- 作者: pha
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2017/06/22
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
- 作者: Pha
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2017/06/21
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内容紹介
家を出て
街に遊ぶ。
お金と仕事と家族がなくても、人生は続く。
東京のすみっこに猫2匹と住まう京大卒、元ニートの生き方。
世間で普通とされる暮らし方にうまく嵌まれない。
例えば会社に勤めること、家族を持つこと、近所、親戚付き合いを
こなすこと。同じ家に何年も住み続けること。メールや郵便を溜め
こまずに処理すること。特定のパートナーと何年も関係を続けるこ
と。睡眠薬なしで毎晩同じ時間に眠って毎朝同じ時間に起きること。
だから既存の生き方や暮らし方は参考にならない。誰も知らない
新しいやり方を探さないといけない。自分がその時いる場所によって
考えることは変わるから、もっといろんな場所に行って
いろんなものを見ないといけない。
僕はこの本を読みながら、ずっと考えていたのです。
人間の生き方には、いろんな形があるのだなあ、って。
phaさんは京大を卒業し、会社勤めをしていたにもかかわらず(恋人がいたこともあるのに!)、シェアハウスに住み、定職に就かない、という生き方を選んでいる人です。
子どもの頃、あるいは、こうしてインターネットが普及する前は、大人って「ちゃんと働いている普通の人」か、「精神的な問題などで、家から出ることもできない引きこもり」か、ギャンブルやアルコールで人生ぶっ壊れてしまった人」の3つの定型のいずれかに分類されると思っていたんですよ。
でも、インターネットのおかげで、phaさんのような「会社勤めはしないし、アルコールやギャンブル依存でもないけれど、家に引きこもっているわけでもない」という生き方が可視化されてきたのです。
これまでの世の中では、「依存症になるほど病的なのめりこみはなく、ずっと家に引きこもっていなければならないほど、精神的に追い詰められてはいないけれど、社会人、あるいは会社人として日常を送るのはすごくつらいと感じていた人」は、なんとか歯を食いしばって「適応」してきたのです。
そうするしかない世の中だったから。
しかしながら、インターネットは、「身を粉にして、他人に認めてもらえるように働かなくても、少し稼いで、ちょっと遊んで、つつましく暮らしていければいい」という生き方を選びやすくしたんですよね。
「会社勤めができない」からといって、「引きこもっていなければならない」わけじゃない。
人間の生き方には、いろんなグラデーションがある。
会話という行為自体が心理的負担で、発声するたびエネルギーを消耗する人間がいることを考慮せずに、突然話しかけてくる人間がこの世界には多すぎると思う。髪を切りながら話しかけてくる美容師と服屋で話しかけてくる店員のことは憎んでいる。あと突然玄関のチャイムを鳴らす営業マンや宗教の勧誘のことも。
店に行くときはチェーン店がいい。チェーン店の店員はマニュアル以外の余計なことを話さない。個人商店のおっさんのように「このへんに住んでるんですか」とか「最近よく来ますね」みたいな余計なことを言わない(そういうことを言われるともうその店には行かなくなる)。
チェーン店で働いているのは、マニュアルに沿って動くだけの、誰とでもすぐに入れ替わりが可能なアルバイトばかりだ。バイトなんてそれでいい。たかがバイトなんかに人間エネルギーを費やす必要はない。そして、そんな人間味を失った店員の前では自分も、社会性や愛嬌を持った人間のふりをしなくても許されるような気がするから楽なのだ。
読んでいて、phaさん、あなたは僕ですか?と言いたくなるような話ばかりだったことに、読んでいて驚きました。
ああ、僕みたいな人間って、他にもいるんだ、って。
「どこも同じようなチェーン店ばかりで」って嘆く声が目立つわりに、多くのチェーン店が営業を続けているのをみると、あえて声は上げないけれど、そういう「人と人のふれあい(とそれを美化する社会)に負担を感じる人」は、少なからずいるのでしょう。
こうして、phaさんのシェアハウスに人が集まってきたり、著者が多くの人に読まれたりしていることを考えると、僕が思っているよりもずっと、世の中には、phaさんみたいな人、僕みたいな人がいるのではなかろうか。
なんのかんの言っても、食べられている我々は「めぐまれている」のかもしれないし、「われわれ」とは言ってみたものの、僕はたぶんサウナを趣味にすることはないだろうし、シェアハウスに住むのも他人が気になって難しいと思うのです。
