琥珀色の戯言

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【読書感想】劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
ビジネス書大賞2018準大賞受賞作『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の著者による、日本社会の閉塞感を打ち破るための画期的な論考!


 僕もこの本の著者の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』を読みました。


fujipon.hatenadiary.com


 このベストセラーと同じ著者なのですが「劣化」とか「オッサン社会」とか、なんだかやたらと煽情的なタイトルだなあ、と思っていたんですよね。
 でも、読んでみると「なるほど」と思うところが多々ありました。
 ちなみに、著者は、この本での「オッサン」を以下のように定義しています。

1:古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する
2:過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない
3:階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る。
4:よそ者や異質なものに不寛容で、排他的


 中高年の男性でも、上記に当てはまらない人はたくさんいる、と著者は述べていますが、まあ、そういう予防線を張っておかなければ、ということなのでしょうね。例外は、たくさんいるわけですし。

 著者は、現在(2018年)の「オッサン」が劣化している理由として、こう述べています。

 そもそも、なぜここまで「オッサン」は劣化してしまったのでしょうか。
 こういう世代論は実証的な検証が難しく、最後には不毛な「そう思う」「そう思わない」という水掛け論になることが多いので個人的にはあまりそそられないのですが、筆者が一点だけ、以前からどこかでちゃんと考えなければいけないと感じているのが、現在の50代、60代の「オッサン」たちは、「大きなモノガタリ」の喪失以前に社会適応してしまった「最後の世代」だという点です。
 次の図1を見てください。これは横軸に戦後から現在までの「年代」を、縦軸に20代から60代までの「世代」をとり、各世代の人々が、各年代において、どのような社会的立場で過ごしてきたかをまとめたものです。
 もちろん、個別企業・個人の状況は千差万別なので、あくまでも全体的な傾向ということで大きなストーリーをつかみ取ってもらえればと思います。
 同図を見てまずわかるのは、図中においてグレーで強調されている世代、つまり戦後の復興と高度経済成長を支えたリーダーたちは、まさに「大きなモノガタリ」つまり「いい学校を卒業して大企業に就職すれば、一生豊かで幸福に暮らせる」という昭和後期の幻想の形成とともにキャリアの階段を上り、「大きなモノガタリ」の終焉とともに、社会の表舞台から退いていった、ということです。
 現在でも多くの関連書籍が出版され続ける田中角栄盛田昭夫本田宗一郎といった昭和期のリーダーのほとんどすべてが、このセルに含まれているという点は、重大ななにかを示唆していると思います。
 一方で、現在の「劣化したオッサン」についてはどうでしょうか。
 現在60代の人は1970年代に、現在50代の人は1980年代に社会人となり、それぞれの20代・30代をバブルの上昇景気がとどまるところを知らないと思われた80年代、つまり「大きなモノガタリ」が、長い坂の上にまだ存在していると思われていた「最後の時間」に過ごしています。
 昭和の高度成長期を支えた一流のリーダーたちが、20代・30代を戦後の復興と高度経済成長のなかで過ごしたのに対して、現在の「劣化したオッサン」たちは、同じ年代をバブル景気の社会システム幻想、つまり「会社や社会が示すシステムに乗っかってさえいれば、豊かで幸福な人生が送れる」という幻想のなかで過ごしてきたのです。これは人格形成に決定的な影響を与えたと思います。


 偉人たちが時代をつくったのか、時代が偉人たちを生んだのか、というのは、考えさせられるところではありますね。
 いまのオッサンたちがダメになった、というよりは、国の人口が増え、どんどん経済が成長していく時代では、すぐれた人物がより大きな成功を手にしやすく、経済が停滞している時代ではその逆である、と考えたほうが良いのかもしれません。
 著者は、現代の「オッサン」について、「偏差値の高い大学、良い会社に入りさえすれば、一生安泰」という物語を若いころに信じ込まされ、努力してきたにもかかわらず、梯子を外されてしまった人々だと解釈しているのです。
 僕はこれより少し下の世代なのだけれども、その「気分」は感じてきたし、「オッサン」たちが、こういう価値観で子どもを教育しようとして、「現実がわかっていない」と反発される事例も少なからずみてきました。
 人は自分にとっての正解が、ずっと正解であり続けると思い込んでしまうものなのです。

 著者は、2018年時点での50代・60代のオッサンは、70年代に絶滅した「教養世代」と、90年代以降に勃興した「実学世代」のはざまに発生した「知的真空の時代」に若手時代を過ごしてしまった、とも指摘しています。
 たしかに、僕が中高生だった頃は「大学は遊ぶところ」というようなイメージがあったんですよ。いまの就職活動やアルバイトに追われている若者には信じられないかもしれませんが。


