琥珀色の戯言

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8bit年代記 ☆☆☆☆


8bit年代記 (GAME SIDE BOOKS)

8bit年代記 (GAME SIDE BOOKS)

ゲームサイド」で大好評を博した「8bit年代記」第1部、1〜15話までを収録。巻頭にはカラー描き下ろしコミックを追加。
また本作品連載以前に「ゲームサイド」に掲載された異色読切「忍者芸夢済度」「ゲームShop藝&犀」も(ついでに)収録!!

このマンガ、著者が1980年代前半からリアルタイムで体験してきた「テレビゲームの歴史」が当時のさまざまなエピソードとともに描かれています。
この本の前半(第9回まで)はすごく面白かったし、資料的価値も高いと思います。
『デジコムベーダー』とか、エポックの『スーパーギャラクシアン』久々に見たし、『光速船』まで載っているんだものなあ。
同世代である僕にとっては、「あの価格であのグラフィック」「ゲームセンターそのままの『ドンキーコング』が遊べる(まあ、実際は1つステージがカットされてはいたのですが)」という「ファミリーコンピューター」の衝撃や『ゼビウス』で『マイコンBASICマガジン』が盛り上がっていたころ、そして、不良でもなかったのに、あまりにもテレビゲームがやりたかったため、「地下ゲームセンター」に潜入し、カツアゲされそうになった上に「補導員が来た!」という声に驚いて同級生とトイレの窓から脱出したことなとが、次々と思い出されます。
今は「小学生はテレビゲームが禁止されていた」とか「ゲームセンターで遊んでいると補導された」なんて話をすると、30歳以下の人たちからは、「またぁ、何つまらない冗談言ってるんですか!」なんて言われてしまうのですが、「そういう時代」が確かにあったんですよ。
「テレビゲームをやっている」というだけで「暗い」というレッテルを貼られたり、「女子がテレビゲームをするなんて信じられない!」というのが「常識」だったり。

このマンガ、ファミコンだけではなくて、当時のマイコンゲーム事情にも少し触れられているのが嬉しかったです。
著者ゾルゲさんの友人が買ったMZ-700の『タイムシークレット』が「グラフィックが残念なゲーム」という感じで紹介されていたのは、悲しかったけど。
『タイムシークレット』は本当に当時としては画期的な名作だったんですよ。
「ゲームに絵がついている」というだけで「グラフィック・アドベンチャー!」とか宣伝されていた時代なので。
アップル2でフロッピーディスク7枚組(くらいだったと思う)の超大作アドベンチャーゲーム『TIME ZONE』(男闘呼組の歌じゃないので念のため)に憧れながらも、そんなハードもソフトも買えるはずがなかった僕たちにとっては、すごく貴重なゲーム。
僕はX1で遊んだんですが、MZ-700であれを作った「ネコジャラ氏」は、シャープ系のユーザーにとっては、神に近い存在だったのです。続編『タイムトンネル』もすごかったなあ。
いつもマイコン雑誌の後ろのほうの白黒ページにしか広告を出していなかった「ボンドソフト」、いま、ネコジャラ氏はどうしているのだろう……

……というような「あの頃のさまざまなゲームの思い出」が、読んでくると次から次へと浮かんできます。ほんと、前半は僕にとっては大傑作!

ただ、後半の「アニメ制作の話」は、けっこう感動的な「創作に魂を奪われた高校生の物語」ではあるのですが、正直、前半とあまりに毛色が違うというか、アニメにあまり興味がなかった僕としては、「うーん、熱さは伝わってくるんだけど、こういうのが読みたくて『8bit年代記』っていうマンガを買ったわけじゃないのに……という違和感のほうが強かったです。
巻末の「忍者芸夢済度」「ゲームShop藝&犀」に関しては、うーん、紙も貴重な資源なのだが……としか……

1冊の本のなかに、すばらしいところと残念なところが、かなり極端に含まれているのですが、いま30代後半〜40代くらいの「テレビゲームの進化をリアルタイムで体験してきた人」にとっては、少なくとも前半は「ツボ」なのではないかと思います。

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