- 作者: コナン・ドイル,延原謙
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1953/03/12
- メディア: 文庫
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内容紹介
逞しく男らしい生涯を送った老人の暗い過去を、その刺青に読みとったホームズ……。探偵を生涯の仕事と決する機縁となった「グロリア・スコット号」事件をはじめとして、名馬の失踪とその調教師の死のからくりを解明する「白銀号事件」、もっとも危険な犯罪王と時代にぬきんでた大探偵との決死の対決を描く「最後の事件」など、ホームズの魅力を遺憾なく伝える第二短編集。
久々に読み返してみました、シャーロック・ホームズ。
30年ぶり、くらいなんじゃないかなあ。
僕が子どもの頃の小学校の図書館では、「探偵小説」が人気だったんですよね。
本好きの子どもたちは『マンガ日本の歴史』派か、『少年探偵団』『怪盗ルパン』『名探偵シャーロック・ホームズ』派に分かれて、借りた本の冊数を競っていたものです。
あの頃、もう少し「世界名作小説」みたいなのを読んでいればよかったかも……
まあ、当時から「面白いものを読みたい」というだけで、「役に立つ云々」なんて、全く考えてもいなかったんですけどね、僕は。
『チボー家の人々』とか、やたらと巻数が多くて、あれを読破した人って、どのくらいいるのだろうか……
当時の僕はルブランの『怪盗ルパン』を愛読していました。
『少年探偵団』は、子どもっぽいと思っていたし(僕も子どもだったんですけどね)、『ホームズ』は、なんというか、起伏に乏しくて、なんかずっと説明を聴いているようで、あんまりワクワクしない。
今回は、その『シャーロック・ホームズ』の第二短編集を手に取ってみたのです。
古典ミステリの定跡では、ホームズは、発表年代順に読んでいったほうが良いとされていて、これは『緋色の研究』『四つの署名』の2つの長篇と、第一短編集『シャーロック・ホームズの冒険』の続く、4冊目の「ホームズもの」なんですよね。
図書館で偶然この『思い出』の文庫を見かけたので、まあ、これでよかろう、という感じで借りてきました。
本格的に、これから『ホームズ』を読んでみようという方は、キャラクター設定がしっかり説明されている『緋色の研究』から読むことをオススメします。
短編派も『冒険』からのほうがよさそう。
久々に、大人になって読み返してみると、やっぱり、『シャーロック・ホームズ』って、ある意味素っ気ないというか、「ミステリの骨組みだけのような作品」だな、なんて思ってしまいました。
だからこそ、読み始めると、けっこうハマるんですけどねこれが。
最近のミステリは、基本的に「長いし、設定が細かい」ので、「まだるっこしい」と思うことも多いので。
ホームズはホームズで、「これはさすがに、御都合主義なんじゃないか?」と思うようなトリックもあるんですが。
『黄いろい顔』とかを読むと、「当時のイギリス人の『人種観』」みたいなものがうかがえますし(ちょっと感動的な話なんですよねこれ。このくらいで感動してしまう自分もいかがなものか、と思いつつ)、ホームズの名推理はすごいのだけれども、あんまり被害者の救済にはつながっていないな、と感じる話もあります。
というか、『シャーロック・ホームズ』シリーズって、いま読んでみると、ミステリというか、なんだか村上春樹が都市伝説を聞いて短編にした作品集みたいな手触りがありました。
「大切にしていたことが、どうしてわかる?」
「このパイプは新しく買ってまず7シリング6ペンスというところだろうが、見たまえこの通り二度修繕してある。この吸口をさしこむ場所を一度と、琥珀の部分を一度、ほらね、この通り銀の帯がまいてある。これは二度とも、新しくパイプを買いなおすよりも高い修繕料をとられたに違いないが、そんなにしてまで古いのを使うというのは、よほど大切にしている証拠じゃないか」
「なるほど。ほかにも何か変わったところがあるのかい?」私はホームズがまだパイプをひねくりまわしては、例によって考えこんでいるので尋いてみた。すると彼はパイプを持ちなおし、医学の教授が骨の講義でもするように、細長いひとさし指でコツコツたたいてみながら、
「パイプというものは、時々きわめて面白いことを教えてくれる。懐中時計とくつひもとを除けば、おそらくこれほど個性を現すものはあるまい。もっとも今の場合は、そう大して重要な特徴も現れてはいないが、それでもこのパイプの持主が筋骨たくましい男で、左ききで、歯なみが丈夫で、ものごとに無頓着な性癖があり、経済上の苦労のない男だくらいのことはわかる」
ホームズは口から出まかせみたいにこういって、その推理が私にわかったかなというように、じろりと私のほうへ横目をつかった。
ああ、ホームズの推理の源泉って、「ひらめき」じゃなくて、こういう「類まれなる観察力」なんだよなあ。
だからこそ、ホームズは「地味」に思えてしまうところもあるのだけれど。
もう「卒業」してしまったから、と思いがちな「ホームズ」なのですが、あらためて読むと「研ぎすまされた美しさ」みたいなものを感じるのですよね。
しかし、ワトソン先生、いくらホームズとの推理旅行が好きだからっていって、臨時休診多すぎだよなあ。うらやましい……
シャーロック・ホームズの冒険―新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)
- 作者: アーサー・コナン・ドイル,日暮雅通
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/01
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シャーロック・ホームズの冒険 【新訳版】 シャーロック・ホームズ・シリーズ (創元推理文庫)
- 作者: アーサー・コナン・ドイル
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- 発売日: 2014/04/28
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