第139回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考委員会が15日、東京・築地の「新喜楽」で開かれ、芥川賞が楊逸(ヤンイー)さん(44)の「時が滲(にじ)む朝」(文学界6月号)に、直木賞は井上荒野さん(47)の「切羽(きりは)へ」(新潮社)が決まった。
今回の候補作はすべて未読だったので、作品に関してはなんとも言いようがないところではありますが、楊逸さんへの授賞に対する各選考委員(とくに、前回「日本語が未熟」と断じた山田詠美さん、宮本輝さん、石原慎太郎さん)の選評が楽しみです。
『毎日jp』には、興味深いこんな記事も。
受賞作は前作の「ワンちゃん」同様、登場人物の性格や心情などをはっきりと描き分け、情景を太い線で力強くデッサンする。何を書きたいかはっきりと読者に伝える熱気があり、洗練された他の候補作と対照的だ。
楊作品の“越境者の文学”としての魅力は、その独特な比喩(ひゆ)にもある。「田舎色の歯」「西北風を飲む暮らし」「空が魚の腹のように白くなって」など、中国の慣用句を直訳したような書き方が、従来の日本語にはない魅力を感じさせる。
助詞の使い方や描写の進め方も一見ぎこちなく、スムーズではないかもしれないが、抵抗感にゴツゴツした確かさがある。
こういう比喩や表現って、「越境者」という背景を抱えていれば「従来の日本語にない魅力」なのかもしれませんが、もし日本人作家が全く同じ小説を書いたとしたら、「へたくそ!」と一蹴されていたような気がします。 僕はジェロが歌っているのを聴くたびに「たぶん、同じくらいの技術があって、懸命にプロモーションしているにもかかわらず全然売れない日本人の演歌歌手がたくさんいるんだろうなあ」と思うんですよ。
「作者のキャラクターも作品の一部」であることは厳然たる事実なのだとしても。
- 作者: 井上荒野
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