高校の卒業式の日のこと。
僕はすでに進路も決まり、ようやく寮生活からもおさらばできるということで、ちょっと舞い上がっていた。
それはみんなも同じだったようで、まだ進路が決まっていなかった連中も含め、掃除の時間に「かったるいよなあ、掃除なんて、やってられるかよ」と、掃除道具で遊んだり、雑談に興じたりしていたのだ。
そのとき、僕たち3年生の担任の先生がトイレに入ってきて、僕に向かって言ったのだ。
「お前がそんなヤツだとは思わなかった。たしかに今日は卒業式の日で、お前にとっては「これからのことは関係ない」かもしれないけれど、この学校は後輩たちがこれからも使っていくんだ。お前だって、高校を卒業したくらいで、そんなふうに浮かれているなんてみっともないぞ。本当の勝負はこれからなのに」
その先生は、日頃、生徒を叱るような人ではなかったのに、その日は、かなり強い口調で僕を叱ったのだ。
僕はあれから、自分がちょっといい気になっているな、というとき、あの卒業式のときのことを思い出すようにしている。
先生だって、卒業式の日に、生徒を叱りたくはなかったはずだ。
でも、だからこそ、あの日のことは、僕にとってはずっと、調子に乗りやすい自分への戒めになっている。
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