琥珀色の戯言

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【読書感想】開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学 ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

内容紹介
脱サラをしてラーメン店を開こうとする人は後を絶たず、年間の出店数は3000店を超えるというデータがあります。それだけ競争が激しい世界で、新規オープンから3年以内潰れるお店は8割にも達すると言われています。
本書はさまざなま失敗を重ねながら、今年(2019年)で10年目を迎えた『麺ジャラスK』の店主であり、プロレスラーの川田利明さんが、現役時代に購入したベンツを売り払ってわかった〝俺だけの教訓〟を余すことなく披露。成功のための「してはいけない」逆説ビジネス学を辛口で伝えます。

しょっぱなからこんなことを書くのもなんだけど、この本を読んで〝こんなに大変なら、やっぱりラーメン屋になるのはやめよう〟と思ってくれる人がいてくれたほうが、俺はいいと実は思っている。こんなに成功する確率が低いビジネスに、人生を賭けてチャレンジするなんて、本当に無謀なこと。チャレンジというより、これはもうギャンブルだからね」(著者より)

第1章 「デンジャラスK」が「麺ジャラスK」に“転職"した理由
第2章 ラーメン屋は四天王プロレスばりに過酷な世界だった!
第3章 そして、俺はベンツを3台、スープに溶かした……
第4章 個人経営店の難敵! ラベリング効果と大手チェーン店の奇策
第5章 それでもラーメン屋をやりたい人に教える『俺だけの王道』辛口10箇条!


 プロレスラー・川田利明さんのラーメン店『麺ジャラスK』、もう開店から10年経つんですね(2019年現在)。
 川田さんがラーメン店をはじめると最初に聞いたときには、ああ、有名人の名義貸しビジネスなんだろうな、と思ったのですが、本人が毎日店でラーメンをつくり、接客もされているのです。
 
 この本、川田さんがラーメン店をはじめてからの激闘が記されているのですが、飲食店ビジネス、とくにラーメン店の経営って、こんなに厳しいのか、と驚いてしまいました。
 川田さんのような有名人でも、経営はけっして順調ではなかったのです。
 それどころか、愛車のベンツを3台も売り、ワガママな客に振り回されながら、意地で10年続けてきた、という感じなのです。
 
 僕はこれを読んで、「いくら素人料理が得意でも、商売としてやるのは全然違うものなんだな」と痛感させられました。
 店を経営して、利益をあげていくには、コスト意識というのがものすごく大事なのです。
 お金と時間をかければ、美味しいものはつくれるけれど、それでは店をずっと続けていくことは難しい。
 だからといって、あまりにも質が低いとどうしようもない。
 川田さんの場合は、「もうちょっと手を抜く、あるいは、質を落としてコストを下げても良いのでは」と思ったのですが、そこで妥協できないところが、川田さんらしくもあります。
 
 この本、基本的には「失敗談」なんですよ。
 プロレスの世界から、料理好きを活かそうと飲食店経営を志した川田さんが、ラーメン店を選んだのは、借りることにした店舗がもともとラーメン店だったからだそうです。
 そこがもともと焼鳥屋だったら、俺は焼鳥屋になっていた、と仰っています。

 
 ラーメン店の開店には、初期投資として、どのくらいのお金がかかるのか?

 居抜きであろうがなかろうが、ラーメン屋を開業しようとしたら、少なくとも1000万円は開業資金を用意しておかないと、たぶんすぐに足りなくなるだろう。これも最低限、頭に入れておいたほうがいい。
 そして、俺には経営の知識もノウハウもなかったから、あっちに支払い、こっちに支払い、とやっていくうちに、気がついたら1000万円はすぐ消えてしまっていた。資金だけではなく、頭もショートしてしまった。
 これだけお金をかけても、このお店の主力商品となるのは一杯数百円のラーメン。原価率を無視して考えても、1000万円を回収するには、毎日、どれだけラーメンを売ればいいのか? いや、「回収するなんて、絶対に無理じゃないか」と、絶望に似た感情を抱いてしまったことを覚えている。
 最初はなんにもわからなかったから、業者の人にいろいろとお願いしたんだけど、向こうも商売だから「これは絶対に必要です」「念のため、あれも買っておいたほうがいいですよ」とどんどん勧めてくる。
 プロが言うんだから間違いないな、と言われるがままに買ってしまったけれど、あとになって思えば「あんなものは買う必要なんてなかったじゃないか!」と思うようなものもたくさんあったし、もっと安く買えたじゃないか、と憤ることも多かった。
 初心者だから知らなくて当然、というのは甘すぎる。開業前のマイナスを少しでも減らすためにも、そのあたりのリサーチは徹底的にやるべきだと思う。
 ここまで読んで、「俺は大丈夫だ」と思っている人がいちばん危険だ、ということも付け加えておきたい。


