琥珀色の戯言

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キャプテン・フィリップス ☆☆☆



あらすじ: 2009年4月、ソマリア海域を航海中のコンテナ船、マークス・アラバマ号を海賊が襲撃。武器を所持していた4人の海賊に、武装していなかったアラバマ号はあっという間に占拠されてしまう。船長のリチャード・フィリップス(トム・ハンクス)は、20人の乗組員を自由にしてもらう代わりに自らが海賊の人質となり……。

参考リンク:映画『キャプテン・フィリップス』オフィシャルサイト


2013年36本目。
火曜日のレイトショーで鑑ました。
1000円均一の日だったこともあり、観客は10人くらい。


トム・ハンクス主演の『キャプテン・フィリップス』を鑑賞。
ソマリアで海賊に誘拐された船長の救出劇です。
緊迫感があり、「誘拐する側の事情」と「誘拐される側の恐怖」もしっかり描かれている良作……だったのですが……


ユナイテッド93』のポール・グリーングラス監督だということで、ちょっと心配ではあったんですよね。
舞台は海の上だし。
結果的に僕の不安は的中してしまいました。
この『キャプテン・フィリップス』も「手持ちカメラでの撮影による終始画面が細かく揺れている映画」だったのです。


内容は素晴らしかったんですよ。
フィリップス船長の、リーダーとしての厳しさと責任感。
人間としての誇り高さと、垣間見せる弱さ。


そして、「海賊」側も、「絶対悪」として描かれているわけではないのです。
生活が苦しく、ならず者たちに金を巻き上げられ、自分が生きていく最後の手段として、海賊行為を選ばざるをえない若者たち。
小さな漁船で、巨大な貨物船に向かっていくところなんて、「無謀」にしか見えません。
ところが、彼らが銃を持っているというだけで、貨物船はあっさり「制圧」されてしまう。
武器を持たない貨物船は、一度乗り込まれてしまうと、こんなに無力なのか……と思い知らされました。


最初は、フィリップス船長や貨物船の乗組員たちに、感情移入していたんですよ。
海賊、なんてことしやがる、くたばれ!って。
しかしながら、アメリカ海軍が情報をキャッチし、特殊部隊SEALが投入されると、なんだか見えかたが違ってきました。
小さな救命艇に、誘拐したフィリップスとともに乗って、ソマリアを目指す4人の海賊たち。
その海賊たちに、アメリカ海軍は、彼らの名前と部族名をあっさりと割り出し、名指しで「交渉しよう」と通告します。
無人機による情報収集、救命艇を取り囲む、巨大な駆逐艦、訓練が行き届いたSEALの隊員たち。


追い詰められているのは、どっちなのか?


アメリカ側にとっては、「勝つか負けるか」「生きるか死ぬか」という状況の「戦争」ではありません。
人質の命を助けられるかどうか、だけの問題です。
極端な話、フィリップスが死んでしまえば、あとはもうミサイル一発で海賊たちを海の藻くずにできる。
海賊側は、「フィリップスがいるおかげで、生きていられる」状況なのです。
彼らにはもう、投降するか、死ぬかしかない。
小さな救命艇一隻が、アメリカ海軍の大舞台に取り囲まれているのをみて、僕は海賊が哀れになりました。
だからといって、海賊行為は(「こちら側」からみれば)許すわけにはいかないし、「そもそもアメリカが悪いんだ!」と、苦しんでいるフィリップス船長を「アメリカの象徴」として責めるのも筋違いです。


考えてみれば、この映画で「命のやりとり」をしているのは、武装もしないで危険な海域での航海を強いられる「そんなに給料ももらっていないような船員たち」と、「生活が苦しく、さらにならず者たちに強要されて海賊行為をやっている若者たち」なんですよね。
彼らは、ともに「搾取されている人間」なのです。
結局、危険な目に遭い、傷つくのは、いつも前線に送られる人たちだけ。
この作戦でアメリカが使った費用があれば、あの海賊になった漁師たちは、一生海賊なんてやらなくても済んだかもしれません。
アメリカが本気で掃討しようとすれば、海賊やそのボスたちを壊滅させることも可能なのではないか?
まあ、実際は「いきなりソマリアに攻め込むわけにはいかないし、そもそも、ソマリアには軍事費をつぎ込む理由がない」のでしょうけど。


それにしても、いたたまれない映画だと思いますよ、これは。
アメリカも「格差社会」だと言われていますが、そのアメリカとアフリカの貧しい国にも、また大きな「格差」がある。
「なぜ漁師がこんなことを? 海賊なんかやらなくても他にやりようがあるだろう」と問いかけるフィリップスに、海賊のひとりは、こう答えるのです。
「ここがアメリカだったらな」


ほんと、良い映画なんですけどねえ、これ。
僕のような乗り物酔いしやすい体質には、かなりキツかった。
酔いにくい人は、それがリアルなのだ、と思えるのでしょうけど、僕としては、「船酔いするために映画観にきたわけじゃないのに……」という感じでした。


船酔いに縁が無い人にはお勧めなのですが、乗り物酔い体質の人は、ご注意ください。
やめておくか、酔い止め薬を内服して観たほうが良いかもしれません。
揺れは、『ユナイテッド93』よりも軽かったような気はするのですが、あれで気分が悪くなった人は、つらいと思います。
「手ブレ補正バージョン」をつくってくれたらよかったのに……

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