琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

非モテたちよ、「恋愛スコープ」を装備せよ!

彼女がいる人に質問です。 彼女が欲しいです。 彼女が欲しいが、作れない人が 足りないことは何でしょうか。 具体的、現実的に詳しくお願いします。 その回答を参考にすれば彼女ができるようにお願いします。 (人力検索はてな)

まず最初に言っておきたい。

僕にそんなこと聞かないでください……


しかしながら、「恋愛耳学問界の若年寄」たるワタクシは、こんな話を皆様に御紹介することはできるわけです。

(『日々是作文』(山本文緒著・文春文庫)より)

しかし恋愛に学校はない。こればかりは我流である。我流ではあるが、十五歳で初めてボーイフレンドというものを持ってから幾歳月。好きこそものの上手なれ。数え切れない程の恋愛失敗事例をもってして、少しでもみなさまのお役に立てたらと思います。
 基礎の基礎なので、まず「好きな男性の作り方」からですよ。
 というのは、最近まわりの三十代女性数人から「好きな人ができない」と相談をもちかけられたのだ。「え?」と耳を疑った。私なんか好きな男の人なんかすぐにぼろぼろできるけどな。それともゲートボールのゲートくらい私の男性に対するハードルが低いのか。
 好きな男性。それはいないよりはいた方が楽しいじゃないか。うまくいくとかいかないとか、結婚してるとかしてないとかは置いておいて、まったく誰にもときめかないというのは日々の張りとしてどうだろう。楽といえば楽なので、その方がいい人は無理して作る必要はまったくないと思うが、彼女達は「好きな男性が欲しい」と訴えているのだ。
 そのうちの1人が「山本さんはいつもスイッチ入ってますもんね」と気になる発言をした。恋愛スイッチが常にオンの状態だというのだ。失敬な、と最初思ったが、よくよく考えてみると、もしかしてこういうことかもと思い当たった。
 私は彼女に質問してみた。
SMAPで好きなのは誰?」
「うーん。全員」
 これだ、これ。男性の群を眺めるとき、私は無意識に「好きな順番」あるいは「マシな順番」をつけて見ている。大勢の飲み会ではもちろんのこと、年配のおじさましかいない会食の席でも、男性が6人いたらAからFまでマイ順位をつける。その基準は、歳も肩書きも関係なく単なる「見た感じ話した感じ」であり、その後どうこうしようとはりきるわけではない。たった一度しか会わない人達でも、言葉さえ交わさない人達でも、ターミネーターに装備されているスコープのようなもので男性陣にランク付けをする。もし男性陣が聞いたら「お前にEだのFだの言われたかねえよ」と言われることは重々承知の上である。だからSMAPだってキムタクだったり慎吾ちゃんだったり日によって変わるが、必ず一番からビリまでいるんである。
 この勝手な恋愛スコープで世の中を見ている女性は稀有なのかと、まわりの人達に聞いたところ案外いた。例外なく恋愛に積極的で、痛い目にあってもへこたれない強者どもだった(夢の跡だったりもしているが)。
 そんな目でいちいち男を見るなんて媚びてるみたいだし発情しっぱなしみたいで気持ち悪い、と思った方は一生そうしていて下さい。何もしない「ありのままの自分」という努力しない状態のままで、王子様が現れる奇跡を煎餅でもかじりながら待っていて下さい。
 順位付けの練習をしておくと、いざとなったときに瞬発力が違うように思う。無意識のうちにAの人にあなたは話しかける癖がつくはす。それがまず第一歩。
 さあ、たった今から恋愛スコープをつけてまわりを見渡してみよう。つまらない会社もつらい通勤電車も、スイッチを入れるだけで違う色に見えるかもしれませんよ。

 僕はこれを読んだ時点ですでに既婚だったので、実践する機会はなかったのですが、これは非常に「簡単かつ有用な方法」ではないかと思うんですよ。もちろん、こういう「人間に順番をつける」と言う行為に対して抵抗がある人は多いと思います(僕もそうです)けど、このトレーニングの最大のポイントは「脳内でできる」=「勇気を必要としない」ことなんですよ。
 自分をモテない男の代表のように扱うのは自分でも悲しいのですが、若いころの記憶をたどってみると、「モテない人」っていうのは、こういう「ランクづけ」ができない、優しい(?)タイプが多いんですよね。
 たとえば合コンの席で、「お前、どの子がいい?」って幹事のモテ夫君に訊かれたとき、「ええっ、好みなんて……僕にそんなこと言う資格ないし……相手に失礼だよ……」「僕なんかとじゃ、喋っても愉しくないだろうし……」

 ううっ、書いてて泣けてきた。頑張れ、あの頃の僕。
 結局のところ、「モテない」「彼女ができない」ことの原因は、「ターゲットを絞れていない」というか、「自分は誰が好きなのかよくわかんない」からなのかもしれません。こういうふうに「ムリヤリにでも、ターゲットを見つけるトレーニングをする」(しかも脳内でできるので低リスク!)というのは、確かに「自分の趣味を客観的に知る」ためにも役立つはず。そして確かに、こういうトレーニングをしておくと、「自分の好みのタイプ」があらわれたときに、どんどん速やかにロックオンできるようになるはずです。
 でもまあ、「恋愛スコープ」を装備することと、「無意識のうちにAの人に話しかける癖がつく」ことの間には、日本海溝くらいの深い溝がありそうなんですけどね……
 それでも、半歩くらいは「恋人ができる方向」に前進できるのではないかと。

 ただ、こういう「相対的な恋愛」しかできない人っていうのは、「一番」が常に変動する可能性があるので、「恋愛しやすい」一方で、「相手との関係が不安定になりやすい」ようにも思われます。

 それにしても、年取って思うのは、恋愛っていうのは、「一度うまくいってみて初めてわかる間合い」みたいなのが多いということ。
 今だったら、昔の僕が玉砕しまくった「ティーチャ」の1機や2機くらい、堕とせるのではないかと思うもの。
(と、過信しているとあっさり撃墜されるのも「お約束」なんですが)
 この戦場には新兵と熟練兵が混在しているのだから、新兵にとっては過酷すぎるよね本当に。


日々是作文 (文春文庫)

日々是作文 (文春文庫)

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