琥珀色の戯言

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【映画感想】忍びの国 ☆☆☆

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あらすじ
戦国時代、忍びの国として名高い伊賀。超人的な戦闘能力を誇り、虎狼の族と呼ばれる伊賀忍者の中でも特に腕の立つという無門(大野智)は、怠惰な日々を過ごしては妻・お国に稼ぎのなさを叱責されていた。ある日、織田信長次男・信雄が父ですら手出しするのを恐れていた伊賀への侵攻を、独断で開始する。無門に弟を殺されて伊賀への復讐(ふくしゅう)を果たそうとする下山平兵衛、伊賀の重鎮・百地三太夫や下山甲斐をはじめとする忍者たちの思惑や野望も入り乱れる戦いに、いつしか無門ものみ込まれていくが……。


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 2017年の映画館での18作目。ついに夏休みに突入した週末の夕方の回で、観客は20人くらいでした。


 立川談春さんの独演会に行った際に、談春さんがこの映画に百地三太夫役で出演したことを話していて、それ以来、気になっていたんですよね。
 ちなみに、談春さんの百地三太夫は、風格と何を考えているのかわからない底知れない感じがあって、なかなか良かったと思います。
 
 僕は和田竜さんの小説、大好きなのですが、この『忍びの国』の映画って、和田竜さんが脚本も書いておられるのです。
 というか、和田さん、元々は脚本家志望で、シナリオの賞に応募されてもいるのです。
 ただ、この『忍びの国』って、史実を背景にしているだけに、織田信雄って、本当にこんな人だったの?とか、北畠具教や日置大膳がこんな立派な武将だったのなら、そんなにあっさり織田家に屈しなかったのでは?とか、つい考えてしまうところはあるのです。
 大膳、いくらなんでも態度デカすぎだろ、とか。
 前半は主人公の無門、あんまり目立たないし、石原さとみさんの「お国」は、なんでこういう状況になっているのか、よくわからないし。
 伊賀の精神系の「術」というのも、どんなものなのかわかりにくい。
 
 でも、この映画の「ちょっと懐かしい伝奇アクションの世界」は、僕にとっては好ましいものでした。
 時代考証にこだわりすぎるよりも、映像としての迫力や面白さを重視してつくられているのもよくわかるし。
 途中、大量の黒装束の忍者がワラワラと集まってくるシーンでは、『マトリックス』のエージェント・スミスかよ!って、見ながら笑ってしまいました。
 忍者ものなんですけど、忍術はそんなに使わないというか、けっこうみんな数を頼んで正攻法で戦っています。
 忍ぶどころか、暴れるぜ!
 ニンニンジャーかよ!


 弱小勢力が知勇を尽くして強大な敵に立ち向かっていく、というのは、やっぱり、観ていて燃えます。
 「虎狼の族」と言われる、「報酬がないと戦わない」伊賀の連中も、現代人にとっては、かえって理解しやすいような気がするし。
(しかしながら、この映画の終盤で、チラッと挿入される、現代の映像を使ったシーンは、台無し、興ざめ感が半端なかったです。ああいうのは匂わすくらいで、観客が考えればいいことなのに。観ていて、あーあ、これぞ「蛇足……」って思いましたよ。
 せっかく、エンターテインメントとしてがんばって積み上げてきたものが、あのシーンだけで「説教臭く」なってしまった。残念……


 嵐の大野さんのふてぶてしさとコミカルさと繊細さを併せ持った「無門」と、出てくるたびに「変態仮面!」と声をかけたくなる鈴木亮平さんの演技なども見どころで、みんな、いい仕事をしています。
 ちょっと世界観が混乱しているところはあったのだけれど、全体としては、多くの人が楽しめる伝奇アクション映画です。
 まあ、歴史上の人物が出てくると、僕としては「百地三太夫さん、風評被害受けてるよなあ」なんて言いたくなるんですけどね。


忍びの国(新潮文庫)

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忍びの国(1) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

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映画「忍びの国」オリジナル・サウンドトラック

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