琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

「正しいこと」の牢獄


「私の言うこと、何か間違ってる?」

 そう、君の言うことは、常に正しい。
 僕は休日だからといって惰眠を貪っているし、そのわりには肝心な仕事も遅々として進んでいない。
 おまけに僕はギャンブル好きで、いつも結果的には負けるとわかっている賭け事に身を委ねるし、部屋の掃除だって苦手だ。

 そう、君の僕に対する意見は、常に正しい。
 さすがに長年の付き合いだけあって、よく当たっているよ。

 最近、僕は君がいないと気がラクになるんだ。
 嬉々としてパソコンの電源を入れてネットをやったり、君が嫌いなカレーライスを大盛りで食べたりするんだ。

 そう、確かに君の言うことは正しい。
 僕はもっと勉強すべきだし、君を構ってあげるべきだ。
 偉そうにネットで匿名で能書きなんて垂れてる場合じゃないよね。

 
 でも、今日、僕は気がついたんだ。
 僕が間違っていたことに。
 確かに、君の言うことは正しい。それも完膚なきまでに。
 でもね、僕は君に聞きたいことがあるんだ。

 君は、「正しさ」の怖さを知っているかい?って。

 そりゃ、理不尽な感情論やイヤミだって勘弁してほしいさ。
 でも、それに対して僕は、「どうせ八つ当たりなんだから」と心をガードすることができる。
 でも、「正しいこと」は違うんだ。
 それは、どこまでもどこまでも追いかけてきて、僕の心に容赦なく突き刺さる。
 そして僕は、その「正しさ」で埋め尽くされた牢獄で、窒息しそうになる。
 「正しさ」に追い詰められることは、本当に辛いんだよ。
 だって、逃げ場がないんだから。
 
 僕は、どうしようもない人間だけど、これだけはわかる。
 「完璧に正しいこと」ほど、他人を傷つけるものはない。
 でも、君は僕に「正しいこと」を振りかざし続けている。

 僕は少しだけオトナになったから、正しいことがすべてを解決しないことを知っている。

 君はいつか、僕に凄く残酷なことをしていたことに、気がつくのかな? 

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