 また、組織というのは、いち構造的・宿命的に経時劣化していく、という話も出てきます。
 一度、二流の人間が権力を握ると、自分の地位を脅かす一流の人間を追い落とし、イエスマンの三流をを長用することによって自らの地位を固めていく傾向があり、「凡人は凡人を育てることしかできない」と。
 その劣化があまりにも酷くなると、「革命」が起こってリセットされ、また一流がトップに立ち……という繰り返し。
 まあ、革命家が常に一流とは限らないと、僕は思うのですけど。
 「革命を行うこと」に関してだけは一流、というケースもありますし。

 本書の前半において、現在の50代・60代のオジサンたちは、「大きなモノガタリ」の存在を前提にして20代・30代のときに社会適応したにもかかわらず、そのあと社会から裏切られてしまった世代だ、という指摘をしました。
 ここでは、同じ問題を別の角度から考察してみましょう。
 それは、よく言われる「日本企業は人に優しく、外資系企業は厳しい」というのは、本当なのかという問題です。
 このような指摘がなされる要因は非常にシンプルです。すなわちそれは「外資系企業は容赦なく人を解雇するけれども、日本企業は解雇しない」ということでしょう。


(中略)


 しかし、これが本当に「優しい」のでしょうか。40代の後半で、「あなたはこの会社ではこれ以上の昇進は望めませんよ」と言われても、その時点で取れるキャリアオプションはほとんどありません。
 先述したとおり、その人の労働市場における価値は、人的資本と社会資本の厚みによって決まるわけですが、多くの人は会社の内部にこれらの資本を蓄積するため、資本が人質となってロックインされてしまうからです。
 逆に会社側は、従業員に対して様々な選択肢を持つ、つまり煮て食おうが焼いて食おうが、どうしてもいいと言うことになり、経済学的にいえば、雇用者と被雇用者のあいだで極端なオプションバリューの非対称性が生まれてしまうことになります。
 一方でよく「厳しい、厳しい」と言われる外資系企業について考えてみると、そのとおり、確かに短期的には厳しい側面もあるかも知れませんが、中長期的に考えてみると違う風景も見えてくる。というのも、キャリアの若い段階で仕事の向き・不向きがはっきりするわけですから、結果的には自分のオプションバリューが増えるわけです。
 これはシリコンバレーの経済システムと同じで、要するに全体・長期の反脆弱性の高さは、早めにたくさん失敗するという部分・短期の脆弱性によっている、ということです。

 
 これもまた、わかるんですよね。
 自分に向いていなくても、なんとなくその仕事を続けていたほうが「得」になってしまうシステムというのが、本当に正解なのかどうか。
 ただ、いまの日本では、途中でレールから外れてしまった人たちを受け入れるシステムが整っていないので、「人材の流動性を高める」ことを理由にどんどん人をクビにすればいい、というのは難しいと思います。
 結局、いまの日本では、外資系のやり方は「厳しい」と言わざるをえない。
 そして、そう簡単に社会全体が変わるのも難しい。


 平均寿命が長くなり、「経験豊富な高齢者」が有り余っており、若者のほうが効率的に賢くなってしまう現代は、オッサンにとっては「価値を認めてもらえない時代」だとも言えそうです。
 そして、この傾向は、今後もどんどん進んでいくものだと思われます。
 いま、「何もわかっていないオッサン」をバカにしている若者たちは、もっと若い年齢から「老害」と言われる可能性が高くなるんですね。
 高齢者が敬われる理由が「伝統」とか「感謝」しかないというのは、せつない。
 生まれた人は、どんどん年を重ねていくしかないのだから。


 著者は、今後のオッサンたちの処世術について、こう述べています。

 学生時代に学び、就活ゴール以降、学びは終了というモデル、つまり「学ぶ」と「働く」がシーケンシャルに連結される人生モデルがこれまで一般的だった日本ですが、今後は「学ぶ」と「働く」がパラレルに働く人生モデルが主流になっていくでしょう。
 そしてまた、「学ぶ」ということは、本質的な意味での「若さ」を保つ秘訣でもあります。なににでも好奇心を示し、新しいことをどん欲に学び続けようとする人は、一生「老いる」ということがありません。


 そう簡単にリタイアできない時代というのは、幸福なのか不幸なのか……
 なかなかリタイアしてくれないオッサンというのも、それはそれで、困ったものではありますし。


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