あらすじ
現場に不可解な数字の羅列が残される殺人事件が3件発生する。警視庁捜査一課の刑事・新田浩介(木村拓哉)は、数字が次の犯行場所を予告していることを突き止め、ホテル・コルテシア東京で4件目の殺人が起きると断定する。だが、犯人の手掛かりが一向につかめないことから、新田が同ホテルの従業員を装って潜入捜査を行う。優秀なフロントクラークの山岸尚美(長澤まさみ)の指導を受けながら、宿泊客の素性を暴こうとする新田。利用客の安全を第一に考える山岸は、新田に不満を募らせ......。
2019年、映画館での3作目。
平日の朝の回で、観客は30人くらいでした。
フジテレビが得意な、テレビのスペシャルドラマを、ちょっと豪華にして映画にしてしまう作品なのだろうな、と思いつつも観賞。
気軽にそういう作品を観たいときもあるよね、と。
木村拓哉さんと長澤まさみさん、初共演だったんですね。
それを知って、なんらかの理由で共演NGだったのだろうか、とか、かえって勘繰ってしまうくらいメジャーなふたりなのですが、この映画に関しては、武骨で不器用な刑事と生真面目なホテルのフロントクラークの「噛み合わなさ」と次第に理解しあっていくところが初共演だけに新鮮にみえた気がします。
ホテルの制服姿の長澤さん、立ち姿が美しくていいよなあ。
ホテルが舞台といえば、三谷幸喜さんの『THE 有頂天ホテル』での、戸田恵子さんのホテルの有能なスタッフっぷりがすごく印象に残っています。
豪華なキャストでお得感がある、というのは、フジテレビ映画の得意技でもありますし。
ストーリー的には、伏線もうまく回収されていて、けっこうよくできているのですが、正直、ミステリとしては弱いというか、たぶん、東野圭吾さんの原作では、もうちょっと新田警部補たちの推理パートがあるのではないかと。
思いつきみたいな捜査に、20年前くらいなら通用しそうなトリック、そして、殺人事件をつなぐ犯人側のプロセスも、そんなにうまくいきそうもないというか、まわりくどい方法をとっているけれど、そもそも、この映画内の情報だけでは、ちょっと説明不足な感じがします。
物語のなかのある人物の行動も、「それはホテル云々じゃなくて、探偵雇ったほうが早くない?」とか思うし、警察もこんなに杜撰ではなかろう。
ただ、この映画の「安心して見ることが出来る面白さ」というのは、ミステリとして、観客が犯人を当てられる楽しみを捨てて、新田刑事と山岸さんの関係とその変化をしっかり描くことに重点を置いたからだとも思うのです。
そして、医療という仕事をやっていると、「献身を求められ、自分の責任ではないことまで怒りをぶつけられたり、逆恨みされたりしやすいホテルマンの仕事」に親近感も抱いてしまうのです。
もうこれ、長澤まさみさんの制服姿を堪能できる「フロントクラーク物語」でもよかったのではなかろうか。
この映画に関しては、長澤まさみさんが、木村拓哉さん相手に、むしろ押しているくらいの存在感を示しているのと同時に、「何を演じてもキムタク」なんて揶揄されがちな木村さんが、長澤さんを「受けの演技で活かしている」ようにも感じたのです。
僕はずっと「アイドル俳優・木村拓哉」が苦手だったのだけれど、最近の木村さんって、なんかいいなあ、と思うことが多くなりました。
何をやってもその人自身、というのは、代え難い個性、とも言えますし、この『マスカレード・ホテル』に関しては、キムタクと長澤まさみさんを観ているだけで飽きなかった。
長澤さんは、コメディエンヌとしての才能も最近は発揮しているのですが、この『マスカレード・ホテル』では、抑えめの演技をしていて、だからこそ、感情の機微が伝わってくるところもあったのです。
ところで、この映画を観終えたあと、ある有名人が、どこに「友情出演」していたのかと、館内がざわざわしていました。僕も全くわからず。
勿体ない起用というべきか、贅沢というべきか。
あと、『HERO』のキャストたちの久々の再会というのも、感慨深いものがありました。
こんな形で出会わなくてもよかった気もする人もいたけど。
僕も大ファンのあの人、仕事を選ばないのか、選びすぎているのか、どっちなのだろう……
とりあえず、木村拓哉さんか長澤まさみさんのどちらか、あるいは両方とも好き、という人は、映画館で観ても損はしないと思います。
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