- 作者: 川村元気
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2014/10/15
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
- 作者: 川村元気
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内容(「BOOK」データベースより)
宝くじで3億円を当てた図書館司書の一男。浮かれる間もなく不安に襲われた一男は、「お金と幸せの答え」を求めて大富豪となった親友・九十九のもとを15年ぶりに訪ねる。だがその直後、九十九が失踪した―。ソクラテス、ドストエフスキー、アダム・スミス、チャップリン、福沢諭吉、ジョン・ロックフェラー、ドナルド・トランプ、ビル・ゲイツ…数々の偉人たちの“金言”をくぐり抜け、一男の30日間にわたるお金の冒険が始まる。人間にとってお金とは何か?「億男」になった一男にとっての幸せとは何か?九十九が抱える秘密と「お金と幸せの答え」とは?
「2015年ひとり本屋大賞」5作品め。
川村元気さんは、前作『世界から猫が消えたなら』も「本屋大賞」にノミネートされていたのですが、その際の僕の感想の一部を再掲します。
薄い、あまりにも薄っぺらいぜこれは……
なんか、数学的理論をもとにプレイヤーを夢中にさせ、課金するソーシャルゲームと同じような「あざとさ」を感じてしまう。
もっとさ、書き手の側の迷いとか、ためらいとか、怒りとか、苛立ちとか、そういうザラザラしたものが感じられる小説のほうが、僕は好きです。
なんか「感動させる小説ツクール」かなんかで書かれたような気がするんだよこれ。
率直に言うと、この『億男』も同じ、なんですよね。
ディテールを言えば、そう簡単に宝くじなんて当たらないし、三連単も当たらないし、「お金」について語るには、あまりにもフワフワしたファンタジーになりすぎているのではないか。
要するに、「自己啓発本」みたいだな、と。
ただ、『世界から猫が消えたなら』よりは面白かったし、続きが気になって最後まで読めました。
そういう意味では「お金の話」っていうのは、やっぱり、人を惹きつける力があるのでしょう。
それに、こういう「わかりやすさ」みたいなもの+「有名人推薦」みたいなのが、いまの世の中の「読まれる本」には必要なのかな、とも思ったんですよね。
いくつか、考えさせられるフレーズもありましたし。
僕らは何が欲しいか分からずに欲しがったり、失ったりしている。皆が必死になって書き出している夢。世界一周。大きな家。幸せな家族。でも実は行きたい場所なんてどこにもないのだ。ここではないどこか、を求めているだけ。お金がそれら茫洋とした夢や欲望に、姿かたちを与えてくれると期待しているだけなのだ。
みんな、「お金が欲しい」のだと思います。僕だって欲しい。
でも、よくよく考えてみると「お金があったら、何がしたいか」という具体的なイメージって、あまり浮かんでこないんですよね。
そりゃ、大金持ちになったら、競争馬でも持って、ダービー制覇を目指したい、とか、自家用ジェットで好きなところに行ってみたい、なんていうのもなくはないんだけれど、それが「本当にしたいことなのか?」と言われると、そうだと言いきる自信はあまりないのです。
実は「お金が欲しい」というのは、「お金があれば、幸せになれるのではないか」という、わかりやすく、そして、あまりにも漠然とした希望のかたちなのかもしれません。
もしかしたら、自分には何も欲しいものがないから、それを思い浮かべることができないから、とりあえずの「万能薬」として「お金」を欲しがっているふりをしているだけではないのか?
本当に欲しいものは、お金「だけ」では買えないことはわかっているのに。
この本を読みながら、僕は小学校のとき担任だった先生のことを思いだしていました。
その先生は、今の僕と同じくらいの年齢だったのですが、始業式の日、教室にいる僕たちを見渡して、こう言いました。
私は、みんなの「あれが欲しい」という目が好きなんだ。
当時、小学校低学年だった僕は、それを聞いて、内心「そんな欲望をギラギラさせた目をした人間って、怖いというか、はしたないのではなかろうか」と感じたんですよ。
そういうことを、先生が言っても良いのだろうか?と。
もちろん、口には出せなかったけれども。
でも、この本を読んでいて、その先生が言いたかったことって、「あれが欲しい、という気持ちは、人間にとって、生命力や進歩の源なのだから、それを恥ずかしがることはないし、もっとギラギラしてほしい」ということだったのかな、と思ったんですよ。
もちろん、不正な手段で手に入れることを勧めているわけではなかったのだろうけど。
なんのかんの言いながら、僕はそこそこ楽しく読めた作品でした。
自己啓発本っぽいな、とは思うんですけどね、やっぱり。