琥珀色の戯言

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【読書感想】フェイクウェブ ☆☆☆☆

フェイクウェブ (文春新書)

フェイクウェブ (文春新書)


Kindle版もあります。

フェイクウェブ (文春新書)

フェイクウェブ (文春新書)

内容(「BOOK」データベースより)
社会をより豊かにすると信じられてきたインターネット。ところが今や個人や企業を操り、その情報や資産を奪おうとする「フェイク」があふれている。ネットの闇に潜むサイバー攻撃者の手口を、セキュリティ対策企業の現役トップが徹底解説。誰もが被害者になりうる時代の必読書。


「うそはうそであると見抜ける人でないと(インターネットの掲示板を使うのは)難しい」と、当時『2ちゃんねる』の管理人だった、ひろゆき西村博之)さんが言ってから、もう20年くらい経ってしまったんですね。
 「ウソを見抜く力」が磨かれるよりもずっと早く、インターネットは普及していって、世の中が便利になるのと同時に、人を陥れてお金儲けをしたり、政治的な意見を拡散したり、という事例も増えていきました。
 その一方で、SNSなどで、「知り合いだけのグループを作って、外部からの人間や情報を遮断する」という形で、自衛する人も増えた、とも言えます。
 僕は長年ネットに入り浸っているので、ありがちな不正請求にはそう簡単に引っかからないつもりではいるのですが、世の中には、そういう手口に慣れていない人というのも、少なからずいるのです。
 ネットでのそういう詐欺は、低コストで多くの人に対してアプローチできるし、法律ギリギリのところで「違法」にはならないことも多いのです。

 東京の中心部に僅かに残る料亭街。そこには今でも数軒の歴史ある置屋が立ち並び、東京では見かける機会の少ない芸者衆の姿を目にすることができる。その花柳界のベテラン芸者のもとに一通のお知らせが届いた。
 芸歴40年以上になるさくら(仮名)がスマートフォンに買い替えたのは、そのお知らせが届く2ヶ月前。ようやく操作にも馴れ、好きな本をいつでもインターネットの通販大手のアマゾンで買えるることに便利さを覚え始めたばかりだったという。アマゾンで購入したものの代金は、携帯電話会社が通信料と一括で請求してくれることになっているから、支払いの手間が掛からないことも気に入っていたと語る。そこに不思議なショートメッセージが届いた。
<料金の未払いがありますので、至急03・XXXX・XXXXまでお電話ください。アマゾン・ジャパン・カスタマーセンター>
 未払い料金? さくらは訝しがりながらも、スマートフォンの操作で何か間違いがあったのかと思い、ショートメッセージに書かれていた都内の電話番号に電話を掛けてみることにしたと、当時の様子を振り返る――。
「はい。アマゾン・ジャパン・カスタマーセンターです」
 いくつもコールしないうちに、事務的な男の声が返ってくる。
「弊社の有料コンテンツの利用代金が未払いになっておりますので、至急お支払いいただけますでしょうか」
「あの、コンテンツとはなんのことでしょう?」
「お客様がご利用になった、音楽配信サービスや占いサービスのことです」
「あの、請求書も何も届いてないのですが、なにかの間違いじゃ……」
「お客様が請求書は送らないで欲しいというご希望でしたので、そのようにしていたのですが」
「……。未払いはいくらでしょうか?」
「延滞料を含め、29万9600円です」
「えっ……」


 読んでいて、「それ、詐欺だから、騙されちゃだめ!」と僕は内心つぶやいていました。さくらさんの運命やいかに(この本では、その後の顛末も書かれています)。
 この手の不正・架空請求メールって、腐るほど来ますし、中には「3000万円もらってください!」なんていう伝統芸的な定型メールもあるのですが、まさか、こんなのに引っかかるやつはいないだろうに、と思うんですよ。
 ところが、最近、職場で聞いた話では、30代くらいの人でも、あやうく払ってしまいそうになった人がいたのです。
 その人は、アダルトサイトからの請求に、もしかしたら、自分の子どもが興味本位で購入してしまったのでは……と心配したそうです。
 こういう手口がなくならないのは、結局、引っかかる人がいるから、ということでもあるのでしょう。