同じところに住み続けると、飽きてしまって引っ越したくなる、という話を読んで、葛飾北斎も、こういう人だったのだろうか、なんて考えていました。
似たところがあるのと、違うところがあるのは当たり前のことで、だからこそ、人の個性は尊重されたほうが良いのですよね。
一人でビジネスホテルに泊まるのが好きで、ときどき用もないのに泊まりたくなる。1泊4000円くらいの一番安いやつだ。
なんとなく毎日の生活に飽きてきたときとかに、ネットの旅行サイトでとにかく安いビジネスホテルを検索して、「1泊4000円プラス交通費を出せば、行ったことのない街でぶらっと散歩したり適当に飯屋でごはんを食べたりしてからいつもと違う部屋の清潔なベッドでゆっくり眠って朝を迎えられるのか……」と想像するだけで、なんだか解放感を覚えることができるのだ。
ホテルというのは日によって値段が変わるものだけど、日曜が一番安いことが多い。平日は出張の人が泊まるし、週末は休日に出かける人が泊まる。そのどちらもが来なくて空いているのが日曜の夜だからだ。日程に調整がつくなら日曜の夜を狙ってみよう。
ビジネスホテルのあの、とりあえず生活に必要なものは一通り揃っているけれど、全部高級ではなく安っぽくて、部屋も狭くて、でもそれなりに清潔感だけはある、という最低限かつ機能的な感じが好きだ。
これは僕もよくわかるなあ。
整理整頓が苦手なこともあり、ビジネスホテルの「必要最低限、かつ清潔な環境」というのは、ものすごく僕にとって新鮮で居心地が良いのです。できることが少ないだけに、何をやろうかと迷うこともないし。
まあ、実際にひとりで泊まる機会は、出張で年に何回か、なんですけどね。
しかし、家にいてもビジネスホテルにいても一人で部屋にこもっているときに思うのは、「自分は20年前と何も変わってないな」ということだ。
中学生や高校生の頃、別にひきこもりではなく学校には行っていたけど、友達もいなくて部活もせず学校が終わるとすぐに帰宅して、ずっと自分の部屋でひたすら本を読んだりゲームをしたりしているのが好きだった。
その頃の生活と今の生活はほとんど変わらない。相変わらず部屋で本を読んだりゲームをしたりしている。変わったのは、中学生の頃は部屋にあったのがスーパーファミコンと週刊ジャンプと筒井康隆の小説だったけど、30代の今はそれがパソコンとスマホとインターネットに変わっただけだ。人間は年を取っても本質的には変わらないものだとだと思う。
ただ、もし一つ変わったことがあるとすれば「外の世界に期待をしなくなった」ということかもしれない。10代の頃は部屋にこもりつつも、なんか外の世界に対する焦りや期待や憧れがあった。「このままじゃだめだ」とか「外にはもっと面白いものがあるんじゃないか」という気持ちがあった。
その頃はまだ、世界はこんなにつまらないものであるはずがない、冴えない自分の人生を劇的に変えてくれるものがどこかにあると信じていた。今の自分がたまたま持っていないだけで、その「何か」を手に入れればもっとうまく、もっと楽しく生きられるはずだと思っていた。
かといって「リア充を目指す」とか「学校をやめる」とか積極的に行動して自分の状況を変えようというほどアクティブじゃなかった僕は、なんとなく受動的に、だるそうな顔をしながら学校に通って、真面目に勉強するふりをしながら、頭の中でぼんやりと、高校に行けば何かが変わるはずだ、大学に行けば何かが変わるはずだ、一人暮らしをすれば何かが変わるはずだ、恋人ができれば何かが変わるはずだ、海外に行けば何かが変わるはずだ、などとひたすら空想し続けていた。
結局のところ、そのあたりの憧れていたものを実際に手に入れても、世界も自分も大して変わらなかった。人生を劇的に変えてくれる「何か」なんて存在しなかった。まあそういうものだ。
僕はphaさんのようには、諦めきれていないなあ、と、これを読んで思ったんですよ。
まだ、「何か自分の中に、秘密の引き出しみたいなものがあるのではないか」と、ふと考えてしまう。40代半ばになっても。
「少ない収入でも軽やかに生きていく」なんて宣言していた人が、ブログで稼げるようになった途端に、稼いだ金額を誇り、金融商品を紹介しだしたり、セミナーをはじめたりするのを、僕はずっと見てきました。
人は、変わる。
たぶん、変わらずにはいられないのだと思う。
phaさんのように「目の前の小さな幸せを求めながら、お迎えが来るのを待つ」というスタンスをずっと続けている人は「稀有」なのです。
正直、すごいなあ、羨ましいなあ、というのと同時に、なんかもったいないなあ、と、いまだに感じるんですよね。
僕は、一生期待しつづけるのかもしれないな……
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気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている (講談社文庫)
- 作者: 村瀬秀信
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