琥珀色の戯言

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がっかり力 ☆☆


がっかり力 (アフタヌーン新書 001)

がっかり力 (アフタヌーン新書 001)

内容(「BOOK」データベースより)
人間は生きる限り、がっかりし続けるのだ!不景気が止まらない現代。ここでカリカリし続けたら、いずれはテロリズムの道ですよー。いろいろ大変な21世紀を生き抜くには、立ち止まって「がっかり」するといいですよー。ということで、ひたすら「がっかり」をキーワードに、歴史、コンテンツ、そして恋愛資本主義、さらにはプロ野球まで抱腹絶倒の大分析。喪男の星・本田透が初めておくる、目からウロコの現代文化評論。

内容も分量も「薄い」!
そして、「高い」!
文句ばっかり言いながら「アフタヌーン新書」をもう3冊も読んでしまったのですが、第一弾ラインナップのなかではエース格だと思われる本田透さんのこの新書。読んだ僕も「がっかり」でしたよもう。
やっぱり、「新しい新書ブランドの立ち上げにラインナップされている、有名作家の本」は地雷が多いな……
たぶん、「とにかく先生のネームバリューだけでも!」って出版社が書いてもらうんだろうなあ。
(例:勝間和代さんの『読書進化論』(小学館101新書))
いや、「読みやすい」ことは認めるけど、「あんまり期待しすぎないように、失敗することを想定して生きていこうよ」というだけの内容ですからね……

 しかし、出版業界がどんどんライト化していって思想界に新しい潮流が生まれてこないというのも、これはこれでがっかりな話です。
 ケータイ小説についても、確かに媒体や表現手段はいかにもデジタル時代の小説という感じで新しいんですが、『恋空』とか『赤い糸』の内容って昔の実話系レディコミと同じですからね。
 新書も「デブが痩せた」とか「バカはバカだ」とかそんなんが大ヒットですから。しかも、ものすごく頭がいいことで知られているインテリ知識人がそういうさらっとした本を書いて人生最大のヒットになっちゃうわけですから、これでは猫も杓子もがっかり新書しか書かなくなるのではないか、というか今までカリカリした本しか書こうとしなかった私がすでにこの『がっかり力』を書いているではないか、と。

この文章、「自虐」にはなっているのですが、「自虐ネタ」にはなってないんですよ。
なんでかというと、この本の内容が、本当に「がっかり」だから。
「いや〜これ手抜きですから、でも、みんなもそれでいいんでしょ?」って開き直られて、いい気分にはなれません。
少なくともこの本の読者の大部分は、「本田透という論者に期待している」はずです。
「ダイエット法」のような「実用系」とか、「東大の偉い先生のわりには当たり前のことばっかり書いてるな」という「優越感持たせ系」と同じような「手抜きのしかた」じゃあんまりです。もともとのネームバリューが違うし。
もちろん、この本で本田さんを知った人は、「なんでこんな内容で860円もするんだ?」としか思わないはず。
 
ただ、最後の「本田透ができるまで」の話は、けっこう面白かったです。
「がっかり力」はどうでもいいので、この話を1冊の新書にしてくれればよかったのに。
電波男』があれだけ話題になっても、そんなには稼げない(まあ、メディアミックスで大儲けできるような本でもないし)、というのは、ちょっと「がっかり」でしたけど。

うーん、これ読むんだったら、『電波男』を読んだほうがいいですよ絶対。

電波男 (講談社文庫)

電波男 (講談社文庫)

こちらは本当におすすめできる「哲学書」だと思う。
「ぶきい!ぶきぃーー!」が耳から離れなくなりますが。

最近の新書って、「書ける人に縮小再生産を求めて、どんどんダメにするための媒体」になりつつあるんじゃないかなあ。
『カラオケ秘史』みたいに面白い本もあるんだけどねえ……

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