琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

『琥珀色の戯言』 の「2020年に読んだ本ベスト10」


新型コロナウイルスに振り回された2020年も残り少なくなりました。
恒例の「今年、このブログで紹介した本のベスト10」です。


いちおう「ベスト10」ということで順位はつけていますが、どれも「本当に多くの人に読んでみていただきたい本」です。


まず、10位から6位まで。


<第10位>誰もボクを見ていない: なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか

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 結局のところ、自分を本当に助けてくれる人を見つけ出すのにも、知識や経験が必要なんですよね。
 人を助けるのも、助けられるのも難しい。
 
 この17歳の少年がかわいそう、というよりも、「この母親のような人を、どうすれば良いのだろうか?そもそも、他者が何かを強制できるようなことなのだろうか?」などと考えてしまう本でした。自分は、あまりにも無力だ。



<第9位>ハイパーハードボイルドグルメリポート

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 一度読み始めたら、ページをめくる手が止まらなくなり、一気に最後まで読み終えてしまいました。
 タイトルは『グルメリポート』で、取材した人たちが何を食べているのか、が一応のテーマなのですが、この本を読んでいると、著者であり、『ハイパーハードボイルドグルメリポート』の企画・演出・撮影・編集を担っている上出遼平さんの取材時の緊張感が伝わってくるのです。



<第8位>深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと

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 お昼に開いているスナックに行く話とか、銭湯に広告を出してみたときのこととか、本当に営業しているの?と言いたくなるのだけれど、自分で入ってみようとは思えない店のレポートとか、「日常生活で、見えてはいるけれど、深く追究しないようにしていること」が、たくさん紹介されているのです。
 それも、「チェーン店なんてつまらない、こういう歴史のある店を大事にすべきだ!」という肩に力が入った感じではなく、「やっぱり気になるし、ネタになるから入ってみました」という自然体で書かれています。



<第7位>ゲンロン戦記-「知の観客」をつくる

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 この『ゲンロン戦記』、批評家の東浩紀さんの著作(語り下ろし)なのですが、難しいことをずっと言い続けてきた、立派な「批評家」が、『ゲンロン』という会社の経営をやることになり、さまざまな困難に直面しながら、現実に適応し、人間として成熟していく経過が赤裸々に語られているのです。
 東さんは、「世俗的」とか「凡庸なもの」だと仰っていますが、東さんのような「世俗を超越した文化人」が、会社経営というドロドロした現場に投げ出され、その中で裏切られたり絶望したりしながら、『ゲンロン』という会社を続けていくという行為は、僕にとっては、すごく「批評的」「哲学的」なものに思えたのです。



<第6位>麻布という不治の病: めんどくさい超進学校

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 麻布出身者には、個性的な人が多いのは事実だと思います。
 その一方で、麻布や東大のような「すごい人が行くところ」を出てしまうと、生き方の幅がかえって狭くなることもあるのです。
 僕だって、東大医学部卒で田舎の町医者をやっている人がいれば、「何か事情があったのだろうか」と勘繰ってしまいます。
 東大卒だって、研究者より町医者のほうが向いている人だっているはずなのに。
 この本のなかの宮台真司さんのインタビューにあったように、麻布の学生や卒業生たちもまた「麻布らしく生きること」のプレッシャーにさらされているのです。




続いて、1位〜5位です。


<第5位>希林さんといっしょに。

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 やたらと不動産の値踏みをする、とか、出演作を決めるときは、「ギャラが高い順、そして、オファーが来た順」と仰っていた、という話も紹介されていて、半ば照れ隠しのような気もするのですが、とにかく「人を食ったような、あるいは、一筋縄ではいかない人」だなあ、というのが、僕の希林さんに対する印象です。
 この本では、「存在感」という言葉で語られがちな、樹木希林、という役者について、是枝監督が、見事にそのすごさを言語化しています。



<第4位>「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考

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 この本では、20世紀に生まれた6つの作品を自分の目で見ながら、「アートとはどういうものなのか?」について考えていく形式になっています。
 いずれもかなり有名な作品ではあるのですが、その一方で、「これが『アート』なのか?」と疑問を抱く人も多いのではないかと思われます。
 ところが、この時系列に並んでいる6つの作品をじっくりと見て、思ったことを口に出し、少し手を動かしていくだけで、自分にとっての「アート」の範囲がどんどん広がっていくのを感じるのです。



