琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

20世紀少年 <最終章> ぼくらの旗 ☆☆☆


映画『20世紀少年 <最終章> ぼくらの旗』 公式サイト

“ともだち歴3年”の2019年、世界は世界大統領として君臨する“ともだち”に支配され、殺人ウイルスがまん延する東京は壁で分断。都民の行動は完全に制限されていた。そんな中、カンナ(平愛梨)は反政府組織として武装蜂起するが、“血の大みそか”以降、行方がわからなくなっていたケンヂは……


 ※今回は極力ネタバレ無しの感想にします。


 月曜日のレイトショーで鑑賞。夏休み最後の一日とあってか(とはいえ、23時に終わるレイトショーだと、子供はさすがにほとんどいませんでした)、60〜70人となかなかの客入りでした。
 DVDの売り上げを犠牲にして、テレビで「特別版」を放送するという戦略は、かなり奏功しているように思われます。
 あと、今は他に客層が被るような作品が少ないことも幸いしていそうです。

 この映画、<最終章>だけあって、<第1章><第2章>と比べると、けっこう面白くはありました。というか、3部作ともなると、全部つきあうと、「最後まで見届けた」という満足感ってありますよねやっぱり。
 この<最終章>に関しては、漫画やこれまでの2つの作品に接してきて、続きが気になる人は、そこそこ満足できるデキなのではないかと。
 相変わらず「ダイジェスト版っぽい」印象は拭えませんが。

 でも、僕自身は、この<最終章>を観終えて、致命的な失敗に気がつきました。
 それは、「映画のラストを観る前に、原作の漫画を最後まで読んでおくべきだった」ということ。
 この<最終章>は、「原作とは違うラスト」であり、「試写会でも最後の10分間は流されなかった」ことが話題になっているのですが、率直なところ、「原作のラスト」を知らなければ、「違う」と言われても、何と違うのか全然わからないんですよね。
 テレビ版の『エヴァンゲリオン』を観ずに、今回の「新劇場版」の「序」「破」を観ると、こんな感じなのかもしれません。
 原作ファンなら、「おお、これは意外だ!」という結末だったのかもしれないけれど、僕は、「『20世紀少年』のラスト」は、この映画版のものしか知らない。
 「『ともだち』の正体」にしても、もともとのケンヂや仲間たちのキャラクターや背景が詳しくわかっていれば感情移入できるのでしょうが、「ケンヂ、カンナ、オッチョ、ユキジ、ヨシツネ、そしてその他大勢」というくらいしか識別できない僕にとっては、「ああもう誰でもいいよ、どうせどのキャラクターにも思い入れないし」としか言いようがなくて。とにかく登場人物が多いので、一人一人の描きこみは、どうしても「薄く」なってしまいます。なんだか、「最終章でいきなり出てきた、友達の友達が犯人だとわかる推理小説」みたいなんだよなあこれって。

 その「ラスト10分間」も、僕は「蛇足」だと思います。
 だって、それがいまの世界での「解決」につながるかは疑問だし、そういう「メッセージ」を前面に出すことによって、かえって観客を中途半端に心地よくして、思考停止に陥らせているようにも感じるのです。いや、ああいう「救い」を求めたくなる気持ちは、よくわかるのだけれども。
 あと、「総製作費60億円」を、いったい何に使ったのか謎すぎる。
 たぶん円盤とかロボットの特撮や万博公園での大群衆にお金がかかったのだろうとは思うけど、正直、どうでもいいようなところにばっかり金かけてるなあ……という印象です。

 まあ、原作も最後はかなり支離滅裂になってしまっていたという話なので、こうして映画化するのも大変だったのでしょうが、ほんと、「ともだち」と「オッチョ」以外のキャラクターは、とにかく存在感が薄かったというか、何のために出てきたのかよくわからない人ばっかりだったなあ……

 僕にとっては、「ともだち」が、この物語のなかで、唯一「血が通っていると感じたキャラクター」でした。

 1970年代のはじめに生まれた僕にとって、子供のころ、「世界」は、突然壊れるかもしれない危うさを持ち続けていました。当時は、核戦争の恐怖とか「ノストラダムスの大予言」とか、「滅亡」するのが必然だと考えずにはいられないような「未来予想図」が満ち溢れていましたし。
 その一方で、「宇宙コロニーでの生活」や「テレビゲームの劇的な進化」というような「明るい未来」への期待もあって。
 あの頃の子供たちは、みんな、「自分が世界を良くしてやる!」という希望と、「こんなロクでもない世界など、跡形もなく消え去ってしまえばいいのに…」という絶望の、極端に揺れる振り子の上に立っていたのです。

 そうだよ、僕が、20世紀少年なんだよ……

 ノスタルジーだけで観るには、ちょっと長すぎる映画なのですが、「20世紀に少年だった」僕としては、妙に心に染みる映画ではありました。
 「ともだち」って、もし、ほんの少しだけ何かが満たされていたら、ものすごく世界を良くするために生きることができた人なのではないかなあ。

 個人的には、<第一章><第二章>未見の人に、「<最終章>のために最初から観たほうがいいよ」と薦めたくなるほど面白いとは思えなかったのですが(どこかで観たようなオチでしたしね)、すでに<第一章><第二章>をテレビなりDVDなりで観た人は、続きが気になっていて、かつ、お金と時間があれば、<最終章>くらい映画館で観てもいいかな、というレベルのデキではないかと。
 でも、とりあえず、原作の漫画を全部読んでから観たほうがいいんじゃないかとは思います。
 僕はこの映画を観ながら、「あんなに人気があったんだから、漫画はこんなもんじゃないよな?」と考えたのですが、原作既読の人にとっては、この映画、いったいどういう評価になるのでしょうか?
 やっぱりあれは、「意外なラスト」だったの?

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