琥珀色の戯言

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働きマン 仕事人に聞く ☆☆☆


働きマン 仕事人に聞く

働きマン 仕事人に聞く

内容紹介
「働く人の話には 何か必ずひとつの真実がある」 安野モヨコ

コミックスが累計400万部を突破し、テレビドラマ化された人気漫画『働きマン』(週刊
「モーニング」連載中)。身も心もボロボロになりながら、それでも日々の仕事の中に「喜
び」と「やりがい」を見出しながら働く女性編集者・松方弘子の生き様が世代を超えて共
感を呼んでいる。
働きマン 仕事人に聞く』は、その「実録版」だ。ノンフィクション作家・一志治夫が各
界で活躍する「働きマン」たちに会い、話を聞き、その仕事ぶりを活写する。
ナインティナイン岡村隆史、「スーパーモーニング」キャスター・赤江珠緒、カリスマシ
ェフ・奥田政行、伊勢丹バイヤー・上野奈央、三井物産保育事業担当・中山あやこ。
職種は違えど、彼らの「仕事の哲学」にはいくつかの共通項がある。失敗を人のせいにせ
ず自分の糧にすること、人間好きで人への興味を人一倍持っていること……。
素敵な「働きマン」たちの話に耳を傾ければ、彼らに共通する「成功者のメンタリティ」
がさらに見つかるに違いない。

◆仕事人が紡ぐ「珠玉の言葉」たち(本文より)
岡村隆史 「ゴールも正解もわからへんから、仕事はオモロイ」
赤江珠緒 「気持ちに余裕がないと感じる力が麻痺してしまう。それがすごく怖い」
上野奈央 「追求すれば実現できる理想もあるって知った」
奥田政行 「人のために行動を起こすと周りが幸せになり、自分も幸せだと感じられる」
中山あやこ 「仕事で何かあったとき、子育てのせいにしてしまうのは違うと思う」

 僕は「インタビューもの」や「対談集」などが大好きなのですけど、この本、値段のわりには活字が大きいし、採り上げられている人も5人だけなので、ややボリューム不足の感もあります。でも、内容的には悪くないです。岡村隆史さんの項と奥田政行さん(山形県鶴岡市で地元の食材を生かした「地場イタリアン」として「地域密着」で成功をおさめている『アル・ケッチャーノ』のオーナーシェフ)の項はかなり心を打たれるものがありましたしね。前者は、岡村隆史という人の「能力と集中力」に、後者は、奥田さんの「執念」に。
 ただ、僕が男だから、なのかもしれませんが、残り3人の女性の項は、正直あんまり面白くなかったんですよね。というか、読んでもあんまり元気が出ない。有名大学を出て商社に入り、「子育てをしながら活躍する女性」「世界中をあわただしく駆け巡って美味しい食品を探し出す女性」っていうのは、たぶん、「女性にとって憧れの『働きマン』なんだろうけれども、逆に、「女性には、こういう有名大学から有名企業というような『王道』しか「働きマン」としての道がないのだろうか?なんてことを考えてみたりもするわけです。こういう「成功者たちの言葉」が編まれる際には、男の場合は「失敗談」が要求されるけど、女の場合には、あまり「挫折や破綻」が武勇伝的に語られることってないですよね。

 「凄さ」という点で言えば、岡村さんは本当に「凄い人」だとしか言いようがありません。テレビ画面の向こうの岡村隆史は「バカなことをやってみせる人」なのだけれども、

「オヤジから大学だけは行けよ、と言われていた。オヤジは高卒で会社に勤めたサラリーマンだったんです。仕事は自分のほうができるのに、大卒にどんどん抜かれていくって、酔っぱらって言うてたことがありました。だから、とにかく大学は入れ、どこでもええから、と」

 岡村は、京都の新設大学をスポーツ推薦で受験する。科目は実技と小論文のみだった。実技は、短距離走のタイムトライアルとサッカーのゲーム。共に、岡村は難なくこなした。ところが、岡村は試験に落ちてしまう。理由はよくわからなかったが、高校の評定平均があまりにも悪すぎたのかもしれなかった。岡村は、この段階から焦って勉強を始め一般入試を目指すが、間に合うはずもない。推薦入学を含め全部で15校は受けただろうか。そのすべてに落ちてしまう。「名前さえ書けば受かる」と言われている無名大学でさえ滑った。
 結局、岡村は、絶対に避けたいと思っていた浪人生活をスタートさせざるを得なかった。岡村は必死になった。1日8時間、脇目もふらず勉強した。一切遊ばなかった。

(中略)

 そして、翌年、岡村は3つの大学に合格し、立命館大学経営学部へと進む。

 「名前さえ書けば受かる大学すら落ちた」という状況から、1年間で立命館
 とにかく、岡村さんというのは、一度「これをやる」と決めたら、本当に凄い集中力を持続して発揮できる人なのです。

 あと、奥田さんのこんな話も印象的でした。

 時間が空けば、お金のかからない大森の図書館に通った。オーブンの温度設定、火の入る温度、素材の特性などが書かれた料理本を片っ端から読みあさった。科学的な分析を頭の中に叩き込んだのだ。とりわけ、素材の扱いに関しては、熱心に読み込んだ。
「素材のことを勉強したいと思ったら、素材のことを好きになる。好きになればもっと知りたくなる。恋愛と同じで。そうすると、その子のいいところも悪いところもいっぱい見えてきて、その上で素材を使いこなしたいと思えば、最後には、そこに愛が生まれてくるんです。素材の嫌なところもひっくるめて好きだとなると、どういうときにその素材を持ってくればいいかがわかるようになる。愛に変わるまで、素材を勉強するわけです。

奥田さんは、類稀なる「味覚」を持ったシェフなのですが、だからこそ、こうして勉強することによって、自分の味覚を「再現性のあるもの」にしていったのです。「超一流の料理人になるためには、「経験頼みの味覚」だけではない、角度を変えたプラスアルファが必要だということなのでしょう。 
 そんな奥田さんも、

 当時、まだ親と兄はサラ金に借金があり、苦しい中、奥田は自分の収入から生活費を差し引いた残り全額を借金の返済に充てていた。しかしあるとき、とんでもないことは判明する。奥田が返済に充てていると思っていたお金は、ほとんどすべてが父と兄のギャンブルに消えていたのである。一攫千金を夢見て、博打に走っていたのだ。

 というような「大事な人たちからの裏切り」に遭っているんですよね。まあ、だからこそ奥田さんの項は「面白い」とも言えるのですが……
 とりあえず、この2人の項は、(店頭でパラパラとでも)読んでみることをお薦めします。
 しかし、この本って、『働きマン』の絵が無しで1000円なら、そっちのほうが絶対いいよなあ……

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