琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら ☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
公立高校野球部のマネージャーみなみは、ふとしたことでドラッカーの経営書『マネジメント』に出会います。はじめは難しさにとまどうのですが、野球部を強くするのにドラッカーが役立つことに気付きます。みなみと親友の夕紀、そして野球部の仲間たちが、ドラッカーの教えをもとに力を合わせて甲子園を目指す青春物語。家庭、学校、会社、NPO…ひとがあつまっているすべての組織で役立つ本。

いかにも「萌え」を狙った表紙と、パラパラとめくってみたときのあまりにも説明的な文章。

 川島みなみが野球部のマネージャーになったのは、高校二年生の七月半ば、夏休み直前のことだった。
 それは突然のことだった。ほんの少し前まで、みなみはまさか自分が野球部のマネージャーになるとは思っていなかった。それまでは、どこの部活にも所属していないただの女子高生にすぎなかった。野球部とは縁もゆかりもなかった。

うーん、これ、賞の応募原稿だったら、地方の文学賞でも、一次通過は難しいのではなかろうか。
いや、この本そのものが「実用書」「ビジネス書」だというのならしょうがないんだろうけど、「青春小説のなかに、ドラッカーの教えを散りばめる」というコンセプトなら、「青春小説」としての魅力がないとどうしようもないと思うんだけど。

アイディアは、素晴らしい本だと思います。
ドラッカーに限らず、「ビジネス書」「自己啓発書」っていうのは、「読むとお説教されているような気分になる本」というイメージがあるのだけれど、これだけ「軽く」書いてあれば、少なくとも「ちょっと手にとってみようかな」という気分になる人は多いはず。
そして、この本のなかにある、ドラッカーの言葉に、うんうんと頷いてしまうことでしょう。

……でも、僕はこの本、値段のわりに内容は薄いし、青春小説としては、30年前の野球漫画みたい(といったら、水島先生やあだち先生に怒られそうだけど)で、正直、「ドラッカー読んだって、こいつらがPL学園に勝てるわけねえだろ!」としか思えませんでした。
ドラッカーの難しいところは、「書いてあるとおりに実行することが、人間どうしのしがらみやプライドなどで、現実的には困難」ということで、鳩山首相マニフェストみたいなもんなんだよね。
登場人物の行動、とくにクライマックスのみなみの行動も、全く意味不明。お前、そんなんでドラッカーから何を学んだんだ……

この本が1600円+税、ドラッカーの『マネジメント』(エッセンシャル版)が定価2000円+税。
僕は、ドラッカーに興味がある人は、この本を買うお金があったら、最初から『マネジメント』を買って読んだほうが効率的だと思います。
もちろん、この本も、読んでいると、次にドラッカーの著書を読んでみたくなるので、そういう意味では、「格好の入門編」ではあるのでしょう。
しかし、大人が読むには、「入門編」すぎないかなこれ。

……と思いながら、Amazonのレビューを眺めていて驚きました。
参考リンク:Amazonカスタマーレビュー「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

なんか、大好評なんですよこれ。
ええっ?みんなこの本を読んで、「ベタでチープな青春小説と、あまりに少ないドラッカーのエッセンス」に「金返せ!」って思わなかったの?
これがきっかけになって、ドラッカーの『マネジメント』を読んだ人にとっては、「有益」だったはず。
でも、これを読んで、ドラッカーを理解した気分になって、そこでおしまいの人たちが、けっこう多いみたい。
そんなの「あらすじで読む日本文学」を読んで、その作品を理解したと思い込んでいるのと同じなのに……

アイディア一流、商売一流、でも、内容は……
とはいえ、「このくらいのレベルにまで落とさないと売れない」のが現実であり、最近の自己啓発本・ビジネス書のベストセラーって、このくらいの「読みやすい本」が多いのもまた事実。
僕には、あまりにいろんなことがうまくいきすぎて、かえってドラッカーが胡散臭く思えてしまうくらいなんだけど。

この本のなかで、ひとつ、僕の心に響いたドラッカーの言葉がありました。それは、

 マネジャーの仕事は、体系的な分析の対象となる。マネジャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくとも学ぶことができる。しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。

20年前、10代の僕なら、「何言ってんだこのオッサン、才能がなけりゃどうしようもないだろ」って思ったはず。
でも、今の僕には、この言葉の「重さ」がよくわかるのです。

うーん、ドラッカーへの入り口としては有意義な本かもしれません。
しかしながら、それ以外にオススメできるところが無いんだよねえ。
だいたい、ドラッカーの著書が売れた数と、世界中の有能な経営者・指導者の数を比べれば、ドラッカーのチカラも、すべての人に有効ではないしね……

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

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最後の授業 DVD付き版 ぼくの命があるうちに

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↑は、僕が最も素晴らしいと感じた「自己啓発本」。
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