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琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女 たちは傷つきながら、夢を見る ☆☆☆☆☆

DVD 映画


内容紹介
ステージの華やかさだけでは語れないトップアイドルの壮絶な舞台裏・・・
走り続けることをやめない少女たちの追った、人間ドキュメンタリー!


参考リンク:『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』(高橋栄樹) - Devil’s Own −残骸Calling2−

僕はAKB48には詳しくないのですが(認識できるメンバーは、前田敦子さんと大島優子さんと柏木由紀さんくらいです)、上記の参考リンクのレビューを読んで、このドキュメンタリー映画を観たいと思っていました。
今回、レンタルDVDで鑑賞。


「AKBに興味がなくても楽しめる」と言われても、実際はどうなんだろう……そもそも誰が誰だかよくわからないし……
(実際、このドキュメンタリーでも、大部分のメンバーは、テロップが出るまで名前がわかりませんでした)
そんな感じで観始めたのですが、メンバーによる被災地訪問、2011年の総選挙、そして、西武ドームでのコンサートの舞台裏、スキャンダルで休養を余儀なくされたメンバーの話……そんなエピソードの積み重ねを、飽きることなく120分、観続けることができました。
 もっと途中で歌のシーンとかが入るのかなと思っていたのですが、そういう「表の顔」はごく一部で、かなり多くの時間が「バックステージ」に費やされています。


 これを観ていると、「アイドルをやり抜くっていうのは、大変なことなんだな」と考え込まずにはいられません。
 総選挙で1位に返り咲いたとき、喜びの声が発せられるはずのステージ上で、「私のことが嫌いな人もいると思います。でも、私のことが嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないでください!」と絶叫した「絶対的エース」前田敦子
 被災地を訪問した際に、小さな女の子から一輪の野の花を手渡され、ステージでなるべく姿勢を低くして「ありがとう」と握手した峯岸みなみは、その後のインタビューで、「あのとき、そんなに高いステージじゃなかったのだから、なんでステージを降りて、あの女の子を抱きしめてあげなかったのだろう、と後悔しています」と話していました。


 そこまでやらなくてはならないのか。やらずにはいられないのか。
「愛される」ということは素晴らしいことなのだと僕も思います。
 でも、その「愛される重み」みたいなのって、すごく大きなプレッシャーにもなるのです。
 大島優子さんは、総選挙のときに「この投票は、皆さんからの愛です!」と言っていました。
 それだけの大きな愛に、誠実に「お返し」をするのは、あまりにもキツイ。
 にもかかわらず、AKB48のメンバーは、それを自分に課し続けている。


 このドキュメンタリーを観ていると、AKBのなかで、高橋みなみさんの存在の大きさがよくわかります。
 あるときは、総選挙後に(勝ったのに)ボロボロになっている前田敦子さんのフォローを、コンサートの出来が悪かったときには、メンバーと秋元康さんの橋渡し役を、そして、新しいチームができたときには、初ステージの日に「がんばって」のメールを。
 まだ、20歳そこそこの「女の子」が、AKB48の「屋台骨」であることを自ら意識し、リーダーとしてふるまっている姿には、ただただ圧倒されるばかりでした(いやまあ、僕の苦手な「体育会系」な感じはすごくあるんですが)。


 もちろん、「バックステージのバックステージ」みたいなところでは、「放送できないような、もっと気を抜いた姿」があるんじゃないかと思うし、そうであってほしいとすら思うのですが、このドキュメンタリーを観ていると、本当に、「なんでこんなに過酷な環境で、彼女たちはステージに立ち続けることを選ぶのだろう」という気がします。
 西武ドームでのコンサート、1日目のデキが悪かったことを受けて、高橋みなみは、メンバーに檄を飛ばします。
「こんなステージを続けていたら、AKBは終わります!」
 翌日のステージ、過呼吸でフラフラになりながら、ステージに立ったとたんに弱々しくも笑顔をみせる前田さん。
 熱中症でダウンするメンバーたち。
 みんなきついはずなのに、ステージに穴をあけないように、必死にフォローするメンバーたち。
 これだけたくさんのメンバーの舞台でのポジションをひとりひとり決め、着替えを用意し、ステージをスムースに進行していくというのは大変だなあ、と、裏方さんたちの苦労についても、あらためて思い知らされました。
 

 正直、僕はこれを観て、前田敦子さんは、よくここまでAKBに踏みとどまってきたなあ、と思ったんですよ。
「卒業」しても、やっていけるのかな、なんて考えていたのですが、あっちゃんがこれ以上AKBのエースとしてやっていくことは、生命の危険にすらつながるのではないか、と。
 本人も、大事なステージで過換気症候群になってしまう自分にもどかしさを感じていたのかもしれません。
 「アイドルになろうと思っていた人々」でも、いまのAKBのセンターという立ち位置は、あまりに重すぎるものになってしまいました。
 「じゃんけん選抜」で、篠田真里子さんに負けてしまったメンバーが、「正直、負けてホッとしたところもある」と語っていたのをみて、なんだかすごく納得してしまったんですよね。
 センターを張るために芸能界に入ったはずの人でも、そういう「怖さ」から逃れられる人は、けっこう少ないのかもしれません。
 「絶対的エース」を目指す人がいれば、サポート役に徹する人もいる。
 そんな「それぞれの役割分担」すらひとつの組織のなかに採り入れ、物語にしてしまったAKB48
 

 このDVDのレビューを、Amazonで観ていたのですが、たくさんのレビューのなかには、こんなものもありました。

まず、最初に言っときますが自分はファンでした。
星ひとつの理由がコンサート裏。

過呼吸になったり、倒れたり・・
確かに大変かもしれませんが、厳しい球技等の部活動をやっているAKBと同年代の子達はこんなの当たり前。
わざわざ映像にしてアピールするところではないと感じました。

部活で嘔吐したり、ぶっ倒れるなんて当たり前。しかもそれが毎日。
コンサートのときだけ、こんなになるなら普段からの体力不足で無理してるだけと感じました。
非常に残念です。

40男の僕からすれば、「若い女の子たちが、こんなに過酷な状況でアイドルとしてやっているなんて……」だったのですが、この「厳しい部活動をやっている同年代の子たちは当たり前」というのも、同世代の「本音」なのかもしれません。
むしろ、これだけ「報われている」のだから、恵まれているんじゃないか。
でも、もしかしたら、こういう「同世代の子たちと同じ」であることが、AKB48が同性にも支持されている要因なのかもしれないな、とも思うんですよね。


このドキュメンタリーでは、宮城県仙台市で被災した12期研究生・岩田華怜さんのエピソードも出てきます。
彼女は震災のあと「みんながこんな状況のなか、自分だけが夢を追いかけて東京に行ってもいいのか?」と悩んだそうです。


僕は、そんな彼女の逡巡に共感しつつも、こんな不謹慎なことも考えずにはいられませんでした。
この作品のなかで、岩田さんがそのAKB48でのポジション(まだ「研究生」ですからね)にもかかわらず、これだけ大きく採り上げられたのは、彼女が「被災者」だからなんだよな、って。
彼女自身が望まなくても、それは「彼女を印象づけるための背景」「セールスポイント」になってしまうのです。
「芸能界」っていうのは、因果な世界だと思います。
AKB48がいつまでも「右肩上がり」ではないことは、(メンバーやスタッフも含めて)誰もがわかっているはず。
それでも、もう、立ち止まることはできない。
「いつかは売れなくなること」も含めて、AKBは「ドラマ」になってしまっているのです。


むしろ、「AKB48になんて、興味ない」という人に観ていただきたいドキュメンタリーです。
すごいよ、これ。