琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【映画感想】ターミネーター:ニュー・フェイト ☆☆☆

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ある日、未来から来たターミネーター“REV-9”(ガブリエル・ルナ)が、メキシコシティの自動車工場で働いている21歳の女性ダニー(ナタリア・レイエス)と弟のミゲルに襲い掛かる。ダニーとミゲルは強化型兵士のグレース(マッケンジー・デイヴィス)に救われ、 何とか工場から脱出した。そして彼らをしつこく追跡するREV-9の前に、サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)が現れる。


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2019年、映画館での23作目。
平日の朝からの回で、観客は10人くらいでした。


あの『ターミネーター2』(1991年公開)の「正当な続編」という触れ込みで公開された作品なので、久しぶりに『ターミネーター2』を観て、予習してから観賞しました。
28年前に映画館で観た『ターミネーター2』には、本当に面白かった、という記憶しかなくて、とくにラストの溶鉱炉のシーンのせつなさは忘れられません。
「人が泣く意味がわかった」。


これまでの続編を観ていて思ったのは、「この設定だと、何度ターミネーターを阻止しても同じことの繰り返しだよな。キリがない」だったんですよ。
ネタがなくなるたびに『ターミネーター』が粗製乱造されているようで、観ていて悲しくなっていました。


で、この『ニュー・フェイト」。ジェイムズ・キャメロンさんが製作に復帰し、アーノルド・シュワルツェネッガーさんとリンダ・ハミルトンさんがキャスティングされているということで、これまで迷走の限りを尽くしてきた『ターミネーター』シリーズが、ようやく「王道」に戻るのか、と期待していたのです。


最初に率直な気持ちを書きます。
スター・ウォーズ/フォースの覚醒(エピソード7)』のときもすごく嫌だったんだけど、新作や新キャラのインパクトを強めるために、これまで長年ファンに愛されてきた前作の登場人物を雑に扱うのはやめてくれ……


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始まって15分くらいのある場面で、僕は椅子からずり落ちそうになりました。
ターミネーター2』は何だったんだ……

もし、『シュタインズ・ゲート』の続編で、ゲーム開始直後に、牧瀬紅莉栖が階段で足を滑らせ、頭を打って死んだら、それは『シュタインズ・ゲート』なのか?
あのゲームのシステムであれば、タイムリープで、それを未然に防ぐことだって、できるかもしれないけれど。
前日に『ターミネーター2』を観ていただけに、ぶち壊し感が半端なかった。

キャスティングとかストーリー上の都合とか、いろいろあったんだとは思うけど、これなら、『エピソード7』のほうが、まだ前作を尊重していると言わざるをえません。
エンジェル・ハート』みたいに、「いやこれはアナザーストーリーだから、たくさんある世界線のひとつでしかないから、あんまり本気で怒らないでね」みたいなエクスキューズがあったほうが、まだマシだった……

ストーリーそのものは、ものすごくシンプルです。未来から送り込まれたターミネーターがある人物を抹殺しようとするのを、同じく未来から送られてきた強化人間が防ごうとする。それに『ターミネーター2』の登場人物とアーノルド・シュワルツェネッガーが絡んでくる。

今回、『2』を事前に観てあらためて感じたのは、名作認定されている『ターミネーター2』も、ストーリー的にはかなり「トンデモSFチック」なんですよね。スカイネットによる世界の終わりを頑なに主張するサラ・コナーを妨害する人たちに、1991年の僕は「なんでサラの言うことを信じてあげないんだ!」と憤っていたけれど、いまの大人になってしまった僕には「ああいう終末妄想を全部鵜呑みにしていたら、精神科医は過労死するし、カルト宗教がはびこりまくりだろうな」としか思えないのです。
いろんな人を巻き込み、「あなたが将来、スカイネットをつくるキーパーソンだから」と技術者の家に押し入り、脅迫して協力させ、スカイネットの開発を阻止します。いやほんと、彼にとってはとんだ災難だし、そんなこと信じろというほうが無理だよね。よく本気にしたなあ。

ターミネーター2』って、ジョンとT-800(シュワルツェネッガー)の交流と成長を描いた「素晴らしいストーリー」のように思い込んでたけれど、いま観ると、「何をどうやっても死なない敵との派手な殲滅戦」を2時間ずっとやって、最後の最後に「泣く意味がわかった」で綺麗に終わる、それだけの作品なんですよ。映画にとって、クライマックスとかラストシーンの美しさがどれだけ重要か、というのがよくわかります。
30年も経つと、人は、「すごくよかった場面」しか覚えていない。
アナと雪の女王』だって、もう、ほとんどの人が、あの歌と氷の城の場面しか覚えていないのではなかろうか。


脱線しまくってしまいましたが(というか、この脱線部分が、今回の感想の「本筋」でもあるのですが)、この『ニュー・フェイト』は、『ターミネーター2』の続編というよりは、「リメイク」なのだと思います。未来から送られてきた2体が、ターゲットをめぐって2時間ドンパチをやり続けるだけ、というのは、まさに『ターミネーター2』なんですよ。
そこに、懐かしいキャラクターが出てきて、オールドファンを感涙させる……はずだったのでしょうけど、『ターミネーター2』は、あのラストシーンあってこその作品だったわけです。
それを縮小再生産してしまった、この『ニュー・フェイト』は、「そこらへんのアクション映画よりは、はるかによくできた作品」なのだけれど、「多くの人に愛され、伝説となっている『ターミネーター2』をこれから観る人が、『でも、どうせこの人、ああなっちゃうんだよね……』と白けてしまうリスクを受け入れてまで作られるべき作品」だったのか?と問われたら、僕は「ノー」ですし、『ターミネーター2』に思い入れがある人は、この作品は観ずに死んだほうがいい、と言わざるをえません。

ただ、『フォースの覚醒』もそうなんだけれど、『ターミネーター2』を観ていない人は、この作品にシュワルツェネッガーリンダ・ハミルトンが出てくることに価値を見いだせないだろうし、それはそれで、「十分に楽しめるとは言い難い」のだよなあ。

前作に思い入れがある人には「台無し」だし、ない人には「この人たち、要るの?」になってしまう。

これまでの『ターミネーター2』の続編とされてきた作品のなかでは、間違いなく、いちばん面白い。
でも、「いちばん作るべきじゃない続編」だった、とも思うのです。


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