 こういう古典的なものばかりではなく、ネットで稼ぐためのノウハウ(「手口」と言うべきか)は、日々進化しつづけているのです。

「ローンチ砲は、ほんと最近までオイシかったですね」
 こう語るのは、関西地域のフェイク・ビジネスに精通する経営者の男性だ。
 ローンチ(Launch)とは、なにか新しいサービスや製品を売り出したり、立ち上げたりすることを意味し、IT業界などではよく「4月に新しいアプリをローンチする」といった使われ方がされる。
 経営者の男性が解説する。
「ここで言うローンチ砲とは、インターネット上で知名度のある人物や、インフルエンサーなどが、『新しく〇〇をローンチ! 先着300名に限定販売』などと派手に宣伝を打ち上げて、ツイッターフェイスブックなどを使い、煽って煽って売り抜ける手法のことです。ユーチューバーであれば、動画で同じことをやります。
 売ってるもの自体は、情報商材だったり、FX(外国為替証拠金取引)や仮想通過の自動取引ツールだったりしますが、どれも実態は数十万円する価格には程遠く見合わないゴミばかりですね。そのゴミを高額で売るために、第三者の評価を装ったステルスマーケティング(消費者に宣伝と気づかれないように行われる宣伝行為)用のブログやランキングサイトを大量に作ったり、実際は裏側で繋がっている他のインフルエンサーツイッターで薦めさせたりして、ターゲットに『これに乗り遅れたら損だ』と思わせる空気を作っていくんです。
 だいたい、ターゲットも最初にその話を聞いたときには怪しいと感じて、ネットでいろいろ検索するんですけど、検索しても出てくるのはこっちが作った偽ウェブサイトばかりですからね。『どこどこの情報商材は怪しいけど、これは本物らしい』みたいな、さも親切そうに注意喚起しながら、こっちの商材に誘導するようなウェブサイトも用意して、だんだん何が本当なのか分からなくさせていく。
 商材自体の用意や、そういった偽ウェブサイトの作成に、SEO(検索で上位に来るための対策)、広告費なんかを合わせると、だいたいローンチ砲を一発打つのに3000万円前後のコストが掛かると言われてます。それで一件30万円を300人に売ったとして、売り上げは9000万円。税金も払わないので6000万円がまるまる利益って感じです。
 別に商材自体はなんでもいいんです。宣言する人間のキャラに合わせて用意をするだけですから。とにかく人が集まるうちは、どんどん新しい商材をローンチしていく。だから、いつの間にかローンチ砲という名前が付いたんだと思います」


 これ、本当に大丈夫なのかな……と、ネットで検索してみる、くらいのことは、最近はみんなやっているわけです。
 ところが、相手はすでに、「評判を知るためのサイト」を先回りしてつくりあげて、検索順位を上げています。
 既存の怪しい情報商材を否定して、誠実さを装って、別のものを売りつけるというのもあるようです。
 「ネットにうまい儲け話は転がっていない」と覚悟はしておくことが必要なわけですが、「2000万円ないと老後は厳しい」なんていうニュースをみたあとだと、なんとかして効率よく稼ぐ方法はないものか……と、いう気分にもなりますよね。
 

 地方から東京にやってくる若者が喰い物にされるケースも少なくない。詐欺被害者の救済を行っている50代男性が言う。
「ここ数年の相談として多いのは、いわゆる『意識高い系』と呼ばれるような、若者の自己啓発サークルを舞台にした投資詐欺被害ですね。SNSなどを通じて20代前半の若者たちを勧誘し、仮想通過などへの投資を謳ってカネを集めるグループが増えてきています。詐欺を働いている側も同年代に近い感じですね。いわゆる半グレではなく、普通の会社勤めをしているように見える連中がやってる印象ですね。
 そういったサークルの中心メンバーらは、渋谷あたりのカフェを拠点に、地方から出てきたばかりの若者なんかを集めて、『一緒に成功しよう』などと取り込んでいくんです。おしゃれなカフェで、ちょっと派手な話なんかをしながら、自分たちのグループだけが行える特別な投資があるなどといってカネを出させる。貯金がなければ消費者金融から50万円ぐらい借りさせる。もちろん投資顧問業でもないですし、場合によっては出資法違反に当たる可能性もありますが、カネを出す方もそんな知識ないからツッコミようがない。もちろん出したカネは返ってこないので、そんな相談がこちらにくるわけです。やはり、SNSがこういった詐欺被害の入口になるケースは多いと思います」


 インターネットで、直接の知り合い以外を警戒する人が増え、ツイッターでも、「フォロー外から失礼します」が「マナー」だと考える人が増えてきたのは、致し方ないことなのかもしれませんね。
 法律というのは、その知識がない人にとっては、なかなか味方にはなってくれないし。

 自分はそんなのに引っかかるわけない、と自信をもっている人ほど、一度くらいは、この「最前線」を確認しておいたほうが良いと思います。
 騙される人ほど、「自分は大丈夫」だと思い込んでいるものだから。


闇ウェブ (文春新書)

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