琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

某有名アーティストの「今でも後悔している昔の彼女の話」


ちょっと前にラジオで聴いた、某有名アーティストの「今でも後悔している昔の彼女の話」を思い出したので。
僕の記憶の範囲で再現し、まとめているので、たぶんディテールはけっこう違うはずです。なので、誰の話かも書きません。

 若いころ、僕は地元でライブとかやってて、自分で言うのもなんですけど、まあ、けっこう人気あったんですよね。小さなライブハウスだったけど、立見のお客さんがいたりして。
 当時付き合ってた女の子、彼女はそんなに派手な感じじゃないんだけど、とにかくしっかり者で、地元にも友達が多くって。
 それで、あの頃、彼女は僕のライブのチケットをたくさん友達に売ってくれてたんですよね。
 僕もそういうのにすっかり慣れちゃってて、それは自分の人気のおかげなんだと思ってた。

 ある時、地元の友達に言われたんですよ。
「お前の彼女、なんかお金に困ってるみたいだぞ」って。
 ブランド物を買い漁ったりする子じゃなかったし、金遣いが荒いなんてイメージは全くなかったから、その日、彼女を問い詰めたんですよ、お金のこと。変なギャンブルとか宗教とかにハマってて、借金とかあったら困るよなあ、と思って。
 でも、彼女、なんでそんなにお金に困っているのか、全然教えてくれなかったんですよ。
 そうするとこっちもイライラしてきて、もう、問い詰めて問い詰めて、ようやく話させたんですけど……

 ……彼女、僕のライブのチケット、みんなに「売ってた」んじゃなくて、そのチケット代、ほとんど全部自分でかぶってたんですよね。
 それなのに僕に「売り切れちゃったから、追加ちょうだい」なんて言ってて……
 彼女は泣きながらその話をしたあと、ただ、「ごめんなさい」って繰り返すばかりで。

 後で友達に聞いたら、友達に「売る」ことができなかったから、タダで配って「でも絶対来てね」って頼んでた。
 今から考えたら、そんなの当たり前ですよね、そんな20歳そこそこの女の子の交友関係で、「売ることができる人」なんて多寡がしれてるよね。

 でも、あの頃の僕は、そういう彼女の行動にひたすら腹が立って……
 さんざん酷いことを言って、別れて、それっきり。
 それでも、彼女は一言も僕を責めずに、人づてに、ただ、「ごめんなさい」って。

 いまさら謝って済むような話じゃないし、彼女も謝ってなんてほしくないと思う。
 たぶん、あのときの僕は、ああすることしかできないガキだったのだろうし、そういうプライドみたいなもので自分を支えておかないと、いろんなことを諦めてしまいそうだったし……

 今でも、そのときのことが突然頭に浮かんでくるんですよ。
 あのとき、ひたすら「ごめんなさい」って謝り続けてた彼女の顔とか。
 たぶん、ずっと忘れられないと思う。

 ほんと、全然「いい話」じゃなくて、「情けない話」でリスナーのみんな、ごめんね。

 「酷い男」と「男のプライドを理解できない女」の話、なのかもしれないけれど、僕はこの話、とても強く印象に残っています。恋愛って、善意って、こんなにも残酷にすれ違ってしまうこともあるのだな、って。
 この有名アーティストがまだ独身なのは、このときのことが、まだ「引っかかって」いるのかな……
 

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