琥珀色の戯言

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【映画感想】沈黙のパレード ☆☆☆☆

数年前から行方不明になっていた女性の死体遺棄事件を捜査する、警視庁捜査一課の刑事・内海薫(柴咲コウ)。先輩の草薙俊平(北村一輝)がかつて担当した少女殺害事件で無罪となった男が容疑者となるが、今回も証拠不十分で釈放される。やがて男は女性の遺族たちが暮らす町に現れて彼らを挑発した後に、何者かに殺されてしまう。男の殺害への関与が疑われる人物にはアリバイがあり、その死因も特定できない。捜査に行き詰まった内海は、アメリカ帰りの物理学者・湯川学(福山雅治)に助けを求める。

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 2022年18作目の映画館での鑑賞です。
 公開から1週間経った、平日の朝からの回で、観客は50人くらい。シルバーウィーク中だからなのか、けっこう賑わっていました。
 
 福山雅治さんが湯川学を演じる『ガリレオ』シリーズって、けっこうたくさん作られているイメージがあったのですが、映画化は、『容疑者Xの献身』(2008年)、『真夏の方程式』(2013年)と、これまで2作だけで、この『沈黙のパレード』(2022年)は3作目なんですね。しかも、内海薫役の柴咲コウさんは映画では14年ぶりの登場なのだとか。柴咲さんといえば、もうすぐ『Dr.コトー診療所』の映画版も公開予定で、その予告も上映前に流れていたのですが、ネットニュースでは「柴咲コウはロケ地にほとんどいなかった」「出演シーンは少ないのではないか」とか書かれていました。
 でも、『コトー』の予告編をみて、「けっこうガッツリ出てるみたいじゃねえか!」と思いました。ほんと、ネットニュースの煽りはひどい。

 この『沈黙のパレード』なのですが、「じつに面白い!」と言えればよかったのですが、やや言い淀みつつ、「普通に面白い、かな……」でした。
「久々に福山さん、柴咲さん、北村さんのトリオがしっかり見られてよかった」し、『ガリレオ』の映像化をずっと観てきた人間のひとりとして、「見届けている」という感慨深さはあるものの、ミステリとしては、「なんか、どんでん返しのためのどんでん返しというか、かなり強引な設定とストーリー展開だよなあ」と思わずにはいられませんでした。
 そんなに偶然関係者が居合わせることって、ある?
 なんでそんな周りくどい方法を素人が取るのか、よくわからん……

 観客がうんざりしないギリギリの「イヤミス」みたいなストーリーなんですよね(たぶん嫌になる人もいると思う)。
 というか、僕が子供の頃、1970年代から80年代くらいの時代設定ならともかく、2010年代後半の一般的な価値観とは、ブレすぎてない?
 警察だって、科学捜査や監視カメラ、車の移動をかなり詳細に追跡できる「Nシステム」とかが運用されている時代なはずで、リアル『逆転裁判』のような強引さではありました。

 原作既読だったものの、ストーリーはほとんど忘れかけていたので、まだ良かったような気がします。
 これ、原作を「予習」とかしていると、本当に「やたらと沈鬱な3人の同窓会」を観ているだけになりそう。
 
 やっぱり湯川の相棒は草壁、内海の二人だよなあ、とオールドファンとしては再確認させられます。
 その一方で、昔の名場面映像と比べてみると、「ああ、柴咲さん、年を重ねたなあ」と登場シーンになるたびに思うのです。でも、それが「警察という組織でずっと生きてきた人間に刻まれた疲労感」にも感じられて、なんだかすごくリアルなんですよ。老けた、というよりは、福山さんも柴咲さんも、そして僕も、『ガリレオ』が最初にドラマ化されたときから、かなり長い時間をこの世界で過ごしてきたんだよなあ、と「戦友」のような気分になります。

 あの、泣く子も黙るイケメン中のイケメンだった福山雅治さんも、テレビのいろんな番組に出て、この『沈黙のパレード』を熱心にプロモーションしていて、公開時に続編アピールもされていたのをみて、本人にとっても、「黙っていてもどんどん新しい仕事が来る福山雅治」という意識は無いんだなあ、と痛感したのです。
 だからこそ、福山さんにとって大事な役である湯川先生を、今回は一段と丁寧に演じている印象もありました。

 木村拓哉さんや福山雅治さんは「何を演じてもキムタク、福山雅治になってしまう」と言われ続けてきたのですが、あらためて考えてみると、高倉健さんも「何を演じても高倉健」だったし、大スターというのはそれで良いのかもしれません。
 
 たぶん、いちばん力を入れて撮影されたのがパレードのシーンだと思うのですが、個人的には、「劇中劇としてはかなり大掛かりなものではあるけれど、パレードの映像が観たければYouTubeとかで観るし、そのシーンを集中してみると、事件を自分で推理できるかというと……と、制作側と観客としての自分の温度差も痛感します。

 なんだか悪口ばかり書いてしまいましたが、それでも、湯川・内海・草薙の3人を観ることができただけで、それなりに満足もしているのです。
 トリックが、とかご都合主義すぎる、とか言いつつも、この3人が画面に揃っているだけで、まあ元は取れたかな、と。

 結局のところ、『ガリレオ』世代がいま映画館に行って、これ以上に楽しめる作品って、そんなに無いような気がしますし。


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※これから映画を観る、という方は、「予習はしない」ことをおすすめします。


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