琥珀色の戯言

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【読書感想】睡眠負債 “ちょっと寝不足”が命を縮める ☆☆☆


Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
毎日1、2時間というわずかな睡眠不足が、借金のように積み重なっていく「睡眠負債」。仕事や家事など日々の生活の質を下げるだけでなく、重大事故の原因となったり、がんや認知症といった命にかかわる病気のリスクを高めたりすることも。この現代社会の新たな脅威をどう予防、対策すればよいのか?25万人大調査の結果と最新研究の取材をもとに迫る。


睡眠負債」か……身に覚えがありすぎる……
この本、2017年6月18日に放送された「NHKスペシャル睡眠負債が危ない~ ”ちょっと寝不足”が命を縮める~」の内容をもとに、番組では紹介しきれなかった取材分を加えて書籍化したものです。後半は、睡眠に詳しい専門家へのQ&Aが多くを占めていて、個人的にはちょっと物足りない感じもしたのですけど。

「きちんと寝ているはずが、通勤時間や仕事中につい、うとうとしてしまう」
「仕事や家庭で、思わぬミスをしがち」
「特に原因が見当たらないのに疲れやすい」 
 こうした症状に少しでも心当たりはあるだろうか。もしかしたら、その不調は「睡眠負債」が原因かもしれない――。
 毎日1、2時間程度のちょっとした睡眠不足が、まるで借金(負債)のようにじわじわと蓄積されていく。いま睡眠研究の分野では、こうした「蓄積した睡眠不足」のことを睡眠負債(Sleep Debt)と呼び、対策の重要性が叫ばれるようになっている。
 睡眠負債は、自分でも気がつかないうちに脳のパフォーマンスを低下させてしまう。その結果、知らず知らずのうちに仕事や家事の能率が低下することになるのだ。
 そればかりか、命にかかわる病気のリスクが高まることにつながりかねない。最近の研究によって、よって、睡眠負債が続くと認知症の原因とされる物質が脳に蓄積しやすくなることや、がん細胞の増殖を加速させることもわかってきたという。
 この私たちの健康を蝕む深刻な脅威に対して、世界中の研究者が警鐘を鳴らし始めている。


 僕自身の現状と周囲の人々をみての印象では、いま現役として仕事をしている世代で「自分は十分な睡眠時間をとれている」「日中に眠気や疲れを感じることはない」という人は、ほとんどいないような気がするんですよね。
 
 では、どのくらいの睡眠時間がとれればいいのか。

 1日6時間の睡眠では睡眠負債が溜まっていく可能性があることは、後の章で紹介する米ペンシルバニア大学で行われた実験で行われた実験で強く推察される結果が出ている。
 必要な睡眠時間に個人差があるのは当然として、どの程度の時間眠れば負債を抱えなくてすむのか。白川氏(睡眠評価研究機構代表、医学博士)は「基本的に7時間前後。7時間から8時間が一番健康被害がない時間です。ただ、これも年齢、性別、日中どれだけ活動しているかということの影響を受けます。7時間前後が一番いいんですけども、必ずしもそうではなくても大丈夫です。ただし5時間を切ってくるといろいろな危険性が増してきます」と言う。


 平均7時間か……
 僕の場合は、「すごくよく寝た、という日の睡眠時間が7時間くらい」というのが実情です。
 でも、通勤時間が長かったり、夜中に少しでも自分の趣味の時間を確保しようと思ったら、7時間というのは、かなり高いハードルではありますよね。

 日々、家事や仕事、学業に追われる現代人の生活を考えると、多くの人が「充分と言える睡眠時間を確保していない」ということを感じているのではないだろうか。
 こうした国民の睡眠時間の実態を2015年の「国民健康・栄養調査結果の概要」(厚生労働省)が明らかにした。20歳以上の男女に「ここ1ヶ月間、あなたの1日の睡眠時間はどのくらいでしたか」という質問をしたところ、39.5%が「6時間未満」と回答、そのうち5時間未満が8.4%であった。一般に「十分な睡眠時間は8時間程度」と言われるが、4割近い人が2時間以上不足していることになる。
 2005年に6時間未満だった人の割合は34.7%で、2007年には28.4%まで低下したものの2014年に36.6%と上昇し、2015年には前述のように4割近くまでになった。この調査を見る限り、日本人の睡眠不足の傾向は近年強くなっていると言える。
 また、先進諸国の中でも日本人は平均睡眠時間が短いことがデータで明らかになっている。15歳から64歳を対象に睡眠時間を調査したところ、日本(2011年調査)は463分(7時間43分)であった。米国(2010年調査)は516分(8時間36分)、OECD加盟国のうちデータのある25ヵ国の平均499分(8時間19分)と比較すると、その短さは際立つ。睡眠時間は25ヵ国中、ノルウェー(2010年調査)と並ぶ23位(最下位は韓国=2009年調査)である(OESD Gender Data Portal, Data on time use 2014)。


