琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

封印されたミッキーマウス ☆☆☆


目次
01◆人気マンガのパロディが思わぬ事態に『コミックビーム』の回収騒動
02◆“NEVADAちゃん”の憂鬱 ネットアイドル化する殺人少女
03◆“私、実は男なんです”に抗議殺到! 美少女ゲームに見るオタク最前線
04◆あの「主人公」は今
05◆知られざる封印作品の世界
06◆なぜ作品は封印されるのか?
07◆宮崎勤と『ウルトラセブン』第12話をつなぐミステリー
08◆未完の巨大建造プロジェクト
09◆核兵器が封じられた魔の洞窟 小笠原・父島の怪伝説の闇
10◆捏造された日本人差別 タイタニック生還者が美談になるまで
11◆ミッキーマウスのタブー 大津市プール事件と著作権問題
12◆「フランス語を日本の公用語にせよ!」 志賀直哉の爆弾発言を追って

内容説明
1987年、小学校の卒業記念に描かれたミッキーマウスの絵がウォルト・ディズニー社の抗議によって塗り潰された…
テレビや映画の話だけではない。
12の「封印」現象を追う渾身のルポタージュ集!

僕は以前安藤さんの「封印作品の謎」シリーズを非常に興味深く読んでいたこともあり、この『封印されたミッキーマウス』も楽しみにしていました。

「『封印されたミッキーマウス』〜安藤健二の戦績」深町秋生の新人日記(2008/5/14)
↑での深町さんの紹介記事も素晴らしいものでしたし。

でも、今回のこの『封印されたミッキーマウス』に関しては、正直、ちょっと期待はずれというか、僕が期待しすぎだったのかな……と、読み終えてちょっと残念な気分になりました。
安藤健二って、こんなもんだったっけ?って。

この『封印されたミッキーマウス』で紹介されている12の「封印」のなかには、「コミックビームの回収騒動」とか「志賀直哉の爆弾発言」のように、「まあ、ちょっといきすぎちゃったんだろうね」という感じで、別に「封印」っていうほどじゃないようなものもありますし、半分くらいは、『封印作品の謎』シリーズで詳細に採り上げ、分析し終わったネタの再録というか、ダイジェスト版です。
読んでいて目新しかったのは、「タイタニック生存者の日本人の話」と「消されたプールのミッキーマウスの話」くらいでした。

 この本で取り上げた12のエピソードの多くは、すでに世間に流布しているものだ。あなたも、どこかで目にしたことなるネタが混じっているだろう。「ミッキーマウスの絵を描いた子どもたちに、ディズニー社が抗議して消させた」「タイタニック号から生還した日本人がいた」「ウルトラセブンには見ることができない幻のエピソードがある」などなど……。いずれも、ネット上で時たま話題になる、定番のトリビアだ。
「そんなのネットで十分、取材するだけ無駄だよ」と、堀江社長のように言い切るのは簡単だ。でも、それでいいのだろうか。私は「世間で言われていることは本当なのか」と疑問に思った。過去の報道を再点検し、関係者に取材を進めていくと、浮かび上がったのは全く別の真相だった。ネット上に都市伝説のように流布しているエピソードを、真偽不明で終わらせるのなら、それこそネットの焼き直しに過ぎない。堀江元社長の言う通り、全く無意味なものだ。そうならないために、私は血を吐く思いで愚直な取材を積み重ねるしか方法がなかった。ネットが普及した今だからこそ、ジャーナリズムのあり方が問われている。
 本書のエピソードの多くは、雑誌に掲載したものを加筆してまとめたものだが、佐世保女児殺害事件とタイタニック号に関しては、そのテーマだけの単行本を出すつもりだった。それぞれ、『ネバダ・ロワイヤル』『タイタニックの日本人』と、タイトルまで決めていた。残念なことに「裸足で地雷の上を歩くようなもの」「そんな結論では本にできない」と、出版社の了解が得られなかった。今回、こういう形で収録できるのは、長い間放置していた無縁仏をやっと供養できた思いでいっぱいだ。

僕は「ネットで調べたことを、ネットで書く」ということがほとんどなので、安藤さんの「ネットに頼らず、自分の足で取材をし、文献を読んでみる」という姿勢には本当に頭が下がります。「関係者に取材を申し込んだが、断られた」というだけでも、取材を断るだけの事情がある、ということが伝わってきますし、その「断りかた」というのも、ひとつの「情報」なわけです(あるいは、安藤さんが個人ではなく、もっと大きなメディアの一員であれば、別だったのかもしれませんが)。
そして、『封印作品』シリーズを読んだ印象では、安藤さんが取材した内容の凄さを伝えるには、やはり、ある程度の文章のボリュームが必要なのではないかと感じます。
この「はじめに」を読みながら、ここに収録された“NEVADAちゃん”の話やタイタニックに乗っていて生き残った日本人の話が、『ネバダ・ロワイヤル』『タイタニックの日本人』として、それぞれ1冊の本になっていれば、きっと面白いルポタージュになっていただろうな、と考えずにはいられませんでした。
こういう「ダイジェスト版みたいな本」になってしまったことには、安藤さん自身もあまり満足していないのではないかなあ。

安藤さんの著作を未体験の人は、まず、『封印作品の謎』『封印作品の闇』を読むことをオススメします。こちらは文庫化もされていますし。
でも、「ひとつのテーマを丹念に追った、良質のルポタージュ」っていうのは、きっと、「なかなか売れない」のでしょうね。そういう出版界の現状が、安藤さんに、こういう「ネタのダイジェストを集めたトリビア本」みたいなものを書かせているのだとしたら、それはとても残念なことだと思います。


封印作品の謎―ウルトラセブンからブラック・ジャックまで (だいわ文庫)

封印作品の謎―ウルトラセブンからブラック・ジャックまで (だいわ文庫)

封印作品の闇―キャンディ・キャンディからオバQまで (だいわ文庫)

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