- 作者: 中川淳一郎,漆原直行,山本一郎
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 2015/04/09
- メディア: 新書
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内容(「BOOK」データベースより)
ビジネス書を読んでも年収は上がらない!!阿佐ヶ谷ロフトAの過激人気イベント「ビジネス書ぶった斬りナイト」の3人組が“読書を武器に”生き残る知恵を伝授!
中川淳一郎さん、漆原直行さん、山本一郎さんの3人による、「読書」に関するトークバトルを収録したものです。
3人とも「歯に衣着せぬ」発言で、「ビジネス書依存症」になっている人々をバッサリとぶった斬るのと同時に「とりあえず何を読んだら良いのか?」についても語っておられます。
ちなみに、タイトルは『読書で賢く生きる。』なのですが、中心になっているのは「ビジネス書」の話なんですよね。
ただ、フィクションの「小説」に関して、山本一郎さんが書かれていたこの話は、読んでいてすごく嬉しくなりました。
私が人生で最高に楽しいと思った小説は筒井康隆の『旅のラゴス』です。面白い小説は文字面だけじゃなく、それを見て何を情景として思い浮かべたのかをすべて再現することができるぐらいに没頭した。言葉では言い尽くせないぐらい、言葉から導き出された映像を脳内で再現することができました。でも、それなのに、面白いと思えなかった小説は、タイトルさえも満足に思い出すことができません。
僕もこれまでの人生で読んだ小説のなかでいちばん思い出深いものは、筒井さんの『旅のラゴス』なのです。
高校時代にふと読み始めたところ、読み終わるまで、その場を一歩も動きませんでした。
あのときは、あれほど「知を求める生きかた」みたいなものに憧れていたのに、なんでこんなところに来てしまったのか……(遠い目)。
とりあえず、「誰かと好きな本が同じ」というのは、それだけで共感するというか、なんだか嬉しいものではなりますね。
さて、この本では、主にビジネス書の読みかた、選びかたが語られています。
漆原直行さんには『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』という、身も蓋もないタイトルの著書はあるのですが、ビジネス書が全部ダメだと言っているわけではなくて、「読む価値のある本も存在している」と仰っているのです。
世の中には、何かに取り憑かれているように、片っ端から新刊を読んで「デキる人」の気分になっている「ビジネス書信者」と、「ビジネス書はキャリアポルノみたいなもの」と「信者」をバカにしている人がいるのですが、極端な姿勢というのは、問題が多い。
僕などは、つい「洗脳されてるみたいで気持ち悪い」と思ってしまう「自己啓発書」のなかにも「良書」(あるいは、教科書的に押さえておくべきもの)があるのです。
先に結論から言ってしまうと、『7つの習慣』(スティーヴン・R・コヴィー)、『思考は現実化する』(ナポレオン・ヒル)、『人を動かす』(デール・カーネギー)の3冊を押さえてしまえば、他の自己啓発系ビジネス書は読まなくても構いません。
なぜなら、これら3冊で、数多くのビジネス書で語られている自己啓発文脈は、ほぼ網羅できてしまうから。3冊読むことすら面倒だ、ということであれば『7つの習慣』の1冊を読んでおくだけでも、主要な自己啓発的言説を押さえることが可能です。
中川淳一郎さんは、こんな話をされています。
こうしたビジネス書のなかでも、私自身がおおいに影響を受けた2冊がある。
前述の通り、「ビジネス書に載っていることはオレは実践しているさ」というゴーマンさを持っている私ではあるものの、「なるほど」「納得です」と常に思いながら読んだ本が松下幸之助著『商売心得帖』と『経営心得帖』の2冊だ。
基本的に両方の本は「常識人でいろ」「決して人の道を外れるな」「人に感謝しろ」「人に優しく」といったことを説く書である。ビジネス書というよりは「人間道」みたいなものだ。だが、世間的にはビジネス書ということになっている。
この3人のやりとりを読んでいると、「多読」というのは、それに要するコストほどのメリットは無いのだな、と感じます。
ビジネス書って、『7つの習慣』『思考は現実化する』『人を動かす』の焼き直しみたいなものばかりなので、たくさん読めば読むほど、「すぐ読み終えられる」ようになり、「自分のレベルが上がった」ような気がしてくるんですよね。