<第3位>熱源

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 正義と悪がぶつかるのではなく、それぞれの「正しさ」が衝突せざるをえないのが、世界の難しさなのです。

 本当に、素晴らしい小説だと思います。圧巻!
 ここまでハードルを上げてしまうのは申し訳ない気もするのですが、それに応えてくれるであろう、数少ない傑作です。読めてよかった。



<第2位>反省記 ビル・ゲイツとともに成功をつかんだ僕が、ビジネスの“地獄"で学んだこと

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アスキー」の創業者であり、『I/O』『月刊アスキー』など数々のマイコン雑誌を創刊し、マイクロソフトビル・ゲイツとの親交も深かった西和彦さん。
 NECのPC8001の開発やMSXの規格決定にも大きく関わっており、まさに「日本の家庭用コンピュータの基礎をつくりあげた人」だったのです。

『I/O』『月刊アスキー』、黎明期のマイコンMSX……
 マイコン少年だった僕が夢中になったものは、みんな西さんがつくっていたのだよなあ。

 西さんは「マイクロソフトからもアスキーからも追い出され、全てを失った……。」と書いておられるけれど、西さんは、たくさんの人に「未来への希望とコンピュータというワクワクできる道具」を与えてくれたのです。
 僕もそれを受け取ったひとりなので、この本、すごく面白かったし、読めてよかった。



<第1位>紳士と淑女のコロシアム 「競技ダンス」へようこそ

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 著者の二宮敬人さんは、学生時代に「競技ダンス部」に所属していたそうです。
 大学の運動部の多くは、初心者がいきなり入部してはじめても、経験者にまともに太刀打ちできないのですが、経験者が少ない「競技ダンス」であれば、大学からでも大会で活躍できる!と勧誘され、「その気」になって。
 僕も同じような経緯で、大学の弓道部に入ったので、この本に書かれている、著者の分身の大学での部活生活に自分を重ね合わせながら読みました。
僕はこの本を読んで、自分の大学時代の部活の記憶が、「成仏」したような気がしたんですよ、なんとなく。
 たぶん、著者自身も、これを書くことによって、過去の自分を救ったのではなかろうか。

 学生時代、部活をやっていて、人間関係に悩んだり、結果が出ないことに落胆したりしていた人へ。
 あのときは自分なりに一生懸命やっていたはずなんだけど、ずっと、もう少しうまくやれたのではないか、と、後悔し続けている人へ。

 1年に何冊か、「これは自分のために書かれた本じゃないか」と思う作品に出会うことがあるんですよ。
 これは、間違いなく、そのうちの一冊です。



というわけで、『琥珀色の戯言』の2020年の本のベスト10でした。


昨年のランキングはこちら。
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 2020年は、「新型コロナの年」だったと言わざるをえないのですが、こういう非常事態のときこそ、書物や先人の経験談で、「こういうこと(感染症によって世界が大混乱に陥り、感染予防で人と人が距離をとるようになること)は、スペイン風邪の流行などの際に、人類の歴史上何度も起こってきたことなのだ」というのを知っているかどうかの違いは大きいのではないかと感じたのです。そういう歴史があったことを前提にすれば「この危機も、これまでと同じように、いつかは去っていき、人々は日常に戻っていくはずだ」と確信することができるのです。まあ、本当に「今度もだいじょうぶ」かどうかなんて、誰にもわからないんですけどね。

 「家にいる時間」が長かったため、例年よりもちょっと前の本や映画を観直す機会が多い年でもあり、「昔観ていたものを観直す」というのもなかなか面白いものだな、と感じましたし、新しいものを追い求めなくても、すでに、世の中にはすごいものがたくさんある、ということをあらためて思い知らされたのです。


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 昨年の後半から、「ブログ働き方改革」として、日曜日の更新をやめているのですが、2021年は、平日も週に1日更新しない日をつくり、更新頻度を少し減らして、のんびり、かつ、ひとつひとつの感想を大事にしていきたいと思っています。


 それでは皆様、よいお年を!


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