琥珀色の戯言

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【読書感想】大炎上 ☆☆☆

大炎上 (扶桑社新書)

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Kindle版もあります。

大炎上 (扶桑社BOOKS新書)

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内容紹介
前著『炎上上等』で、数々の炎上発言を披露し物議を醸した著者が、今回は笑顔のウラに隠された自身の炎上人生を語る!
幼少期の壮絶なイジメと父の死、当時は異端だった美容外科の道へ進み、先駆者として業界を切り拓くも、文春砲を食らい、脱税捜査、部下の裏切り、借金100億、医業停止、母と妻の死、サイバラとの出会い……。
何度人生の災難に燃やされそうになっても、その度に不屈の魂の炎を燃やし、不死鳥の如く甦ってきた。そこには著者一流の、逆境を生き抜くメンタルコントロール術、柔軟な発想法、仕事や人生に向き合う姿勢と心構えがあった。
波乱万丈、抱腹絶倒、そして生きる勇気と知恵と爽やかな感動が得られる半自伝的人生論!


 あの高須克弥先生の新書『炎上上等』の続編が早くも登場。
 『炎上上等』を読んだのは今年の3月だったので、本当に「早いなあ」という印象です。


 ちなみに、『炎上上等』の感想はこちら。
fujipon.hatenadiary.com
 

 これぞまさに「炎上商法」だなあ、なんて思いつつ読んだのですが、考えてみれば、高須先生にとっては、この本の印税など金額としては微々たるものでしょうから、「言いたいことがとにかくたくさんある」のだろうな、と。


 冒頭にこんな話が出てきて、僕はしばらくフリーズしてしまいました。

 私たちの親世代、そして私たち高齢者は、敗戦後の文字通り何もない焼け野原の中から今の日本を作ってきました。戦争のせい、日本のせい、お金がない、物がない、親がいない、まともな教育を受けていない、家業の手伝いで勉強どことではない……、できない理由なんて、今とは比べ物にならないくらいたくさんあった時代です。それでも、みんなとにかく働きました。生きるために。
 確かに朝鮮戦争などの特需もありましたが、必死で働いてきたことに変わりはありません。当時は週休2日制ではなく、休みは週1回でしたが、それすらも返上して、休まずに仕事に励んだ人たちがたくさんいた時代でした。私も、胸を張って言えることではありませんが、家庭も顧みず働き続けました。
 その結果、振り返ってみたら、「右肩上がりに経済が成長した時代」になっていたというだけのことです。最初から右肩上がりの成長が約束されていたわけではない。オイルショックや日米貿易摩擦など、お先真っ暗な時だって幾度もあったのです。
 今の若者は、まるでイソップ童話の「すっぱいブドウ」の話のキツネみたいです。キツネがおいしいブドウを見つけて食べたいんだけど、高い場所にあってどうしても手が届かない。しまいには、
「あのブドウはきっとすっぱくてマズいに違いない」
 と立ち去ってしまう。 
 枝を叩いたり、木を揺らしたりとか、いろいろチャレンジすればいいのに、「アレを手に入れてもいいことはない。採ってすっぱい思いをしなくてよかった!」と言い訳をして、やる前から諦めてしまう。


 これぞ「生存者バイアス」ではあるんですよね。
 戦後の厳しい時代に日本を発展させてきた先輩方には、敬意を払うべきだと僕も思います。
 しかしながら、「われわれは今の若者たちよりもずっと頑張ったから日本は高度成長を成し遂げた」というわけではないのです。
 戦後の日本は、ベビーブームで人口のなかの勤ける人の割合が増えるという「人口ボーナス」を享受し、第二次世界大戦戦勝国よりも人件費が安く、戦後の早い時期に朝鮮戦争という「特需」もあった、という経済成長のための条件に恵まれていたのです。
 要するに、がんばれば成果が出やすい時代でした。
 たぶん、人の頑張りなんて、昔も今もそんなに変わりはないんですよ。戦後すぐの日本人には、「これから新しい日本をつくっていこう」というモチベーションはあったのかもしれませんが、今の若者たちだって、同じように頑張っているはず。でも、今は「頑張っても成果に結びつきにくい時代」なんですよね。
 例として、隣国である中国のことを考えていただきたいのですが、共産党支配化で経済が停滞していた中国と、ここ数十年、世界工場として経済的な発展を遂げてきた中国では、「今の中国人は、昔よりもずっとがんばっている」と言えるでしょうか。「チャンスがある社会になったから、頑張っている人が報われているし、そういう人が目立っている」ように僕には見えます。
 もちろん、それぞれが頑張るにこしたことはないのですが、「努力が必ず報われる」わけではないし、報われやすさと言うのは、時代背景やその国に経済状況に左右されます。
 世の中には「そんなものは関係ないような、圧倒的努力」をやる人もいるのかもしれませんが、そういう人は、昔も今もいるのです。
 この本を読んでいると、高須先生はその「圧倒的な努力をしてきた人」だというのもわかるんですけどね。


