
ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方 (光文社新書)
- 作者: 瀧澤信秋
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2014/04/17
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。

ホテルに騙されるな!?プロが教える絶対失敗しない選び方? (光文社新書)
- 作者: 瀧澤信秋
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2014/05/23
- メディア: Kindle版
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内容紹介
近年は様々な形態のホテルが登場し、業界内の競争は熾烈を極めている。食品偽装のように利用客を“騙すのは許されないが、どのホテルにも利益を確保するための“儲けのカラクリ”はある。それは超一流の高級ホテルも例外ではない。では、どうすればなるべく安く賢く泊まれるのか? 年間200泊を超えるホテルジャーナリストが、一般利用者でもすぐに使えて役立知識を徹底指南。あくまでも“宿泊者目線”を貫いた画期的な一冊。
ビジネスホテルに泊まるのって、けっこう好きなんですよね。
日頃、物が多い、雑然とした部屋で生活をしているので、必要なもの以外、何もない空間というのが、ものすごく新鮮に感じられて。
「できること」が限られているだけに、作業に集中もできますし。
とはいえ、そんなに頻繁に出かけて外泊するわけにもいかないので、ホテルに泊まるのは年に数回くらいですし、大概、みんなで飲みにいって、そのまま寝てしまうような感じなので、あまり「ホテルライフ」を満喫しているとも言い難い。
そんな僕でも、この新書は、なかなか興味深く読めました。
ああ、最近のホテル事情って、こんなふうになっているんだな、って。
出張で各地のホテルを利用する機会が多い人なら、「ホテルガイド」として、さらに役立ち度は高いと思います。
「ホテル評論家」という肩書きを聞いて、珍しく思われる方は多いと思う。筆者は元々、経営コンサルタントとして12年近くやってきて、ホテルコンサルタントの仕事もしていたため、ホテルの経営や運営側についても専門ではあるのだが、これらの分野では多くのホテルコンサルタントや、業界に詳しいジャーナリストの方が活躍されていた。
他方、ホテル利用者・宿泊者目線の職業評論家は知っている限りではおらず、「ホテルライフ」を評論することで、ここ数年、頻繁にメディアなどに取り上げていただけるようになったのである。
あくまでもホテル利用者・宿泊者目線をスタンスとして、年間150〜200泊ほどのホテル覆面調査や取材から、特に有名ではないがキラリと光る全国各地のホテル情報を発信してきた。
そんな著者のところに、2013年10月に発覚した「有名ホテルの食材偽装問題」の際には、取材が殺到したそうです。
その理由を、「ホテルの実態や問題を利用者目線でストレートに書いている人間が他にはほとんどいなかったからではないか」と著者は述べています。
たしかに、ホテルに関する報道とか書籍って、「こんなすごいサービスがあります」「感動しました!」みたいな話ばかりで、ネガティブな情報というのは、あまり表に出てきません。
口コミサイトには、ある程度「本音」が書かれているのではないかと思われますが、評価者のなかにはクレーマーみたいな人もいて、けっこうバイアスがかかっているんですよね。
著者は、「日本のホテル業態が急激に変化してきている」と指摘しています。
久しくホテル業態の区分としては「シティホテル」「ビジネスホテル」という表現が用いられてきた。シティホテル=高級なホテル、ビジネスホテル=一般的なホテルというイメージである。
ところが90年代以降ホテル業態は変化し、特に2000年あたりから「ラグジュアリーホテル」という外資系を中心とした超高級ホテルと、一方「宿泊特化型ホテル」といわれる機能的で清潔感のあるホテルチェーンが人気を博し、そのどちらにも進化することができなかった旧来のシティホテルやビジネスホテルは苦戦を強いられてきた。阪急ホテル、阪神ホテルなどはまさに旧態型のシティホテルにあてはまる。
ホテルの料飲部門(レストランやカフェなど)の利益率について、こんな数字が出てきます。
一般的な数字として、宿泊部門は正規料金で販売した場合、収入からの利益がおおよそ70%という割合に対し、レストランでは15%前後といわれる。レストランが利益で追いつくためには、宿泊に比べて5倍近くの売り上げを達成しなくてはならない計算だ。そのせいか特に高級ホテルの料飲部門の料金設定は、一般的に高いというイメージがある。
というか、「高い」ですよねやっぱり。
あれだけの値段なのだから、けっこう儲けているんだろうな、そして、ちゃんとしたものを出しているんだろうな、と思いきや……
あの料金設定でも、ホテルのレストランは、そんなに儲かっているわけではなさそうです。
経営側からすれば、「コストの割には利益が少ない料飲部門は、やめられるものならやめたい」くらいなのかもしれません。
しかしながら、昔ながらの大型ホテルで、レストランやバーを全部潰してしまうというのは、宿泊者の利便を低下させるし、ホテルの「格」も落ちてしまいます。
やめたくても、そう簡単にはやめられない。
「儲からない」から、コストを極力抑えたい。
それが、「食品偽装問題」に繋がっていったのです。
この新書では「ホテルはどうやって儲けているのか」が、いくつか紹介されています。
