琥珀色の戯言

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【映画感想】ランボー ラスト・ブラッド ☆☆☆

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数々の戦いを終えて故郷のアリゾナに戻ったジョン・ランボー(シルヴェスター・スタローン)は、家族のような絆で結ばれた古い友人のマリアとその孫娘ガブリエラと共に牧場で平穏な毎日を過ごしていたが、ある日ガブリエラがメキシコの人身売買カルテルに誘拐される。娘同然の彼女を救うため、ランボーグリーンベレーの隊員として培ってきた超人的な戦闘技術を総動員して戦いに備える。


2020年、映画館での7作目。

約4ヵ月ぶりの映画館でした。
平日の夕方からの回で、観客は僕も含めて3人。座席は前後左右ひとつずつ空けることになっていたのですが、この人数だと関係ないですね。
けっこう映画館には人が来ていたように見えたのですが、新作よりも、スタジオジブリの上映のほうに人が集まっていたのだろうか。
たしかに、ジブリの『もののけ姫』とか『風の谷のナウシカ』を映画館のスクリーンで観ることができるのは、これが最後かもしれないしなあ(僕も久ぶりに観てみます、たぶん)。

まあでも、実際に席について、予告編を観ていると、4ヵ月ぶりとは思えない日常感。

前半はかなりもどかしいというか、「どうしようもない連中」のオンパレードで、観ていてストレスたまりまくりだったんですよ。
悪党どもも「結局、人は変わらない」のだけれども、ランボーがメキシコに乗り込んでいくシーンでは、「えっ、何これ?そんなノーガードでいいの?でも、そう見せかけて、何かあるんだよね、ね……」と思いながらみていたのです。

率直に言うと、映画的な都合で、ランボー側のキャラクターがみんな隙だらけでひどい目にあっていて、「さすがにそこまでバカで無防備じゃないだろ……」とは思うんですよ。
映画的な都合というか、観客の苛立ち、怒りをマックスにするために、わざわざ登場人物が愚かに振る舞っているというようにもみえます。
敵の組織も悪い連中ではあるんだけれど、馳星周さんの『少年と犬』を読んだあとなので、「こいつらと直接かかわるのはまっぴらごめんだが、このチンピラたちも、こうして生きるしか選択肢がない人生ではあるんだろうな……」とか、ちょっと考えてもみたのです。

そうして、観客のフラストレーションをひたすら高めておいて、クライマックスの戦闘シーンへ!

主演俳優の「老い」とシリーズの今さらながらの再起動+終幕という点では、『ターミネーター:ニュー・フェイト』に似ている気がします。


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映画としてのデキの良さというか完成度は、『ニュー・フェイト』のほうがずっと上だと思うんですよ。予算もだいぶ違いそうだけれど。
でも、『ニュー・フェイト』って、「よくできてはいるんだけれど、僕が観たかった『ターミネーター』は、こういうのじゃないんだよな……」という感じだったんですよ。
それに対して、この『ラスト・ブラッド』は、「本当にもうやたらと残酷だったり御都合主義のストーリーだったりするんだけれど、こういうのが『ランボー』だよね!」って、妙に納得してしまうところがありました。

あえてR15+にしてまで、次々と繰り出される残酷な殺戮シーンの数々!ここまでくると、かえって笑いがこみあげてきます。そういえば、プレイステーションに『影牢』って、敵をトラップに引っ掛けて惨殺するゲームがあったなあ、なんて思いながら見ていたのです。
この前半のフラストレーションの積み重ねと後半のカタルシスは、『必殺仕事人』に近いかもしれない。


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初期シリーズでのランボーの「アメリカのイデオロギー」みたいなものを背負った戦いとは、だいぶ背景が変わっていて、時代の変化を感じずにはいられませんでした。
これ、メキシコの人が観たら、「風評被害だ!」って怒りそう。

「結局、人は変わらない」
前作で、ようやく心の平安を得たように見えたランボー自身にも、この言葉はあてはまるのです。
しかし、第一作の『ランボー』から戦い続け、行きついたところがこの作品のラストなのだとしたら、「人生って、何なのだろうな……」とも思います。
ランボーキリスト教の伝道師とかになったら、それはそれで「違うだろ!」って言うだろうけど。

僕自身には『ランボー』にそんなに思い入れがないので、「いいぞいいぞ、もっとやれ!」って感じで観たのですが、ファンの人にとっては「メキシコの人身売買組織よりも、ハリウッドの『お金になることへの執着』のほうが怖い」のではなかろうか。前作で終わらせてやれよ、って。

もしかしたらこれ、アメリカ的には「興味本位でメキシコに遊びに行く若者を戒める」とか「メキシコへの敵愾心を煽るプロパガンダ映画」なのでしょうか。


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