琥珀色の戯言

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【映画感想】美女と野獣 ☆☆☆☆☆

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あらすじ
進歩的な考え方が原因で、閉鎖的な村人たちとなじめないことに悩む美女ベル(エマ・ワトソン)。ある日、彼女は野獣(ダン・スティーヴンス)と遭遇する。彼は魔女の呪いによって変身させられた王子で、魔女が置いていったバラの花びらが散ってしまう前に誰かを愛し、愛されなければ元の姿に戻ることができない身であった。その恐ろしい外見にたじろぎながらも、野獣に心惹(ひ)かれていくベル。一方の野獣は……。

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 2017年の映画館での10作目。
 僕の地元ではめったにない、満席でした。
 さすがゴールデンウイーク!


 吹き替え版も日本の有名ミュージカル役者さんたちが終結しているということで、どちらを観るか迷ったのですが、結局、2D字幕版にしました。
 とりあえず、歌はまず英語の原曲を聴きたかったので。

 
 正直、実際に観るまでは、今回の実写映画化には、あまり期待していなかったんですよね。
 1991年に公開されたアニメ映画版は、興行的にも作品の出来映えも「歴史に残る名作」であり、『美女と野獣』『アラジン』『ライオンキング』は、ビデオ(当時はまだビデオテープの時代だったのです)とCDが飛ぶ様に売れていたのを思い出します。
 僕も持ってたなあ、ビデオテープもCDも。
 それで、車の中でもしばらく『美女と野獣』のCDをずっと流していたので、それぞれの曲にも思い入れがすごくあるんですよね。

 ただ、あんなシンプルなストーリーなのに、130分の上映時間は間延びしそうだし、そもそも、アニメの名作をわざわざ実写映画化するなんて、誰が得をするんだろう、あのアニメ以上のものは作れないだろう、という、かなりネガティブな先入観も持っていました。


 いやこれはもう、アラン・メンケンさんの勝ち!
 オープニングでジョン・ウィリアムズのテーマ曲が流れただけで、「これは『スター・ウォーズ』だ、とりあえず新作まで生き延びたんだな……」と、すべてを赦し、気分が高揚するのと同じように、『美女と野獣 (Beauty and the Beast)』『ひとりぼっちの晩餐会 (Be Our Guest)』などの名曲が流れるたびに(基本的に音楽はアニメ版を踏襲しているのです)、26年前のことをあれこれ思い出さずにはいられませんでした。
 そうか、あの頃、大学生だったんだよな、とか、同時の友人たちや自分の生活など。本当に『美女と野獣』のCD、よく聴いていたものなあ。
 劇団四季の『美女と野獣』も観ていて、『Be Our Guest』での食器役のキャストたちの一糸乱れぬ動きと歌に圧倒されたのも思い出しました。
 しかし、この実写版の『Be Our Guest』もすごい。圧倒的な映像です。こんなの目の前で繰り広げられていたら、ベルは、メシ食ってるどころじゃないだろ!とは思いましたけど。


 物語としては、本当に「ありきたりなおとぎ話」だと思うんですよ。
 でも、だからこそ、「物語の基本」みたいなものを感じるし、26年経ってもあまり風化しないのかもしれません。
 まあ、26年前も、けっして「現代風のドラマ」ではなかったわけですし。


 ただ、「マイノリティというか、周囲から変わり者だと言われている人が、自分の居場所を見つける物語」というのは、ずっとディズニーにとってのテーマでありつづけていて、その居場所が、『美女と野獣』では「愛」とか「パートナー」で、『アナと雪の女王』では「自立」であることは時代の変化なのかもしれません。
 だからこそ、この『美女と野獣』という「愛によって救われるドラマ」は、アナクロであるのと同時に、「恋愛がすべてを解決してくれた(ように感じていた)時代」は、それはそれで、幸せだったのかもしれないな、という郷愁を感じるものでもあるのです。


 あと、実写でみると「本ばかり読んでいて、いつも空想ばかりしている人」が「変わり者」として疎外されている光景に「似たような人間」である僕は、けっこう心を痛めました。


 基本的なストーリーも音楽も1991年のアニメ版を踏襲しているだけに、26年前の自分の感想や価値観と向き合わざるをえないのです。
 だから、26年前にアニメ版を観ていない人が、今回、この実写版をはじめての『美女と野獣』として観たときに、どんな感想を持つか、けっこう興味があるんですよ。
 僕にとっては、アラン・メンケンの曲は、やっぱり素晴らしいなあ、5点満点!という「懐古成分」が大きい作品だったのも事実なので。


 それにしても、あのキャラクターたちを実写でここまで描けるようになったとは!すごすぎないか今のCG。


 1991年のアニメ版に思い入れがある人は、「金のために実写化したのかよ」なんて斜に構えてスルーする前に、騙されたと思って、映画館で観てほしい。
 「ここまで来たのか……」って感じますよきっと。
 実写映画の表現力も、自分自身の人生も。
 この実写映画化によって、「古典としての名作」になりかけていた『美女と野獣』というコンテンツは、また新しい生命を得たのです。
 これを観た人は、また四半世紀後くらいに、アニメ、あるいは実写での新しい『美女と野獣』を観て、「2017年版は……」って、言うことになりそうな気がします。
 これはきっと、そういう運命の物語なのでしょう。
 ディズニーの歴史と底力を見せつけられましたよ本当に。


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