 この本によると、店のエアコンと券売機に、それぞれ100万円くらいかかった、とのことでした。
 しかも、初期投資だけで支出が終わるわけではなくて、開店後も運転資金がどんどん出ていくのです。材料費や家賃、電気代はもちろん、食洗器や冷蔵庫などの機材の「保守料」や駐車場代まで。
 僕などは、「東京ではラーメンが1杯1000円もする、高い!」と思ってしまうのですが、経営側からすれば、原価やコスト抜きでも、開店資金を回収するだけで、1杯1000円でも、1万杯もラーメンを売らなければならないのです。
 これはしんどいよなあ。


 そして、信じられないような「お客さん」がやってくることもあるそうです。
 『麺ジャラスK』では、「必ず最初にラーメンを人数分、注文してください」というルールがつくられています。
 こういう「ハウスルール」的なものがある店って、めんどくさい感じがして、僕は苦手なのですが、そういうルールができるのにも、それなりの理由があるのです。

(ひとつめの理由として、注文からの待ち時間が長くなるのを避けるため、というのを挙げたあと)


 もうひとつの理由としては、安いサイドメニューだけ頼んで長居をするお客さんが少なからずいるため「必ずラーメン注文してください」とお願いしている。もちろん自慢のラーメンを食べてほしいという気持ちもあるんだけど、居酒屋感覚で来られてしまうと困る、というのが本音だ。
 極端な例では、380円のデザートを頼んで、それを10人で分けて食べる、ということが実際にあった。ひとり頭38円だ!
 こういったケースの多くは俺のファンだった人で、あれこれ話をしたいから、カウンターに座って、結構な時間、粘られる。それをやられてしまうと、文字どおり、こちらとしては「商売あがったり」だ。いちいち注意して、お互いに嫌な気持ちになるぐらいだったら、最初からルールを決めてしまったほうがいい、というのが俺の考え方です。読者の皆さんには想像がつかないかもしれないけれど、飲食の商売をやっていると、信じられない言動をする人が来るのだ。


 川田さんは、基本的に厨房をひとりで回しているので、お客さんとおしゃべりをしている時間はない、と仰っています。
 まあ、それはそうですよね。でも、「ファン」の中には、そんな状況を目の当たりにしているにもかかわらず、いろいろと話しかけてくる人もいるそうです。
 「有名人の店」も、良いことばかりじゃない。
 10人で380円のデザート1個、なんて、ファンというより、営業妨害のために雇われた人なんじゃないか、と思えてきますよね。ファンだったら、ラーメン代くらい出すのが当たり前、のような気がするのだけれど、それが通じる人ばかりではないのです。

 この本の中でも、「ランチタイムにラーメンを食べた方はカレーライス無料」というサービスを始めたら「無料のカレーだけくれ!」という人がたくさんやってきた、という話を書いたけど、こんなのはほんの一例。とにかく、サラリーマン生活とは違って、常識的な受け応えだけしていればいい、というわけではなくなる。
 自分が客としてラーメン屋に通っていた時のことを思い返してみてもそうだが、無意識のうちに「客のほうが偉い」という言動を取っているケースを見かけないかな。
 たとえばあるお客さんがビールを飲んでいる時、つい手を滑らせて、コップをひっくり返してしまったとする。
 店舗には過失はないとしても、基本的に店員は「気にしなくていいですよ」どころか、「大丈夫ですか?」と心配するように声をかけ、代わりのビールまで提供する。テーブルからコップが落ちて割れてしまっても、まったくの不問だ。
 実は割り箸は高いというエピソードを前に書いたけど、こぼしたビールで割り箸がびしょびしょになってしまったら、もう使いものにならないから、泣く泣く廃棄処分にするしかない。細かい話だけど、爪楊枝だって同じだよね。こういう状態になったら、すべて店側が負担するのが、暗黙の了解になっている。
 俺が客として飲食店に通っていた時にこういう状況に陥ってしまったら、「すいませんね」とは口にしていたけれども、あとは店員に言われるままにしていた。よくよく考えたら、あきらかにこっちが悪いんだけど、なんとなく「客のミスは悪くない」という空気がどこの店でもできあがってしまっているんだよね。
 いざ、経営する側に回ったら、そういうロスがなにげに痛手になる。
 さっき補充したばかりの割り箸が一瞬にしてダメになってしまったりすると、その場ではさすがに顔には出さないけど、内心「ああ~っ」となるもんね。お客さんにコップを割られても、ウチでももちろん請求できないから。
 とにかく飲食業や接客業をやっていると、一時が万事、こんな感じになることが多いんだ。挙げればキリがないけど、ほかにもいくらでもある。

 あのハードな「四天王プロレス」を続けてきた川田さんも、「やめておいたほうがいい」とみんなに伝えたくなるラーメン店稼業。
 たしかに、「ものすごくうまくいっている人の成功自慢」よりも、ずっと「参考になる」本だと思います。


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