琥珀色の戯言

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【映画感想】パンク侍、斬られて候 ☆☆☆☆

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江戸時代とある街道で、自らを「超人的剣客」と豪語する浪人・掛十之進(綾野剛)が突然、巡礼の物乞いを斬り捨てる。彼は、この者たちがこの地に恐るべき災いをもたらすと言い放つ。


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2018年、映画館での19作目。
公開初週の平日の夕方で、観客は10人くらいでした。
綾野剛さん、北川景子さんをはじめとするけっこう豪華なキャストと、宮藤官九郎さんの脚本で、あの町田康さんの原作をどんなふうに映画化したのだろう?と思いつつ観に行きました。
ネットでは賛否両論というか、どちらかというと「何これ?」「後半は居眠りしてしまった」という否定的なコメントが多かったのですけど、なんとなく、こういう「蓋をあけてみるまでわからない映画」を観たい気分でもあったのです。
予告編で出てきた猿も気になったし。


結論からいうと、これ、いちおう時代劇なのですが、「メタ時代劇」というか、時代劇の形をとりながら、時代劇のフォーマットをあえて破壊してみせる映画、みたいな感じなんですよ。あえて時代考証に反した横文字を使いまくったり、話がどんどん脱線していったり。


何を書いてもネタバレになりそうな映画なので、詳細は控えますが、「真面目な時代劇」を期待している人には、まったくおすすめできません。
義理も人情も忠義も勧善懲悪もないし、かといって、ピカレスクロマンとか、壮絶な殺陣があるわけでもない。
ある意味、観客の予想を裏切るためだけの映画、なんですよね。
僕はこういう「お金と手間をかけまくった遊び」みたいなものに、けっこうニヤニヤしてしまうのですが、よくこんな前衛的というか、一部の好事家以外には「何これ?」と言われてしまうようなメタ時代劇をここまでのキャストを揃え、映像化したものだな、と感心してしまいます。
これ、企画段階で「ものすごく観客を選ぶ映画」だということを承知のうえで作ったのならすごい勇気だし、このキャストなら一般受けするだろう、と思っていたのだったら、「正気か?」としか言いようがありません。
町田康の作品世界を映像化しようとしたからこそ、こんな映画になってしまったのだろうし。
個人的には、ここまでやったのであれば、最後まで傾いてほしかった、とか、考えてもみたのですけれど、エンターテインメントとしては、それなりに観客を納得させられるオチも必要なんだろうなあ。
北川景子さんの美しさと豊川悦司さんの怪演もよかった。


この映画って、たぶん、観た人の多くが「何だこれは!」って思うのではないでしょうか。
そこで、「このカオスな感じが面白い」と感じるか、「ふざけんな、金返せ!」という反応を示すかが分かれめです。
僕は「これはこれで面白い」と思ったのですが、それは、町田康さんの小説を知っていて、予想もしていたし、耐性があったからではあります。
そうでなくても、この世界に「ハマる」人は少なからずいるのでしょうけど、「支離滅裂なストーリー」ということに抵抗を感じる人が大勢いて、それが多数派なのもわかります。


そもそも、この映画の予告編は、「万人が楽しめるエンターテインメント時代劇!」みたいな感じだったわけで、クドカン脚本で、綾野剛北川景子が出ているニュータイプの時代劇を観にいったらこれというのは、さすがにきつそう。

とはいえ、この映画の価値は、「大金をかけて、支離滅裂を(映像的に)大スペクタクルにしている」ことに尽きるし、これほど大衆の「付和雷同」を映像化してみせた作品というのは、あまり例がないような気がします。


あえて言えば、ものすごくお金をかけて豪華につくった、松本人志監督の『大日本人』みたいな映画だったなあ、と。
あれを面白がれる人は、きっとこの映画も好きだと思います。
そう考えてみると、商業映画で「新しいこと」に挑むというのは、なかなか難しいものではありますね。
そもそも、新しい表現を求めたものが、万人にとって面白いとは限らないというか、大ヒットするものって、けっこう「ベタな物語」が多いものですし。


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