 そういう「わかりあえないところ」がありつつも、高須先生の生きざまというのは、やっぱり面白いし、魅力的なのも事実です。
 美容形成の世界で、自分自身に施術をして安全性や効果を確かめていった話とか、一度みた手術はそのまま再現できる、という特技とか、脱税で摘発され、1年間の医業停止を食らっても、そのあいだに新しい治療を勉強して、さらに業績を伸ばしていくところとか、「ひとりの開業医の成功譚」としての読みどころ満載です。
 日本で「トルコ風呂」が「ソープランド」に名称変更されたきっかけに、高須先生が深くかかわっている、という話など、「本当なの?」と驚いてしまいました。

 僕が東京に診察に来るときの定宿であるホテルニューオータニに入っている銀座の名店、久兵衛でも、僕が行くと黙っていても寿司茶漬けを出してくれる。
 寿司茶漬けって、寿司にお茶かければいいってもんじゃないんですよ。上等の握り寿司にお茶をぶっかけて、寿司に火が通りかかったところをいただく。それを分かっていないと、漫画家で僕のパートナーの西原理恵子みたいに、海鮮丼にお湯かけて食べたりしちゃうんです。酢飯がぎゅうぎゅうに詰まった海鮮丼に熱湯かけて食べたって、生臭くなるだけですよ。にぎり寿司だからこそ、ほどよく美味しくなるんです。


 あのものすごく値段が高い(という噂の)『久兵衛』の寿司をお茶漬けにする、という話を聞いて僕は悶絶してしまったのですが、「寿司茶漬け」について、ここまで蘊蓄を語れる人は、たぶん日本で(たぶん世界でも)高須先生だけではないでしょうか。
 味オンチ、食べものにこだわりがない、わけじゃないんですよね。
 こだわるポイントが多くの人と違う、というだけで。
 高須先生は「自分にとって大事なこと」には妥協しない人なんだよなあ。

「何をやってもうまくいく気がしない」
「将来が不安で仕方ない」
「職場で嫌われているんではなかろうか」
 このようなネガティブな考えに囚われやすい人は、結局は”暇”なのではないでしょうか。
 そのようなことをクヨクヨ思い悩めば何かが解決するのでしょうか。「うまくいく気がしない」なら、うまくいくようにやればいいではありませんか。「将来が不安」なら、もっと働いて備えればいいではありませんか。「嫌われるのが怖い」なら、自分を見つめ直して、嫌われないように性格を変えればいいではないですか。悩むまでもありません。簡単です。
 要は、思い悩む人は、やるべきことを何もしてないのです。だから僕は”暇”だと言うのです。
 悩む暇があるなら、ぜひ、その時間でボランティア活動をしてみてください。東北や熊本では、まだまだ人手を必要としています。
 実際に被災地を訪れると、自分の些細な悩み事などバカらしくなるはずです。自分や自分の家族が生きているだけで、ありがたいことなのだと実感するでしょう。「どうしたら傷ついた人達を救うことができるだろう?」、そんな思いで頭の中はいっぱいになります。一生懸命体を動かしますから、夜はくだらないことを悩む間もなく眠れます。


 正直、高須先生のように生きられる人は、そんなに多くはないと思うんですよ。
 でも、こういう考え方の人がいる、というのは知っておいて損はないし、高須先生が長年連れ添った亡き奥様のことを語っておられるところには、読んでいて僕もしんみりしました。
 参考になるところはすればいいし、違うと思うところは読み飛ばせばいい。
 いつも自分に近い考えの人の言葉ばかりに触れているだけでなく、この「異能の人」の「暴言」を読んでみるのも悪くない。
 悩むより行動するほうが答えに近い、というのは、僕もけっこう長い間生きてきて、同意できますし。


炎上上等 (扶桑社BOOKS新書)

炎上上等 (扶桑社BOOKS新書)

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