琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

オバマ・ショック ☆☆☆


オバマ・ショック (集英社新書 477A)

オバマ・ショック (集英社新書 477A)

内容紹介
彼の演説に、なぜ白人も涙したのか。
ベストセラー「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」の著者が、
師と仰ぐアメリカ研究者と白熱の対論!

史上初の黒人米国大統領に就任したバラク・オバマ。疲弊する大国は、なぜいま、彼を選んだのか? 覇権国家の衰退を歴史軸で考察する研究者(越智)と、合衆国を駆け巡るフィールドワーカー(町山)が、岐路に立つアメリカの過去・現在・未来を縦横無尽に語り合う。サブプライムローンの 現場 やハリウッド空洞化の実情など、アメリカが陥った病の症例を容赦なく暴き出し、多様な人種がオバマを「支持」した理由を明らかにする!

あの就任式の熱狂を観て、僕もあらためて「オバマ新大統領」について、そして、彼の就任によって、アメリカがどう変わっていくのかについて知りたいと思っていたタイミングで、この町山智浩さんと越智道雄さんの共著が出版されました。
これはきっと面白いはず!と思って「指名買い」したのですが……

この本のオビには、こんなふうに書かれています。

(目次より)
リンカーンオバマ
ローズヴェルトオバマ
キング牧師の影を背負うオバマ
オバマは「過去がない黒人」
オバマは宇宙人?
オバマは浮気をしない?
オバマは天性の野心家
オバマとスーパーマン
オバマはクールな弥勒菩薩
オバマの運が「災厄」をもたらす?


……いったい、彼は何者なのか?

逆に「オビの内容紹介には、これしか書かれていない」のです。
そして、この本には、たしかにこの内容が含まれています。

でもね、実際にオバマ新大統領について書かれているのは、この200ページの新書のなかの、60ページくらいだけなんですよ。
にもかかわらず、オビではその60ページのなかの「目次」だけを紹介して、この本のすべてが「オバマ本」であるかのごとく、「オバマオバマ!」の連呼。
ちなみに前半3分の2は、主に「オバマ以前」、とくに第二次世界大戦からのアメリカの政治情勢、社会情勢の話です。
いや、たしかに「アメリカ人は、なぜ、このタイミングでオバマを選んだのか?」を語るための前提条件として必要なのだというのは理解できますし、勉強にもなるのだけれども、このタイトル、このオビでこの内容っていうのは、ちょっと期待はずれというか、「看板に偽りあり」というか……
もっと、オバマさんの人となりとか、オバマ新大統領になって、アメリカはどうなっていくのかが、詳細に分析されている本だと思っていたのに。

10年以上アメリカで暮らしておられる町山さんの「生活者としての実感」も含めて、いまのアメリカを知る上で、ものすごく興味深い本であることは事実です。
ただ、この売り方は釈然としないし、最近の新書によくある「ブームに便乗して、チャチャっとつくったお手軽新書」という印象は拭えません。
これを読むのなら、町山さんの前著『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』を読んだほうが、よっぽど『オバマ・ショック』の背景を理解できるのではないかなあ。

町山智浩オバマは、自分の親族にはあらゆる人種がいることを述べたうえで、「私の物語が可能な国は、この世界中でアメリカだけだ」と演説しましたが、すごく通じるものがありました。

越智道雄逆に言うと、オバマにとって、アメリカ人になるには大統領になるしかなかった。

町山:と言えるのかもしれませんね。クラーク・ケントがアメリカ人になるにはスーパーマンになるしかなかったように。

越智:そしてアメリカ人と、白人、有色人種の別なく苦境から助け出すことが、スーパーマンオバマ、この二人の運命ということになります。

このやりとりだけでも、オバマさんを大統領に選んだアメリカ人たちの「希望」が伝わってきますし、その一方でオバマ新大統領に課せられた「使命」は、あまりに過酷なものだということもわかります。
でもまあ、結局のところ、この選択が歴史にどんな影響を及ぼすかは、これからのオバマ新大統領とアメリカ国民次第なんですよね。

しかしこれ、勝間和代さんの『読書進化論』高田純次著(とクレジットされているけど、本人はほとんど書いていない)『適当論』と並んで、僕のなかでは「三大看板に偽りあり新書」ではありました。
御購入の際には、書店で実際に内容を確認することをオススメしておきます。


アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (Bunshun Paperbacks)

アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (Bunshun Paperbacks)

↑はオススメなんですけどね……(この本への僕の感想はこちら

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