単に「同じことを繰り返し読んでいるだけだから、読み飛ばせるようになった」だけなのに。
そして、山本さんは「これらの自己啓発は、アメリカのニューソートという宗教運動を起源としているため、日本人にとっては実行するハードルが高いのではないか」とも仰っています。
僕は松下幸之助さんの本って、「人生訓」もっとひらたくいえば「お説教」みたいなイメージがあって敬遠していたのですが、多くの日本人にとっては、こちらをまず読んでみるのが「効率的」なのかもしれません。
ビジネス書って、次から次へと、主人公がラーメン屋になったりコーヒーショップになったり高校野球のマネージャーになったりして新しいものが出てきますが、基本的なところは、あまり変わらない。
ただ、僕も以前は『もしドラ』を読むのであれば、ドラッカーの元の本『マネジメント』を(日本語訳で)読んだほうが手っ取り早いんじゃない?と思っていたのですが、実際に読んでみると、『エッセンシャル版』でもけっこう大変でした。いちおう通読してみたけれど、理解できているかも怪しい。
『もしドラ』から「入門」したくなるのもわかります。
というか、あれこれ読み散らかすより、『マネジメント(エッセンシャル版)』一冊だけでも完璧に実行できれば、かなり有能な経営者になれるのではなかろうか。
実際に商業出版に深く関わっている3人だけに、さまざまな本の「裏話」が聞けるのもこの新書の魅力です。
2014年にベストセラーとなった『嫌われる勇気』について。
中川淳一郎:なんか、いまの社会情勢とかと関係あったりするんですか?
漆原直行:後付けでいろんな理由を挙げることはできると思うんだけど、アドラー自体は90年代の後半くらいに『アドラー心理学 シンプルな幸福論』という新書が出てきたりするの。
『嫌われる勇気』はビジネス書界隈では、とても名前が知られているエース編集者・ライターがつくった本なんですよ。『さおだけ屋』など数々のベストセラー新書を手がけられた編集者と、ビジネス書のゴーストライティングなどで引っ張りだこの敏腕ライターさんが組んでいる。加えて『嫌われる勇気』は本の刊行を踏まえて、先行する形でウェブメディアの「ケイクス」で連載されたんだけど、そのケイクスを手がけているのが、『もしドラ』の担当編集だった方という。なんていうかみんな……鼻が利くんだろうなあと。やっかみですけどね。
山本一郎:これはやっぱりタイトルがいいよね。アドラーって名前が入っていないところもいい。でも、本当に嫌われたら我々みたいになっちゃうからね。精神力がいるわけじゃない。
これ読んでいる人って、実は嫌われたくない気持ちが強い人。でも、アムロとか碇シンジが、そんなんじゃあ僕、ダメだって、ガンダムやエヴァに搭乗するように、手に取ったんだと。この本ってその潜在的な意識を突いているなってのがあって、買って読んでみたんですよ。中身もそんなに酷くなかった。だから、読んで損はないし、良かったよって周りにもすすめられる感じです。
漆原:そこまで褒めますか。
山本:「私、これから自分の扉を開いていきます」みたいなわけのわからない自己啓発本がたくさんある中で、そんなくだらない本を読むなら、一応ちゃんとした古典の系譜が抄訳されているほうがいいじゃない。『もしドラ』もそうだったわけで、内容も書いている人もクソなんだけど、門戸が広いから売れるし、そのクソを入り口にちゃんとドラッカー読めばいいわけです。
そうか、『嫌われる勇気』は、「ビジネス書界のドリームチーム」が、「売るべくして売った本」だったのか……
僕も、「考え方としてはわかるけれど、『嫌われるのを気にしない』ということそのものが、いちばん難しいのではないか……」と感じたのですけど。
人間「気にしないように決めた」からといって、「気にならない」というものではないし。
なんか、「ビジネス書」を読んでも読んでも、自分が変わった気がしないんだけど……
「ビジネス書」なんて役に立たないと思って生きてきたけれど、何か一冊くらい読んでみようかな……
そういう人は、まずこれを読んでみると良いかもしれません。
僕みたいに、「ビジネス書業界の裏話」に興味がある人間が、いちばん愉しめそうな気はしますけど。
- 作者: 岸見一郎,古賀史健
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