 僕が子供だった頃、いまから40年前って、夜に起きていても、本を読むか、ラジオの深夜放送を聴くくらいしか、できることがなかったんですよね。今は、ゲームにDVDにネットにと、いつでもできる娯楽がたくさんあります。寝るのは時間がもったいないような気がする、あるいは、もう少し何かやってから寝よう、と思いがちです。
 日本や韓国というのは、ネット環境が整った国でもありますし。

 自分に睡眠負債が溜まっているかどうかを調べるのに、いちばん簡単な方法。それは、日中に眠気を感じるかどうかだ。
 健康な人でも午後2時頃に眠くなる「アフタヌーンディップ」と呼ばれる現象が起きることが知られている。多くの人は「食事をとると消化のために腸に行く血液が増えて、血液が脳に行かなくなるから」と思い込んでいるが、それは間違いだ。スタンフォード大学の研究によれば、昼食は午後に起きる眠気の襲来とは関係ない。
 とすればなぜか? スタンフォード大学医学部教授で、現在同大学睡眠生体リズム研究所の所長を務める西野精治氏は、その原因の一つが「睡眠負債によって睡眠圧が増してくること」であるとする。「霊長類はよく昼寝をしますので、『アフタヌーンディップ』はその名残りかもしれません。ただ、昼寝をしない人類でも、睡眠負債は午後の眠気としてもっとも敏感に反映されます」(西野氏)。
 つまり日中の眠気は、睡眠負債の蓄積のサインである可能性が十分にある。もし、日中、眠くなることがあれば、睡眠負債の蓄積を疑ってみた方がいい。西野氏の恩師にあたるデメント氏も、「人が大量の睡眠負債を抱えると、どんな状況下であれ、眠りやすくなります」と話している。
 そしてこの日中の眠気は、仕事や家事といった日常生活のパフォーマンスを低下させるのはもちろん、時には重大な危険を引き起こす原因となることがある。


 睡眠負債認知症のリスクを高め、男性の前立腺がん、女性の乳がんの発症の可能性も上げる、というデータが報告されているのです。
 

 ちなみに、「睡眠負債を解消するための方法について、専門家たちは、口を揃えて、「もっと眠ること」だと言っています。
 「摂取カロリーを減らせば痩せる」というのと同じくらい自明の理ではあるのですが、万人に通用する「裏技」的なものは存在しないみたいなんですよ。体質的に睡眠時間が短くても大丈夫な「ショートスリーパー」も存在するようですが、人口の1%にも満たず、多くの人は「自分が睡眠時間が短くても大丈夫」だと思い込んでいるだけなのです。


 この本を読んでいると、「睡眠に対して、自分が誤解していたこと」の多さに驚かされます。
 そして、「眠りとアルコール」についてのこんな知識は、持っておいたほうがよさそうです。

 寝酒を睡眠薬代わりにする人もいるようですが、微量のアルコール摂取は脳の興奮を促し、かえって眠れなくなります。多量のアルコールで眠くなる経験はあるかもしれませんが、アルコールには眠気を誘発する効果はありません。覚醒を抑制する効果があるだけで、それによって本来ある眠気が出てくるだけです。
 結論から言えば、お酒は飲まない方がいいです。逆効果です。飲みすぎると睡眠の質が悪くなります。微量だと興奮性の作用がありますので、寝つきが悪くなります。お酒を飲んだ時は基本的にはよい睡眠はできないと思った方がいいです。寝る3時間前にワインなら1、2杯、日本酒なら1、2合程度。それならアルコールが抜けますから。
 寝る前に緊張して寝つきが悪い人は軽いストレッチ、ヨガ等、あまり無理をしない程度、時間なら5分ぐらい、ほんのわずか体温を上げる程度の運動をすればいいでしょう。


 「アルコールで眠くなる」わけじゃないんですね。
 そして、「寝る直前に飲む」のは、とくに良くないみたいです。
 というか、飲むとかえって眠れなくなったり、眠りの質が落ちたりするのです。


 知っているようで、知らなかったり、誤解していることも多い「睡眠」の話。
 一度は読んでおいて、損はしないと思います。


スタンフォード式 最高の睡眠

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