琥珀色の戯言

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【読書感想】新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング ☆☆☆☆



Kindle版もあります。

内容紹介
※(Kindle版に関して)この商品は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
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「書けないカギは書く前にあり」。毎月3,000本以上の記事を配信し続けるカルチャーニュースサイト「ナタリー」で実践されている文章の書き方を、一般向けに解説する初めての書籍です。通称「唐木ゼミ」と呼ばれる社内勉強会で新人育成を担当する著者が、「悩まず書くためにプラモデルを準備する」「事実・ロジック・言葉づかいの順に積み上げる」など独特の概念を通じて、文章を構造的に書くための方法をわかりやすく教えます。文章の具体的な改善ポイントも解説。企画書、報告書、レポート、ブログ、SNSなどあらゆる文章に有効です。

 
 あの「ナタリー」の記事を書いている人たちは、こんなふうに「文章修業」をしているのですね。
 この文章講座、文章を書くモチベーションを高める、というレベルではなく、書きたいけれど、なかなか書き始められない、あるいは、書かなければならない状況にあるし、とりあえず文章らしきものは書けるのだけれど、なんだか冴えないんだよなあ、という人にうってつけだと思います。
 作家として新人賞を目指す、とか、オリジナリティを追求する、というものでもなく、「とにかく、伝えるための、研ぎすまされた文章を、なるべく効率的に書く」ためのレッスンなのです。
 『ナタリー』は、このトレーニングで、「ほとんど文章を書いた経験がない人」たちを、一日に10〜15本の記事を書けるライターとして育ててきました。


 冒頭で、著者はこう問いかけてきます。

「良い文章って何だろう?」。


 これは本当に、いくらでも答えはあるし、どれが正解と言えるようなものではない。
 著者は、この本のなかで、あえて、ひとつの「答え」を定義しています。

「完読される文章が良い文章である」。


 「ナタリー」としては、というか、人に読んでもらうための文章としては、これはまさに「最低限」でもあり、また、「かなり高いハードル」でもあります。
 僕は自分が書くものが冗長になりがちだということを理解しているつもりなのですが、なかなか改善できません。
 短いと、なんだか不安になってしまうこともある。
 なんか手抜きしたって思われるんじゃないかな、とか。
 

 でも、「長い。三行で」とかコメントに書かれていると、それはそれでガッカリもするのです。
 三行で結論だけ書いてあっても、それはさすがに味気なくない?

 僕自身も、自分が読む側の場合、ちょっと長くなるとすぐに読み飛ばしてしまうんですけどね。
 
 

 この「完読してもらうための技術」は、すごく勉強になります。

 ゼミで「完読を目指しましょう」と言うと、気のきいた言葉を選んでみたり、目新しい比喩を繰り出したりと、レトリックの工夫で背伸びをしようとする人があとを絶ちません。残念ですが、その努力は当面、見当違いと言わざるを得ません。
 ではどこを努力すべきか。それを理解するためにはまず、文章の多層性について知っておく必要があるでしょう。森の地面が落ち葉、腐葉土、黒土と層になっているように、文章も概念のレイヤーが積み重なってできている、ということです。


 いまあなたが目で追っているこの文字列、目で見えている言葉そのものが、いちばん表層のレイヤー。ここでは「言葉づかい」と呼ぶことにしましょう。
 言葉づかいの下には、どんな文章でも表層の論理が仕込まれています。言いたいこと伝えたいこと、こうだからゆえにこうなのだ、という「ロジック」(論理)のレイヤーです。
 さらにその下には、この世界の事柄ひとつひとつ、ここでは「事実」と呼ぶレイヤーが横たわっています。出来事や日にち、人の名前、ものの名前、行為、場所などなど。この層から取ってきた事実を組み合わせて、ロジックは形作られています。


 「事実」「ロジック」「言葉づかい」の3つのレイヤーは、取り返しのつかない順序で積み重なっています。どれだけ美文を連ねても、事実に誤認があったら実用文としては0点です。またロジックがおかしな文章は、言葉づかいでは挽回できません。
 特にナタリーのようなニュースメディアではその傾向が顕著です。流暢な言葉づかいで読ませたとしても、発売日が間違っていたとしたら、0点。一方で多少言葉づかいが素朴だったとしても、書かれている事実に誤りがなく筋が通っているなら、50点か60点か、いくばくかの点はあげられるのです。


 著者は、『ナタリー』の方針について、ネットの世界では、「速報性」が重視されるから、とにかく速く情報を伝えようとしてきた、と仰っています。
 しかしながら、最近は「いちばん乗り」になりたいばかりに、裏取りを軽視し、情報の信憑性の確認をせずにネットに流しているメディアが増加してきたため、信頼性を重んじるほうに舵を切っているのだとか。
 Twitterを使っている人たちも、かなりリテラシーが上がってきましたから、このサイトの情報だと、ソースとして怖いな、という判断をするようになってきました。
 そこで、最速ではなくても、「ナタリーに出ている情報ならまちがいない」と思ってもらえる方向へ。


 文章って、どうしても難しい言葉を使ったり、変わった比喩を用いたりしたほうが、「上手くみえる」のではないかと、書く側は思い込んでしまうのですが、読む側からすると、よほど読むことに意義を見出せるような文章でないかぎり、「読みにくいと、『戻る』をクリックしてしまう」のですよね。
 この「事実」「ロジック」「言葉づかい」の順序は、僕もちゃんと意識していかねば。


 主語と述語がちゃんとあるか、とか、「ひとつの文がやたらと長くなって、わかりにくくなっていないか」とか、かなり初歩的なことまで書かれています。
 それぞれ「例文」が提示されているので、わかりやすいのと同時に、「ああ、こういう悪文、僕もよく書いているな」と、読んでいて恥ずかしくなってきます。
 「文章の素人に指導する」ための講座なので、実践的であり、初心者にもわかりやすい。

 

固有名詞は必ず確認。手打ち禁止でコピペせよ

× ”特撮リスペクトバンド”・科学特捜隊

○ ”特撮リスペクトバンド”・科楽特奏隊


(中略)


 私の編集部では「手打ち禁止」に加え、すべての固有名詞を検索窓に放り込んで複数ソースで確認することを義務づけています。「検索結果なんてアテにならん」「リリースも誤字だらけじゃないか」という意見もありますが、それでもやらないよりは千倍くらいマシです。
 固有名詞の誤植は、単にウソを流布してしまうという以上に、関係者やファンの心を傷付けてしまう危険をはらんでいます。その重大性を自覚してください。


 「名前」って、間違われる側にとっては、けっこうイヤなものなのです。
 こういう「ひと手間」の有る無しで、信頼度は大きく変わってくるはず。


 接続詞は極力削るようにとか、「!」とか「カッコ」とかを多用するなとか、曖昧な表現ではなく、言いきる勇気を、とか、僕にとっては「ごめんなさい」と言わざるをえない指摘も多々ありました。
 

 もしあなたがブログを書いているのであれば、あるいは、文章で何かを説明しなければならない立場であれば、読んでおいて損はしないと思います。
 これだけで圧倒的に差がつく、というものではないけれど、このくらいのことができれば、次のステップに進める、そんな指標を教えてくれる「教科書」です。


ナタリーってこうなってたのか (YOUR BOOKS 02)

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