演などで稼いでいる人も少なくありません。
こういう話を聞くたびに、本当に興味があるのなら、スマートフォンで事前に検索しておけば、5分もあれば「芥川賞後」のことはわかるはずなのに、と思うんですよ。
にもかかわらず、人間って以外と検索しないものみたいです。
このエッセイ集を読んでいると、西村さんが「ナチュラル・ボーン・私小説作家」として生き続けていることがよくわかります。
大抵の本には、巻末の奥付頁等に<著者略歴>と云うものが付されている。
これは殆どの場合、版元サイドが作成するのだが、私はそこに自分の最終学歴の記述が抜けていると、必ず“中卒”との二文字を書き加えることにしている。
一面、或る種の露悪趣味には違いなかろう。通常、その項は単に経歴としての出身大学を一情報として明示するものであり、それが高卒等であれば、わざわざ記すまでもないとするのが慣例になっている。
だが、私はそれでは些か面白くない。折角に中卒と云う、現今の四十代ではそうはいない最終学歴なのだから、これをひけらかさずに済ます手はないのである。
これは例の、“昔、俺はワルかった”式自慢のくだらなさに一脈通ずるようで、その実、全くもって似て非なるものだ。
(中略)
まこと小説を書くと云うことは、自身のマイナスを、ただマイナスのままで終わらせられぬ厄介な側面もあるが、そんな私にとって甚だ気に入らないのは、高校中退のくせにいっぱし中卒ヅラをする輩だ。
確かに学歴的にはそうなる場合もあるだろうが、しかしそれが為、世の大卒人種はこの点を誤解している。高校中退と高校未入学とを共に“中卒”とするのは、味噌も糞も一緒くたの流儀なのだろうが、私のようなレッキとした糞からしたら、とあれ高校に入った者はやはり味噌なのだ。
決して、同列に扱ってもらいたくないものである。
小説家には、基本的に高学歴の人が多いのです。
だからこそ、西村さんのように「自分のマイナスにみえる要素を個性として売りにできる」という考えかたもできる。
人と違うというのを武器にできる、マイナスをプラスにできる世界なんですね。
正直、中卒と高校中退にそんなに大きな違いがあるのだろうか、という気はしますが、いまの時代、「高校をやめる」人は多くても、「最初から高校に行かない」というのは、たしかに希少ではあります。
こんなことまで書くのか、と驚かされる「全身私小説作家」の日常。
まわりの人は、けっこう大変じゃないか、とは思うのですが、いち読者としては、やっぱり面白い。
- 作者: 西村賢太
- 出版社/メーカー: 新潮社
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- 作者: 西村賢太
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- 作者: 西村賢太
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