- 作者: 中村うさぎ,マツコ・デラックス
- 出版社/メーカー: 毎日新聞出版
- 発売日: 2016/11/23
- メディア: 単行本
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内容(「BOOK」データベースより)
家庭、職場、学校で…悩める子羊たちに授けるとっておきのサバイバル術。痛快回答!本音と毒舌。至言まみれの人生相談!!
中村うさぎさんとマツコ・デラックスさんの人生相談。
週刊誌『サンデー毎日』に連載されていたものだそうです。
読んでいると、有吉弘行さんの代わりに中村うさぎさんが入り、青山愛さんがいない、読む『怒り新党』の「国民の声」みたいな感じです。
中村うさぎさんのほうが、有吉さんよりもマツコさんとは長い付き合いで、お互いのことをよく知っているだけに、親密さが伝わってきて、遠慮のないところはあるのですが、その分、「一般の観客への意識が低い」ようにも思われます。
それが悪い、というわけじゃなくて、よりディープな質問に対して、歯に衣着せずに答えているのですけどね。
この人生相談のなかでは、けっこう、ふたりの「メディア論」が述べられているのです。
そういえば、中村うさぎさんもマツコさんも、元編集者なんですよね。
中村うさぎさんが、あの「イボンヌ木村」だったというのを知って、『コンプティーク』を愛読していた僕はけっこう驚いた記憶があります。
(申し添えておきますが、まだマイコンゲーム紹介がメインで、最初の『ロードス島戦記』とかが載っていた時代ですよ。「袋とじ」とかもあったけど)
マツコさんも元ゲイ雑誌の編集者だったのです。
「週刊誌などでよく『○○さんと親しい人物によると』とか書いてありますが、有名人と『親しい人』って、あんなに簡単に記者に事情を話してしまうものなんですか?」
マツコ・デラックス:そんなもん、ほとんど飛ばし記事に決まってんじゃない。
マツコ:適当に「関係者は語る」とか書いて事実らしく出した憶測記事のことをそういうのよ。
うさぎ:ああ、裏づけも取らないようなやつね。でもさ、そんなんでも多少は証言している人はいるんじゃないの?
マツコ:これがホントにいないのよ。ホントにウソばっかり。最近飛ばしが多いわよねえ。あれやっちゃおしまいよ、もう。
うさぎ:じゃあ、「知人」とか「関係者」って記事に書かれないのはみんな架空の人物ってことか。
マツコ:もしくは、ただの事情通気取りね。ホントは真実なんて知らない通ぶってるヤツから聞いたことを鵜呑みにして、記者にベラベラしゃべっちゃんてんのよ。
うさぎ:でも私、前に『週刊女性』に私生活を書かれた時、全部事実だったんでびっくりしたわよ。「近くの弁当屋で、2日に1回はハンバーグ弁当を買っている」とか。あれ絶対、弁当屋のババアの情報よ(笑)。私がハンバーグ弁当を食ってるかチキン弁当食ってるかなんてどうでもいいじゃない。「あれだけブランドもので着飾ってるけどハンバーグ」って書かれ方したけど、べつにそうですよ。着飾ってるけど水道止められてますよって私、自分から言ってんじゃん。ハンバーグ弁当も食うわ。そもそも好きだし。だから別に反論もしなかったけど、よくこんなこと取材したなって感心したわね。
マツコ:ちゃんと取材してるものもあるのよ。ごくたまに、「この情報、誰がここまでしゃべったんだろう」っていうのもあるわ。完全に内部関係者がリークしてるのがわかるやつね。ま、たいがい発信元って、絶対こいつだろってヤツだけどね。腹心だと思ってたヤツがリークしたりするのよ。
マツコさんは、自身が書かれた記事について、こんな話もされています。
マツコ:あたしもいろいろ書かれたけど、ほぼ飛ばしね。とくに某女性週刊誌には何度もウソ書かれたわ。一回、素顔でマンションに入っていくところを写真に撮って、「バカ騒ぎした誕生日パーティーの朝帰り」って書いてあったの。あのねえ、アタシ誕生日パーティー開かれたことなんて、一度もないのよ(笑)。ただアタシの誕生日が近いってっだけで、勝手に書いてるのよ。そんなもんよ。
そうか、書かれる側にとっては、「そんなもん」なのか……
とはいえ、中村うさぎさんのハンバーグ弁当の話のように、「ちゃんと取材している(らしい)ものもある」ということなので、「全部ウソ」とも言えないみたいです。
そうなると、信じるも信じないも読む人しだい、になってしまいますよね。
中村うさぎさんのハンバーグ弁当の話は「これをわざわざ取材して記事にしているのか……」と、感じてしまうのですけど。
うさぎ:お菓子といえば、あの時はごめんね、ボロクソ言って。
マツコ:ホントよ! バタークリームケーキが好きだっていうから、お見舞いにわざわざ丸の内まで行ってエシレのを買って行ったら、「無塩バターで作ったやつはダメだ」って(笑)。
うさぎ:それをブログに書いたら、ネットですっごい怒られたらしいんだよね(笑)。「あんなに忙しいマツコがせっかく自分で買いに行ってお見舞いに来てくれたのに、あの態度は何だ」って。
マツコ:アタシは逆に安心したわ。「ああこの女、元気だ」って(笑)。
うさぎ:大炎上してたらしいわ。たかだかバタークリームに文句つけたくらいで、ここまで人からバッシングされなきゃいけないのかってくらい(笑)。
これを読んでいると、マツコさんとうさぎさんは、お互いにものすごく寛容というか、「どうしようもないところも笑って受け入れながら、つながっている」のだということが伝わってきます。
ネットで観客は怒っていても、当事者たちは、まったく揺らいでいない。
「あとがき」で、マツコさんは、こう書いています。
あらためて「信じる者はダマされる」ってタイトルだけど、これ、中村うさぎそのものじゃないかって思うんです。一見、高圧的ですべてを跪かせてきたような女に見えるけど、あんなにも人を信じやすく、ダマされてきた女もいないでしょ。アタシは石橋を叩いても渡らないタイプなので、出会った頃は衝撃でしたから。
でも、それから長い付き合いを経て、今の中村うさぎを見ると、案外ダマされるのも悪くないんじゃないかって思えてくるので不思議です。もちろん万人にお勧めする生き方ではないですけどね。ただ、信じてダマされてそれでも幸せな人もいれば、ダマすことですごく不幸な人もいるんです。ホント「幸せ」って何なんでしょうね。
考えてみると「幸せになるための方程式」ってありそうでないよなあ、って。
幸せの定義も人それぞれだし、自分で「こうなれば幸せ」と思っていた状況になっても「何か違う」っていうこともある。
それでも、こうして語り合っているときの二人は、けっこう「幸せ」そうにみえるんですよね。
- 作者: 中村うさぎ,マツコ・デラックス
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2012/07/23
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