いま流行りの高級ホテルのランチバイキングについて。
ご多分に漏れず、ここでもホテルの儲けのカラクリはある。そもそもたくさんの中から選ぶという行為自体にバイキングの魅力があり、選ばれた料理は美味しく感じられるという心理効果もあるが、それ以前に様々な料理を見ているだけで満腹中枢が満たされていくという実験結果がある。
また、ホテルのバイキングでは、ステーキやローストビーフ、蟹などの目玉メニューを設け、客寄せに使っているところも多い。確かに目玉メニューだけを大量に食べられると赤字らしいが、そればかりだと飽きてくるのは当然で、逆に満足感は得られないであろう。やはりバイキングの楽しみは、たくさんの種類から好きなだけ、自由に選べることにある。
このような高級食材もあれば、サラダや卵料理など原価率の相当低い料理もあるが、意外にも偏りなく捌けていくという。また、提供する料理が決まっているので食材の無駄な在庫を抱える必要がなく、大量仕入れによる調達費用の節約が可能であるし、客が自ら運んでくれるのでスタッフは少なくて済み、人件費の節約も相当なものである。
僕もバイキング形式だとワクワクしますし、自分で好きな料理を取りにいったほうが気分も高揚するので、これは「悪いカラクリ」ではなくて、いわゆるWIN-WINだと思うのです。
バイキングというのは、ホテルにとってもメリットが少なからずあるし、だからこそ、流行っているということなのでしょう。
「好きなものを、好きなだけ」だったら、ステーキやローストビーフばかり食べる人がいてもおかしくないのですが、たしかに、そういう人って、あんまりいないですよね。
僕も、「元を取る」よりも、「せっかくだから、いろんなものを食べてみよう」としてしまうのですが、そういう人が多いのだろうなあ。
「偏りなく捌けていく」のだから。
最近のホテルでの「サービスの提供のしかたの変化」にも驚かされます。
前述したホテルココ・グランに特徴的なサービスがある。ホテルの案内や有料放送はもちろん、貸し出し品からルームサービスまでテレビの画面上でリクエストできるのだ。無料貸し出し品目をザッと見ても、低反発枕、消臭スプレー、水枕に体温計、コンタクト保存液に携帯充電器からブルーレイディスクプレイヤーなど30品目以上に及ぶ。
その種類や品数もそうであるが、リモコンのボタンひとつで客室に届けられることに驚く。テレビ画面上で希望する物の有無が確認できるという利点は大きく、通常の高級ホテルのように、受話器を取り、担当部門を確認した上でボタンをプッシュして希望を伝え、在庫有無のコールバックを待つ、というストレスから解放される。そもそも人による内線対応があるということは、その分の人件費が宿泊料金に上乗せされているのである。
スシロー(あるいは「くら寿司」)かよ!
と言いたいところではありますが、これは間違いなく「便利」ですよね。
僕みたいに、電話をかけて頼むのも面倒だな、とか、つい考えてしまう人間にとってはなおさら。
高級ホテルでは、「人が応対することそのものがサービス」だと考えるのかもしれませんが、僕はこちらのほうがいいなあ。
こういうホテルは、これからどんどん増えていくのではないでしょうか。
また、こんな話も出てきます。
そうした中、最近問題視されている宿泊プランがある。ビジネス客の間で大人気となっている「クオカード付きプラン」である。
例えば、実勢料金で1泊5000円のホテルがあるとしよう。予約サイトを開いてみると、スタンダードのシングルルームが「1泊5000円」という宿泊プランがある中で、同じスタンダードシングルなのに「1泊1万円」のプランもある。同じクラスの客室なのに料金差は2倍。よく見ると、1万円のプランは「5000円分のクオカード」が付くという。
時々見かけるのは、これだけ割り引いているということをしめすために、敢えて正規料金のプランも並べて表示されているサイト。正規料金1万円のプランとともに、半額5000円にディスカウントしたプランも出し、利用客に「これは安い」と思わせるのだ。
ただ、こうしたクオカード付き1万円のような高いプランを積極的に利用する客がいるのも事実である。なぜこのようなプランが流行るかといえば、次のようなカラクリがある。
クオカード5000円分付きの「宿泊料金1万円」プランを利用した客は、「宿泊料金1万円」の領収証を受け取る。出張利用のビジネスマンであれば、これを経費として会社に提示することで1万円が支払われる。手元には5000円のクオカードが残り、カードは実際に使ってもいいし、金券ショップで換金もできるというわけだ。
この話を読み始めた時点では「そんな高い価格設定の部屋に、誰が泊まるんだ?」と思ったのですが、それには、こういう「利用法」があるんですね。
これについて、著者は「悪いことだ」と一蹴しているわけではなくて、「もともと会社が宿泊費として1万円の予算を組んでいたのであれば、その範囲内で安いホテルに泊まってお金を浮かせるというのは、会社側にとって『損』だとは言い切れない」とコメントされています。
もちろん、「これはすばらしいので、ぜひやるべきだ」というスタンスではないんですけど(まあ、かなりグレーゾーンの事例でしょうから)。
そもそも、「安いホテルに泊まったら、その分の差額をもらえるのが社会通念上あたりまえ」であれば、クオカードを介在させる必要もないわけですし。
素晴らしいものから、やや疑問が残るものまで、さまざまなサービスが出現してきており、いまの日本のホテル業界は、「面白い時代」になってきているようです。
僕も、この新書で紹介されているホテルに、今度は泊まってみるつもりです。
「安くて(あるいは、そんなに高くなくて)良いホテル」って、あるところには、ちゃんとあるものなんですね。