琥珀色の戯言

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【読書感想】女子校礼讃 ☆☆☆

女子校礼讃 (中公新書ラクレ 705)

女子校礼讃 (中公新書ラクレ 705)


Kindle版もあります。

女子校礼讃 (中公新書ラクレ)

女子校礼讃 (中公新書ラクレ)

内容(「BOOK」データベースより)
辛酸なめ子が女子校の謎とその魅力にせまる!あの名門校の秘密の風習や、女子校で生き抜くための処世術、気になる恋愛事情まで、知られざる真実をつまびらかにする。在校生へのインタビューや文化祭等校内イベントへの潜入記も充実した、女子校研究の集大成。読めば女子校育ちは「あるある」と頷き、受験生はモチベーションがアップすること間違いなし。令和よ、これが女子校だ!


 超名門女子校・JG(女子学院)出身の辛酸なめ子さんによる、女子校に関するコラム・取材をまとめたものです。

 僕は高校時代、男子校に通っていたので、「共学への憧れ」と同時に、共学で「あまりにもモテない自分」に直面しなくて済んだことに胸をなでおろしているところもあるのです。
 女子校に対しては「自分が通っていた男子校とは対極の存在」というイメージとともに、「偏った世界を生きてきたもの同士の身勝手な共感」も持っているのです。

 この本、女子学院、聖心女子学院、雙葉など、名だたる女子高への取材や在校生・卒業生へのインタビューなどで構成されているのです。
 学校関係の著書が多い、おおたとしまささんのような「良い教育とはどういうものか、に切り込む」というような内容ではなく、「女子校というものに、なんとなく憧れを抱いている人たちに、ふんわりとした『女子校って、こういうところ』という表層的なイメージやエピソードを提供する、という感じです。

 辛酸なめ子さんは、2011年に『女子校育ち』という本を上梓されていて、この『女子校礼賛』の冒頭で、こう書いておられます。


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『女子高育ち』(ちくまプリマ―新書)という本を出してからもう10年近く経っているという時の流れの早さに驚きを禁じ得ません。当時と比べると、「女子校っぽさ」の受け止められ方の変化を感じています。本書を編集してくださった兼桝さん(女子校出身)も指摘していましたが、若い世代になるにつれ、「女子校出身者」としての自虐は不要になり、世間からもポジティブに受け止められているようです。
 10年以上前は、女子校出身者は、気が利かないとか、かわいいものを素直にかわいいと言えない、キツい、怖いなどと言われがちでした。もちろん今でも言われることがありますが、そこまで敬遠されたり怖がられなくなっているような……。
 そこにはいくつかの理由があるように思います。まず、多様性が認められる世の中になってきたことと、ジェンダー表現に対する世間の目が厳しくなり、性的な役割や変な固定観念を押し付けられることが減った、ということなどが考えられます。一昔前はサラダを取り分けるのは女性が暗黙のうちに行っていましたが、昨今は性別問わず取り分けたい人がやっているように思います。こうやって細かい部分から少しずつ解放されていって生きやすくなっている感があります。


 この10年間で、「女子校」というか、「女性であること」への意識が、かなり変わってきているんですね。
 そもそも、「男子校」「女子校」もだいぶ減ってきましたし。僕の出身高校も、だいぶ前に共学になりました。


 著者が出演した女子校について語るネット番組の制作会社の女性、Tさん(某カトリック系のお嬢様校出身)がらは、こんな話を聞いたそうです。

 さて、Tさんが受けた修道女直伝の授業とはどういうものだったんでしょう。修道女の先生だから浮世離れした内容では……と想像していたのですが、実際は全然違ったようです。

「今でも強烈に覚えている授業があります。先生が、どういう男性を選ぶべきか黒板に書いてくれたことがありました。1、家柄 2、収入 3、人柄 と力強くチョークで書いていた姿が印象的でした」
 
 当然のように容姿とかは入っていないですね。優しさとか内面的なものが上にきてもいいように思いますが、いきなり家柄とはシビアです。

「どういうご家庭で育ったのかを知ればその人が見えてくるそうです。基本は家柄、とおっしゃっていました。高3の女子にとっては衝撃的な内容で、教室がざわつきました。私もフィーリングとか優しさが重要だと思ってたので、こんなにはっきり言っちゃうんだ、ってびっくりしました」


 Tさんが卒業されたのは1993年頃だそうなので、今でもこんな授業が行われているかどうかはわからないのですが、「1、家柄」ってすごいなあ。そもそも、家柄ってどう判断すればいいのか、僕にはよくわかりません。投資判断のようにAAAとか格付けされているのだろうか……ただ、昨今の皇室における結婚関連の報道と、それに対するネット掲示板などでの世間の反応をみていると、世の中の「自分はきちんとしていると思っている人たちの本音」って、「1、家柄」なのかもしれないなあ、とも思うんですよね。
 眞子さまと小室さんの場合、ここまで来たら、結果はどうあれ、結婚しないと本人たちも自分の人生に納得できないだろうから、もはや周りがとやかく言うことではあるまい、というのが僕の個人的な意見なのですが。


 「女子校出身者のトリセツ」というコラムより。

 多感な思春期に男性と接することがほとんどないまま、女子だけで過ごしたことの影響は意外と大きいです。私自身も男性と目を合わせて自然に話せるようになるまでは結構な時間がかかりました。知人で、自分の口の中に入るものを見られたくないからスーパーで男性店員のレジに絶対並ばない、という重度の女子校育ちの人もいます。そこまでいかないにしても、以前、共学出身の友人が「付き合ってないけれど飲んだ後に男性100人くらいと手をつないだことがある」と話したことに、女子校出身者一同で「えぇ~っ!!」と驚愕したことがあります。
 男性に対してはかたくなな態度を取りがちですが、同性に対しては一度警戒心が解けると表を見せて付き合います。「女子校はドロドロしてそう」と言われがちで、たしかに校風が閉鎖的だったりするといじめが発生することもありますが、共学の女子同士よりも平和な人間関係を築いていると思われます。共学では男子をめぐって女子同士はライバルで、モテがヒエラルキーの上位になるための重要な要素ですが、男子がいない女子校では皆仲が良く、美人じゃなくても生命力が強い人や個性的な人、何かに秀でている人が人望を集めます。もちろんモテ系で恋愛が盛んな女子校もありますが、そういう学校は派閥ごとにテリトリーの男子校を決めているので、男子をめぐってもめることはほとんどありません。


 多感な時期に「恋愛」という要素が介在しにくいというのは、けっこうメリットもあるみたいです。それは男子校でも言われていることなのですが。
 女子校もそれぞれ校風が違っていて、名門お嬢様学校から、有名進学校、けっこうみんな遊んでいるところまで、多種多様ではあるんですよね。

 女子校を受験しようかどうか迷っている学生やその親が読んで参考にする、というよりは、「女子高萌え」のオッサン(僕ですか……)、あるいは、女子高を卒業して、それなりに「良い思い出」になっている人向け、だと思います。


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女子校育ち (ちくまプリマー新書)

女子校育ち (ちくまプリマー新書)

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