琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

【映画感想】何者 ☆☆☆☆

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あらすじ
就職活動の情報交換のため集まった大学生の拓人(佐藤健)、光太郎(菅田将暉)、瑞月(有村架純)、理香(二階堂ふみ)、隆良(岡田将生)。海外ボランティアの経験や業界の人脈などさまざまな手段を用いて、就活に臨んでいた。自分が何者かを模索する彼らはそれぞれの思いや悩みをSNSで発信するが、いつしか互いに嫌悪感や苛立ちを覚えるようになる。そしてついに内定を決めた人物が出てくると、抑えられていた嫉妬や本音が噴きだし……。

nanimono-movie.com
※公式サイトは音が出ます!


2016年18作目の映画館での観賞。
レイトショーのひとつ前の回で、通常料金。観客は30人でした。
題材からして、若者が多いのではないかと思っていたのですが、20代くらいの女性とそのお母さん、というような組み合わせがけっこういて、佐藤健さん人気の賜物なのかな。


この映画、Yahoo映画では、あまり評価が高くないし、上映時間も100分にも満たず、「地雷か?」と危惧していたのです。
まあでも、原作小説がけっこう好きだったのと、なんとなく気になってしょうがなかったので観てみました。


率直な感想としては、僕にはとても「刺さる」映画でした。
このあいだの『怒り』のように、「感じ悪い描写爆弾」が、画面の向こうからどんどん投げ込まれてきて、観客をどんよりとした気分にさせてくれるのですが、こうしてブログとかを書いたり、Twitterをやっている人間にとっては、就活はしてなくても他人事じゃないな、と思わずにはいられません。
逆に、就活中だったらあまりにもリアルすぎて観てられないのかもしれませんが。


ただ、この『何者』の単行本が上梓されたのが2012年11月で、それから4年経っているので、SNS利用者のネットリテラシーは上がっていて、ここまで「意識高い系」の人は、あまり見なくなったような気がするんですよね。
そして、この作品は、「意識高い系を嘲笑している」ようにみえて、終盤、その世界がぐるりと変わってしまうのです。
今は、ピアニストこそが撃たれ、評論家が評論される時代なんですよね。
ネットには、どこまでが観客席だか、わからないところがある。


「客観的に他人を評価している(と自分では思い込んでいる)人」の痛々しさが、ここにはある。
いや、僕自身も「意識高い系」に好感を抱きがたいというか、「上から目線で夢物語ばっかり語りやがって」みたいな気持ちになることが、少なからずあります。
口だけじゃなくて、実際にやってみせろよ、とか。
その一方で、ネットでの有名人(たとえば、堀江貴文さんとかイケダハヤトさん)の「これからの世の中、どんな大企業でもいつまでもつかわからないんだから、「就職する」ということに対して、もっと柔軟に考えて良いのではないか」と主張にも、頷けるところはあるんですよね。
でも、この映画のなかで、有村架純さんの「就職の理由」をみて、「大企業志向」っていうのも、やっぱりわかるよなあ、って。
大学を卒業する22歳とか23歳くらいのときって、今の世の中なら、親は50代くらいで、健康問題とか、経済的な不安とかが、押し寄せてくる時期なんですよね。
学生のときは、周囲もそういう荒波みたいなものから、なるべく隔離しておこうとしてくれるけれど、社会人になると、そうも言っていられない。
社会保険が充実している会社、さまざまな手当をくれる、給料が良い会社、なるべく潰れそうにない、大きな会社、それは、「自分の夢以外の何か」を背負わなければならない多くの大人にとっては、ものすごく魅力的なのだと思います。
それに、最近あらためて思うのだけれど、「会社の名前にこだわるのはバカバカしい」って言うけれど、結局のところ、人間が「幸せ」を噛みしめるためには、そういうバカバカしいレッテルみたいなものが、すごく大事な気がするんですよ。
そして、僕自身もまた、「意識高い系」として、どこかで嘲笑われている。
ブログとかを書くことそのものが、ある種の「意識の高さ」とか「構ってほしい」ってことでもある。
こういう「感想」とかを書いて晒すことは、「自分が『読める』人間である」ことをアピールすることになる。
いや、こんなふうに「自分はわかってますよ」って、予防線を張ってしまうことも、やっぱり「痛い」。


この『何者』に対する、Yahoo映画の感想を読んでいると、なんか結末がはっきりしないとか、後味が悪い、っていうのがけっこうあったんですよ。
その気持ちは、よくわかる。
でも、僕はこの『何者』に関しては、ああいう「自分がいま立っている場所、周りからどう見えているかということを痛みとともに認識する」ということそのものが、ひとつの「ゴール」であり、「スタート」だと痛感したのです。


これ、ラストはどんでん返しというか、ホラーだよね……
いち観客の僕でさえ、うわーこれは居心地が悪いな、観ているのがキツいな、出ていきたくなりました。
顔から火が出る、っていうのは、ああいう状況なんだろうなあ。
いつかそうなるリスクが高いことはわかっているのに、いつでもやめられる、と思っているはずなのに、どうして、やめられないのだろう。
ところで、やっぱり僕も、どこまでがフィクションで、どこからが現実なのか、ちょっとわかりませんでした。
もちろん、あえてわかりにくくしているのだとは思うのだけれど。


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何者(新潮文庫)

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